名器ストラディバリウスの妙なる音を追い求めてバイオリン製作に励んでいる陳昌鉉さん(81)が10日、東京中野区の中高一貫校、国立東京大学教育学部附属中等教育学校で生徒と保護者を対象に講演した。
陳さんの講演を学校側は「待ちに待っていた」という。ようやく実現したことを喜び、生徒たちがグリーグのホルベルグ組曲を管弦楽で演奏する「サプライズ」で陳さんを出迎えた。
演題は「In Search of the Miracle Sound(奇跡の響きを求めて)」。陳さんはかつて長野県木曽福島町に雨露をしのぐだけの小屋を建て、手探りで300年前のストラディバリウスの音色の再現をめざしてバイオリンづくりに励んできた。そうした苦難の体験を語りながら、「内にこもるな、勇気と頑張りで世界に羽ばたけ」と激励した。
講演の後、NPO法人メリーオーケストラの理事長を務める野村謙介さんが、陳さんが製作したばかりのバイオリンとビオラで「故郷の春」を奏でた。野村さんは「バイオリン製作者として世界的な名声を得ているのに、いまだにもっと良い楽器をつくろうとしているどん欲さが陳さんのすごいところ」と述べた。
同校の高校2年生にあたる生徒たちは、陳さんの伝記が掲載された英語副読本(三友社出版社)を採用している。
(2011.3.16 民団新聞)