研究年で東京にいた私は、昨年11月24日、ソウルで開催されるハングルのローマ字表記の会議に出席するため日本を発った。金浦空港に着くと「Gimpo」と書かれた大きな看板が目に入ってきた。現行のハングルのローマ字表記は、文化観光部が2000年に告示した「国語のローマ字表記法」に従い、「金浦」は「Gimpo」、釜山は「Busan」と表記される。
2000年の改訂までは、「Kimpo」「Pusan」と表記したので、改定当時は空港に着くたびに何となく違和感を感じたが、韓国の友人によると、「Gimpo」「Busan」の方が韓国語の発音により近いという。
一方、日本のローマ字表記には、日本式、ヘボン式、訓令式等があり、日本国内の標準規格は1954年に示された訓令式である。例えば「し」は、日本式、訓令式では「si」、ヘボン式では「shi」となり、表記のしかたが少し違う。現在、人名、地名等にはヘボン式を用いることが多い。
今回の会議は、グローバルな国際社会の中で、現行の韓国語のローマ字表記を使い続けるべきか否かについて再検討しようというものであった。ビジネスや旅行で韓国を訪れたり、韓国に居住している多くの外国人にとって不便はないか、といった外国人に対する配慮もされている。
会議場までの行き方がわからなかった私は、空港のインフォメーションで尋ねた。漢字とかなで書かれた地下鉄の路線図を渡され、丁寧な説明を受けた。
しかし、地下鉄の中の電光案内は、ハングルとそのローマ字表記が交互に出るだけ。もし私がハングルやそのローマ字表記について何も知らなかったら、路線図があっても一人で目的地まで行くのは難しかったかもしれない。
会議は無事終了したが、やはり簡単に結論を出すのは難しかったようだ。しかし、たとえローマ字の表記法は違っていても、お互いに相手の表記法を学べば問題はない。
これだけ多くの人が頻繁に行き来する日本と韓国では、いつ、誰が、どちらの国に行っても、地図を片手に、一人でも安心して自由に歩けることが大切だと思う。
近年は日韓の文化交流も盛んになり、日本でも韓国語を学ぶ人が増えているが、この言語学習が日本と韓国の相互理解に大いに役立つと思われる。お互いの言葉を学び、意思疎通ができ、心が通じ合えば、日韓のさらなる友好関係が築けると思う。
齊藤 明美(翰林大学校・日本学科教授)
(2011.3.16 民団新聞)