掲載日 : [2010-11-10] 照会数 : 6228
<布帳馬車>タイガーバームに負けるなんぞ
知り合いに在日2世の柔道選手がいた。彼は色白ぽっちゃりで優しそうな顔をしており、スポーツマンシップも礼儀もわきまえた好青年の印象しかない。ところが、妙なクセがあった。
大学柔道部での乱取りのさなか、得意の内股などで投げた後輩をまたいでは、涼しい顔で放屁するのである。しかも、わざわざ自分の尻を相手の顔に近づけて及ぶらしい。後輩たちはそれが愛嬌なのか、屈辱感をあおるしごきなのか、怖くて確かめようがなかったそうである。
大学時代に知り合った2世のなかに、高校時代まで柔道をやっていた者がけっこういた。放屁とまではいかずとも、臭いを武器にしたことはあるという。試合前日の夜、古漬けキムチを使ったチゲや、刻んだにんにくをふんだんに入れたホルモンを食べると、妙に自信が湧いてくるし、組んだ瞬間に相手を戸惑わせ、《威圧》する効果があった、と聞かされた。単なる思い込みとも言えまい。
膝と顔をつき合わせる囲碁でも、対戦相手の発する臭いは重要な意味をもつ。今回の広州アジア大会で、囲碁で金メダルを目指す韓国は、最強ライバルである中国の伝説的な軟膏薬「タイガーバーム」を使った臭い攻勢を警戒している。中国で9月に開催された世界女子囲碁大会で、中国選手が対局中にそれを塗り、韓国選手が独特の臭いに平常心を失い、敗れた苦い経験があるからだという。
韓国はその膏薬を対局中に塗れば、断固抗議するという。しかし、大人気ない。ここは一つ、大きなマスクと扇子を必携し、鼻を守りつつ臭いを拡散することだ。マスクには敢然とした抗議の意思があり、なおかつ表情を隠す効果もある。(D)
(2011.11.10 民団新聞)