日本語教育センター開設 北朝鮮難民救援基金
インターンシップ制度検討 脱北者支援民団センター
認定NPO法人北朝鮮難民救援基金(加藤博理事長、東京都文京区)は文化庁から委託を受け、北韓難民(脱北者)の定住のための「日本語教育センター」を6月末、都内で開設した。日本社会で自立していくために必要な最低限の日本語能力と基本的な生活習慣の習得を手助けするもの。プログラムの最後には職場でのインターンシップ(実習)制度の導入も予定しており脱北者支援民団センター(呂健二代表)では趣旨に賛同する同胞事業主を求めている。
日本で北韓難民(脱北者)の日本定住に特化した教育コースが設けられたのはこれが初めて。開講式に駆けつけた脱北者支援民団センターの呂健二代表(民団中央本部副議長)は,「ようやくここまでたどりついた」と感慨深げな表情だった。
北朝鮮難民救援基金によれば、日本政府が正式に受け入れを表明して国内に定住する北韓からの脱北者はすでに200人を超えた。にもかかわらず、日本政府による定住支援教育などは皆無に等しく、NGOボランティアなどによる個別支援に頼っているのが現状だ。善意の支援ですべての難民に対応することは不可能なだけに、今回の文化庁の支援は今後の明るい材料と受け止められている。
語学研修は9月までの60時間が第1期講座。研修は1回120分。月、水、金の週3回授業で、このうち2回が語学研修、1回は日本での定着支援を中心とした日本語教育となっている。第1期講座には定員10人のところ7人の応募があった。この後、10月から12月まで第2期講座(60時間)を予定している。
実習先企業求む
日本語教育コースの最終プログラムでは、職場での実習制度を設けている。これは自ら身につけた日本語の知識と生活習慣が職場でどこまで通用するかを自ら判断するためのもの。脱北者支援民団センターでは一定期間、実習生を受け入れてくれる事業主を探している。期間は9月12日以降、7〜10日間の予定。
6月29日の開校式で脱北者支援民団センターの呂代表は、「言葉は生きていくための基本。日本独特の思考方式、生活方式を早く身につけてほしい。民団としても希望者に職場を提供していきたい」と励まし、記念のコンサイス版韓日・日韓辞典を全員にプレゼントした。
研修参加者の年齢は35〜52歳と幅広い。大半が日常会話をなんとかこなせる程度。ひらがなやカタカナは、「読めてもはっきり意味が分からない」。ましてや、漢字となるとお手上げだという。漢字の書き取りでは「北で習った筆順とは違う」と戸惑う参加者の姿も見られた。
講習ではビデオの映像や手作りの教材カードも使われた。講師の野田拓志さんはテクニックとしての語学にとどまらず、日本で生活していくうえで必要な基本的な生活ルールまで教えていきたいと話す。
北朝鮮難民救援基金理事で同「日本語教育センター」のセンター長を務める田中啓剛さんは、「文化庁の委託事業として予定していた350時間以上のうち120時間しか認められなかったのは残念だが、脱北者の定住支援に初めて国の予算が付いたことは大きな前進」と受け止めている。
(2011.7.13 民団新聞)