在外国民の責任重大
命運決する来年大統領選挙
「LAで最も怖いギャング団は南ベトナム出身です」。数週間前、LAで聞いたテコンド道場の元館長の言葉だ。75年に南ベトナムが崩壊し、「行き場がなくなった」彼らは、アメリカに来ても「突っ走らざるを得なかった」というのだ。
人々には普通、「国家は潰れない」という思い込みがある。しかし、国家の運命はこのような素朴な信頼の対象ではない。1816年に近代民族国家体制が始まって以降、2000年になるまで存在した国は207カ国。そのうち66カ国(32%)が生き残った。50カ国(75%)は暴力によって亡びた。
憂慮すべき意識の退廃
韓民族の歴史も受難の連続だった。侵略、戦乱、滅亡と続いた。建国から60年が過ぎた現在の大韓民国はどうか。
北韓による天安艦爆沈以降の昨年6月25日、6・25韓国戦争60周年の世論調査(朝鮮日報依頼、韓国ギャラップ)によれば、「マッカーサー将軍の仁川上陸作戦をどう評価するか」という設問に対し、回答者の54・7%が「大韓民国の共産化を阻止した」と答え、26・2%が「統一を無に帰して分断体制を固定させた」と応じた。後者の回答は20代と女性の間で特に高かった。
その回答は、金日成が6・25南侵によって「韓半島統一をするべきだった」、もしくは「しても問題ない」という発想に基づく。
これは、金正日が韓半島全体を呑み込んでも問題はないという、従北勢力の流れと軌を一つにする。国民の4人中1人が大韓民国という自由の陣地を守る意思がないか、さらには積極的に否定する状況にある。
60年前の6・25が北韓の全面戦争挑発だとすれば、今の韓国は天安艦・延坪島挑発など北韓の局地戦と心理戦、そして韓国内の従北勢力が連合した挑発・攪乱の渦中にある。崩壊した南ベトナムの悲劇は、私たちと関係のない遠い国の話ではない。
政治圏も限度を超えている。第1野党民主党のある議員は、北韓人権法の採決に同意して欲しいというハンナラ党院内代表に対し、「私は従北主義者だ。赤だ」と答えた程である。
しかし、もっと大きな問題はこれからのことだ。金正日は今も核兵器のアップグレードに狂奔している。韓国の牧師・神父・僧侶たちが労働党の幹部子弟専用の幼稚園を行き来して記念写真を撮っていた間に、韓国国防長官が指摘した通り、2006年と2009年の2度の核実験によって、核爆弾の小型化と軽量化はすでに成功したと見られている。
北韓の核爆弾が小型化すれば、韓国は対応するカードを失う。小型化された核武器は、世界6位水準の北韓ミサイルに装着され、実践配置されるであろう。北韓は核ミサイルをちらつかせながら、天安艦・延坪島のような局地戦の頻度を高めてくるだろう。その時、昨年できなかった韓国の報復は可能だろうか。
延坪島挑発以降、政府と国民は対北自由の放送は言うまでもなく、脱北者の対北ビラ散布まで妨害するほどおびえた状態だ。こうであるならば、核爆弾小型化で北韓の恐喝・脅迫能力が臨界点を超えるとき、韓国は北韓の人質に転落してしまう。金をくれと言われれば金を与え、米が欲しいと要求されれば米を与えなければならない。
これだけで終わらない。「全社会の主体思想化」という韓国革命の目標を達成するため、北韓はより一層精巧になった核ミサイルを梃にして韓国を引きずっていくだろう。これは、善と悪に対する分別力をなくした韓国人の利己心と無関心がもたらした。
もちろん、このような状況が真に生まれるということではない。天安艦・延坪島挑発と核武器・ミサイル開発の裏面には、北韓体制がすでに終わっていて、住民が政権を捨てた限界状況がある。
脱北者たちはどうして、「ビラだけでもまともにばら撒けば、人民軍はみな崩れる」と話すのか。韓国であれ北韓であれ、既成秩序が崩壊し、60年間も続いた熱戦や冷戦が今や終幕に向かっているのだ。
北の人質か自由統一か
韓国は北韓の人質に転落し、赤化のどん底に陥るのか、でなければ北韓が崩れて自由統一と一流国家を達成するのか。歴史の巨大な流れは、2012年の大統領選挙が決定する確率が高い。300万に近い有権者を抱える在外国民の覚醒と決断の重要性がここにある。大韓民国はもちろん750万海外民族の運命を決定づける力の一端を在外国民が握っている。
私は今日も演壇でこのように叫んだ。
もう地獄の守門将は北韓から離れるだろう。深い闇も晴れるだろう。大韓民国60年の偉大な成就がもうすぐ北韓の大地にも祝福として分け与えられるだろう。青年よ。闇がまた北韓を覆う前に、北韓の人々の心を先占しなさい! そして私たちは、生きぬいて証言者となった北韓の青年たちと自由統一の新しい地平をひらくだろう。
(2011.6.29 民団新聞)