掲載日 : [2010-11-10] 照会数 : 6714
11月世界の耳目は東アジアに
[ 広州アジア大会競技日程(予定)
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ソウル・G20 横浜・APEC 広州・アジア大会
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スポーツの祭典
韓国総合2位めざす 日本は史上最多の選手団
日本選手団は総勢1078人(選手726人、役員352人)で、史上最多の規模となった。金メダル数については、前回のドーハを上回る50個以上を目指すとしており、韓国を抜いてアジア2位を確保したいとの決意はことのほか強い。前大会は韓国の金58、銀53、銅82に対し、日本はそれぞれ50、71、77だった。
その韓国は今回、65以上の金メダルを目標に掲げている。ただ、今回は新種目が多く、興味深い半面、結果は予想しにくい。
中国伝統の水上スポーツであるドラゴンボートは、いわば22人乗りの漕艇競技だ。ドラゴン型の長さ11㍍のボートに、左右10人ずつ漕ぎ手が配され、船先には太鼓たたき、船尾には舵取りが乗り込む。男女6個の金メダルがかかっている。日本には同様の伝統競技があるが、韓国はカヌー選手出身者でチームをつくり、男子1000㍍に挑む。
カバディにも初エントリー
ダンススポーツも今大会で初めて登場する。スタンダード(ワルツ、タンゴ、クイックステップ、フォックストロット、ウィーンワルツ)とラテン(チャチャチャ、ジャイブ、サンバ、パソドブレ、ルンバ)の総合と、ウィーンワルツとルンバを除いた8種目で計10個の金メダルを競う。
90年の北京大会から正式種目になったカバディにも、韓国は初めてエントリーする。この種目は隠れん坊、格闘技、ドッジボールを混合させたインド伝統の競技で、1チーム7人のうち攻撃者1人が敵陣に入って相手選手をタッチし、自陣に戻ってきたら得点になる仕組みだ。
チェスで挑む小中高生7人
チェスも今回、初めて正式種目となった。男女個人、団体で計4個の金メダルがかかっている。先行して選手強化に努めた中国とベトナムは、世界最高レベルとされるが、韓国は世界ランキングで男子が135位、女子が117位とメダル圏からは程遠いという。
大韓チェス連盟ができてまだ3年に過ぎない。だが、すでにマスター9人を生んでいて、人的資源は豊富とされている。メダルへの期待が薄い今大会にあって、微笑ましくも将来への希望が持てるのは、男女各5人のチェス代表のうち成人は3人のみで、7人が小中高生であることだ。なかでも、小学生3人の存在が話題を呼んでいる。
新種目のなかで特に注目されるのは、韓・中・日が激突する頭脳スポーツとしての囲碁だ。男子5人と女子3人の各団体戦と、男女が交互に打つ混合ダブルスの3種目がある。これはチェスの一種目として行われるもので、3国はともに男女のトップ選手10人を出場させる。
新種目の囲碁韓日中が激突
中国はいち早く、囲碁をスポーツとして集中的に育成し、世界トップ選手を輩出してきた。日本は言うまでもなく伝統あるプロ組織を有しており、本因坊や名人のタイトル保持者などトッププロで固めた最強チームを出場させる。韓国ももちろん、名実とものドリームチームで臨む。
囲碁は頭脳の闘いとはいえ、体力勝負でもある。筋力や瞬発力は必要としないものの、集中力を支える持久力が不可欠だ。韓国チームは泰陵選手村で体力トレーニングの合宿も張った。客観的な戦力では厳しいとされるなか韓国は、金2、銀1の高い目標を設定している。
レベルアップ注目 大邱陸上、ロンドン五輪へ
アジア大会独自の異色新設種目は興味深いとしても、大会の肥大化を招いた難点があり、2014年の仁川大会から競技・種目数を制限する方針だ。夏季五輪競技を基本に、野球、ボウリング、カバディ、セパタクロー、ソフトボール、スカッシュ、中国武術、クリケットの8競技のうち一つを脱落させるという。
それはともかく、今大会でもより関心を引くのはやはり、夏季五輪の正式種目の戦績だ。韓国はテコンドー、アーチェリーを始めバドミントン、射撃、自転車、フェンシングで金メダルの量産が見込まれ、重量挙げ、体操、ハンドボール、ホッケー、野球でも善戦が期待されている。
至上の課題は陸上部門強化
なかでも今大会では、陸上競技の成績が過去のいつよりも問われよう。大邱世界陸上大会を来年5月に控えている韓国の、陸上部門でのレベルアップは至上の課題だ。IAAF(国際陸上競技連)の首脳陣からも、「韓国は何よりも陸上競技のスターを育てる必要がある」と指摘されてきた。
マラソンを例外として、韓国は陸上競技でこれといった実績がない。大邱世界陸上では男子やり投げ、女子走り幅跳びで入賞の可能性があるレベルにとどまっている。水泳の朴泰恒、フィギュアの金ヨナのような、韓国がこれまで苦手としてきた種目でのスター誕生が待ち望まれる。
来年の世界陸上、2年後のロンドン五輪に向け、真のスポーツ強国に脱皮するために、今アジア大会は韓国にとって重要な意味を持つことになりそうだ。
協調へ中国の責任重い
中国・広州で12日から27日まで、45の国と地域から選手・役員ら1万2000人が参加し、第16回アジア競技大会が開催される。9520人の前回(2006年)ドーハ大会を上回って過去最大規模だ。42競技で476の金メダルを争う。クリケットを除く41競技に1013人の選手団を派遣する韓国は、4大会連続の総合2位を目指す。
