同胞高齢者の安否確認も
スカイツリーですっかり有名になった東京・墨田区。ここでは地元の婦人会支部(金淑子会長)が、民団と協力して、漬けたてのキムチを高齢の同胞家庭20世帯余りに宅配している。昨年から始まり、ほぼ1カ月に1回のペース。いまでは心待ちにしているお年寄りも多い。ささやかな同胞の情愛がいまも息づいているのはいかにも下町らしい。
宅配するキムチは食卓に上れば、家族が1、2日で食べ尽くせるほど。分量だけ見れば、ささやかなお裾分けといえるかもしれない。それでも手間暇かけて宅配しているのは、足腰が弱くなって、ともすると民団会館から遠ざかりがちな団員の安否を確認するというもう一つの目的もあるからだ。
12日は金会長はじめ婦人会役員4人が漬けたてのオイ・キムチを手に、夕方から近隣の同胞家庭を回った。1軒目はスカイツリーの真下に近いマンションに住む宋石鎬さん(94)宅。宋さんは顔なじみの金美一副会長を確認すると、満面の笑顔で名前を呼んで迎え入れた。聞けば婦人会のキムチを毎回心待ちにしているという。お礼にと、韓国民謡を大きな声で口ずさんでくれた。
2件目に訪れたのは金尚美さん(92)の家庭。金さんは総務役員の柳姫子さんの手を片時も離そうとせず、「自分の国の人たちが来てくれることがなにより」と言いながら、何回も「うれしい」と繰り返した。金さんは2年前、自宅の階段から滑り落ちて骨折し、いまも足腰が不自由に近い。金会長から手渡されたキムチを大切に抱えた。
この活動は「地域のおじちゃん、おばちゃんたちが元気でやっているか、キムチを持って見回ろう」という役員の提案から始まった。第1回目はカクテギだった。徐廷敏支団長ら民団役員も加わり、漬けてから3日以内に配った。宅配を終えると、民団支部に「美味しかった、ありがとう」というお礼の電話が入り、婦人会役員を勇気づけた。ある役員は「おいしさの秘訣は(同胞への)愛情」という。
白菜は前日夜から支部会館で準備するため、2日がかりの作業となる。苦労が多い分、見返りもあった。婦人会の結束がさらに強まったことだ。金会長によれば、「多いときで20人、少なくとも13〜15人が毎月集まり、充実感を持って楽しくやっている」。民団支部では、「団費をもらいやすくなった」という。
(2012.5.23 民団新聞)