掲載日 : [2010-11-03] 照会数 : 9278
フラッシュ同胞企業人<57>家族の文化 広がり願う
[ 1966年ソウル生まれ。漢陽大卒。日本大学大学院MBA修士。03年にギャラリーKyo設立。1男1女。 ]
韓国の工芸品などを展示・販売
ギャラリーKyo 宋周榮代表
文化の街「下北沢」駅から徒歩5分。建物に1歩入ると、そこには韓国文化の空間が広がる。ギャラリーがプロデュースするアートショップ(1階)をリニューアルオープンしたばかりだ。
体験型の空間も
その1階は、3つのコーナーに分かれている。ポジャギ工房koe主宰・李京玉さんのポジャギ専門ショップ、韓日作家たちの作品コーナー、そして玄関口には韓国国立中央博物館のアート商品を陳列するとともに、ポジャギや刺繍、刺し子などの手芸を楽しむスペースを新設した。「目で見て、体験できる空間がほしかった」
地下1階の画廊は、韓日交流の場として日本人作家の作品も紹介している。「短い展示期間が終了した後も、展示・販売するスペースがあればと考えた」
ソウル生まれ。漢陽大学卒業後、大手貿易会社に入社。学生時代にボランティアとして障害者らと交流するキャンプに参加していた。そのキャンプがケーブルテレビで放映されるため、ビデオ編集に立ち会った。それが縁で誘われ、「自分で何かを発信したい」との思いが強く、MEDIXコリアへの転職を決めた。
98年、同テレビ局の日本事務所開設のために来日。仕事のかたわら、日本大学大学院グローバル・ビジネス経営学部(MBA)で学んだ。2002年サッカーW杯共同開催後、「なぜか空しさを覚えた」。そこで「韓国の文化を発信しよう」と、修士論文ビジネスプランのひとつ、「韓国ギャラリー」を実践することにした。
キュレーターである妻の李賢静さん(43)との2人3脚で新橋にオープンしたのが03年2月。「手元に資金はなかった。大手不動産会社にプランを説明し、協力を得ることができた。2人で倉庫を改装し、コンクリート壁にペンキを塗った」
当初は韓国工芸品の展示会が中心。「不定期な収入のため、運転資金のやり繰りに苦労した」。百貨店での販売も手がけ、小さなイベントを重ねる中で、来館者が少しずつ増えていった。
昨年6月、同地が再開発計画区域に組み込まれたため、やむなく立ち退いた。周囲の支援で銀行から融資を受け、下北沢に土地を取得。自分なりのギャラリーを設計した。「テーマは『家族の文化』。韓国独自のぬくもりのある文化をメッセージとして伝える。その代表がポジャギ」だと強調する。「最初のころは、何かを伝えなければという使命感が強かった。でも、今は肩の力が抜けて、ありのままを感じてもらえればと思うようになった」
いくつかの教室を設けている。韓国語講座のほか、ポジャギを中心にした小物作り教室。受講生は120人を数える。
地方にも普及へ
月1度の「日々燦々の会」は、四季それぞれの韓国料理づくりをはじめ、伝統飾り結び「メドゥプ」、茶道など多彩な内容だ。誰でも参加可能だが、人気イベントだけに応募は狭き門だ。
「韓国の文化を知ることで、自分たちの生活が豊かになると感じてくれれば、喜びだ。地方にも広げたい」。今月下旬には、秋田で韓国文学フォーラムの一環として「ハングル文字のアート」展を開催する。
◆ギャラリーKyo=東京都世田谷区北沢1‐45‐11(℡03・6416・8641)
(2010.11.3 民団新聞)