今大会も中国が独走し、韓国と日本が熾烈な2位争いをする構図は変わらない。地元開催の上に、中国の伝統競技が新種目に組み入れられていることから、中国のメダル獲得数は飛び抜けたものになりそうだ。
2位争いのほかに、経済発展を背景にスポーツ面でも力をつけてきたアジア諸国が3強をどこまで脅かすか、アジア全体のレベルアップがどこまで進んでいるのか、囲碁など新種目の戦いぶりと人気度はどうか、など興味はつきない。
競技の結果と並行して目が離せないのは、ホスト国・中国の国を挙げての対応ぶりであろう。ASEAN(東南アジア諸国連合)としっくりしていないうえ、日本との関係は尖閣諸島(釣魚島)沖での衝突事件をめぐって険悪化しており、韓国とも天安艦事件以降、北韓への対応に関連してアツレキが消えたわけではない。
周辺諸国と少なからぬトラブルを抱えている中国は、米国に次ぐ影響力を持つに至った世界の大国としての振る舞いが求められている。スポーツマンシップに則った堂々たる大会運営と同時に、大会を通して周辺諸国はもちろん世界に対し平和・協調の姿勢を打ち出す姿勢がほしいところだ。
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国際会議
成功の連鎖を期待 新時代築く格好のチャンス
11月はアジアがことのほか熱い。世界の耳目がアジアの、しかも韓国、日本、そして中国に集まる。まず韓国・ソウルでG20(主要20カ国・地域)首脳会議が11〜12日に、次いで日本・横浜でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が13〜14日に開催される。また、中国・広州ではアジア競技大会が12日から27日までの日程で開幕する。
経済・軍事大国として台頭する中国とは、ASEAN(東南アジア諸国連合)の一部加盟国が領土問題でアツレキを抱え、韓国とはこの3月の天安艦撃沈事件で不協和音をかなでた。最近では、尖閣諸島(釣魚島)沖での漁船衝突事件を契機に、日本との関係が険悪になったままだ。
G20とAPECでは韓・日・中3国の首脳が顔を合わせ、アジア大会ではこの3国選手団が3強としてメダル獲得にしのぎを削る。東アジアでは現在、日中の対立が突出しており、事態収拾の努力がなければ、関連諸国を巻き込んでいっそうの対立に発展しかねない。
それぞれ性格は異なっているものの、これら三つの大規模な国際行事を一方で、この間の葛藤を沈静化させる格好の機会とすることが期待される。
李明博大統領は、48カ国の首脳や代表が参加したASEM(アジア欧州会議〓10月4〜5日。ブリュッセル)の場で、10月末にハノイで開かれるASEAN+3(韓・日・中)会議にあわせて3国首脳会談を開くことを両首脳に提案、合意を取り付けていた。韓・日・中首脳会談の場から韓国が席を外し、自動的に日中首脳会談に移行するシナリオだったが、日本側の態度を不満とした中国によってドタキャンに合った。
失敗許されぬ意気込む韓国
しかし、韓国の役割は引き続き重要だ。日本との関係は、為替問題がくすぶっているものの、良好に推移している。天安艦事態で悪化していた中国との関係も改善が進んできた。習近平国家副主席がこのほど、中国義勇軍の参戦60周年と関連して、6・25韓国戦争の史実を歪曲する発言をしたが、尖鋭な外交問題までには至っていない。日中両国の和解に向け、もっとも適任の橋渡し役であり、それはまた韓国の国益とも直結する。
ソウルG20は、G7(先進7カ国)以外では初の開催であるうえに、定例化されてから最初の会議でもあり、韓国政府は成功に全力を挙げている。
李大統領はこの間、「ASEMもAPECも重要だが、基本的に世界の一部の協議体であり、開催国は持ち回りだ。しかし、G20は世界経済の最上位の協議体として、不安定な世界経済をよみがえらせる重い責務がある」と強調、「先進一流国家へ、国運上昇の歴史的機会だ」との意気込みを示してきた。
G20は米・日・独・仏など先進7カ国に欧州連合、中国やインドなど有力新興国などで構成され、GDP(国内総生産)の合計は世界の9割に迫る規模だ。したがって、世界経済に与える影響も大きい。
G20の韓国開催が決まったのは昨年9月。すでにAPECの日程が決まっていたが、韓国政府はAPEC直前の開催にこだわった経緯がある。それだけ韓国は、国際的な注目度を自ら高め、国民的なモラルの高揚を意識してきた。
波及効果の大きさから言っても、会議結果に対する韓国政府の責任はそれだけ重くなっている。失敗は許されない状況だ。
国際社会の目軽挙の戒めに
G20の成功はAPECに好影響をもたらし、日中関係改善の下地をつくることにもなろう。広州アジア大会を取り巻く世論や雰囲気にも、G20やAPECの結果が影響しないわけはない。国際社会の目をアジアに集めることで、日中両国に軽挙を戒めることにもなる。
国の威信をぶつけ合うスポーツ大会は、国家間対立に油を注ぐこともあれば、逆に善隣友好を増進する契機ともなってきた。アジア大会では、メダル獲得で中国のトップ独走は明白としても、2位を争う韓国、日本ともどもスポーツマンシップを発揮することで、しこりを和らげることを期待したい。
今大会はそれだけに、運営側と審判にかかる負担が大きい。広州の大会組織委員会は、日本糾弾デモが相次いだ国内事情を意識して、「オリンピック精神に基づき、全ての参加者に分け隔てない安全保障措置をとり、公平な競技環境を提供する」と言明した。「アジアは一つ」との意識を育む格好のマダン(広場)にするために、中国側の態度が問われる場ともなろう。
(2011.11.10 民団新聞)