自営業 高仁(大阪府 53)
朝鮮総連が東京と大阪で、韓国からも応援団を呼び、朝鮮高校に対する無償化の適用を求めて集会を開いた。
総連は、昨年4月にスタートした「高校無償化」制度から、朝鮮高校が「手続き停止」という超法規的措置によって排除されているとし、さらに東京、大阪、埼玉、宮城などの都府県で、朝鮮学校への補助金が次々と打ち切られており、朝鮮学校を戦時における「敵」と見なし、敵には人権など認めない、そんな風潮が大きく広がっていると訴えている。
この部分については、「北韓住民の人権はどうなっているの? 公民として、敵ではない自国民の人権すら省みない政権に今でも忠誠を誓い、同胞を事実上見殺しにしているのはだれ?」との問いをぶつけたい。
総連は気安く「人権」を口にするべきではないのだ。自分たちの身に限っての場合は、なおさらである。総連はまず、同じ公民である北韓住民の人権を北韓政権に問うのが順序である。
余りに軽い言葉
東京の集会である日本人団体の役員はあいさつで、「日本社会が未だに克服できないアジア蔑視の構造を、自分たちの運動が打ち壊せていない」と詫びた。朝鮮学校を題材にした映画「ウリハッキョ」を制作した韓国の映画監督は、「日本政府が子どもたちを人質にする政治をこれ以上、しないよう歯止めをかけて」と呼訴した。
北韓独裁、それに連なる総連の活動、そして朝鮮高校の教育内容があまりにも異常であることを度外視して、たやすく「アジア蔑視」を言うべきではない。日本に巣くうアジア蔑視に対し、自身の在り方を厳しく検証しながら、まじめに闘っている人々を貶め、アジア蔑視者に溜飲を下げさせていることにも気づかない愚論と言うべきだ。
「子どもたちを人質にする」。確かにそうだ。気の毒だと心底思う。しかし、人質にしている主犯は誰で、従犯は誰なのか。主犯は北韓独裁であり、従犯は総連だ、と言いたいところだが、北韓独裁との決別が不可能ではない以上、総連指導部が従犯のいない主犯と言っていい。
そもそも、日本政府は人質をとって誰に何を要求しているのか、納得いく説明ができないのに、安易に人質を云々すべきではない。
その映画監督は事前のアピール文で、「ウリハッキョは、在日同胞だけの宝物ではなく、南と北の宝物であり、世界の平和を愛する多くの人々の大切な宝物です」とも述べていた。
宝物は朝鮮学校ではなく、民族教育(機関)であるはずだ。民族教育には多様な場があり、選択肢がある。北韓独裁に奉仕させる洗脳教育の実態を見ず、あるいは知っていながら、朝鮮学校を世界の宝物であるかのように称えることは、日本各地で展開されているまともな民族教育を愚弄し、日本社会の嘲笑を買うものでしかない。
北韓と決別せよ
日本人拉致や麻薬犯罪、軍事挑発など枚挙にいとまがない暴挙を繰り返す北韓独裁に、追従のみする総連指導部の支配下に朝鮮学校はある。北韓独裁と総連指導部の暴挙・過誤は、日本の右傾化にどれほど利用されてきたか。その影響は在日同胞全般や日本の良識層にまで及んでいる。
総連指導部はともかく、総連の地方組織や朝鮮学校は、子どもたちの将来を真摯に心配するならば、北韓追従の体質・体系から自ら脱却しなければならない。総連にはもうそんなエネルギーはないと離脱者たちは言う。しかし、学校を中心に結束し、教育内容を健全化しようと考える同胞もいると聞く。多くの在日がまだ期待を抱いていることを知って欲しい。
(2011.6.29 民団新聞)