白頭学院建国幼・小・中・高等学校(金聖大理事長、崔鐵培校長、大阪市住吉区遠里小野)が、来年の創立66周年を期して、校舎の再建築に乗り出す。同時に、教育内容とカリキュラムも抜本的に見直し、韓国語と英語、日本語の3カ国語を駆使して国際化の時代に飛躍できる人材の育成に力を注いでいく。民族教育の代表校からグローバルな学校へ転身を図る白頭学院の現場を追った。
募金を募り 来夏着工
雨漏りなど老朽化の進む校舎は、震災の被害を受けやすい。児童・生徒の安全を守るため、耐震性強化は避けて通れない課題だった。金理事長は昨年4月の新理事会で、校舎再建築を打ち出し賛同を得た。
計画によれば、幼・小の学舎は耐震工事を施し、中・高校の教室が入る建物を新築する。このほか、幼・小用の体育館や留学生の入る寄宿舎も新たに設置する。
敷地面積は1万1320平方㍍。校舎は4階建ての本館と、6階建ての南新館に分かれ、渡り廊下でつなげる。1階には会議室や理事長室、校長室のほか体育室も設置。職員室を2階、各研修室が6階に。3階は中学校各学年合わせて6クラスが入る。高校生の教室6クラスは6階に。4階が特殊教室や美術室、PC室、化学室など。来年8月から着工し、14年冬までの完成をめざす。
費用は「校舎再建築のための教育振興基金」への募金協力として呼びかけていく。個人の寄付は1口5万円(法人や団体の寄付金額は特に定めていない)。第1次の募金締め切りは12年8月末まで。
新中学生を対象にした1日体験授業も行っている |
「世界」へ羽ばたく人材育成に力
新しくなるのは校舎だけではない。金理事長は、「66年間、韓国語や韓国の歴史、文化を学ぶことをベースに、在日韓国人としてのアイデンティティーを育む場として奮闘してきたが、これからはグローバル時代にあった人材育成にもっと力を注いでいかなければならない」と力を込める。
具体的には英語の読み書き、生きた会話学習を重視し、韓国語、英語、日本語の3カ国語に精通した人材を育てていきたいという。現在、英語のネイティブ教師は1人だけだが、これからは人数を増やしていく。金理事長は、「英語学習を強化すれば、ニューカマーや駐在員の子弟も生徒として迎えることにつなげることができる」と、生徒数のさらなる増加を見込む。
学力レベルが向上すれば、進学率アップに結びつき、学校としての実績につながる。金理事長は「卒業生が『建国を卒業してよかった』と心から思えるような学校にしていくのが夢」と話す。
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教育方針
トリリンガルで一貫
▼幼稚園 韓国の言葉・歌・踊りなど、遊びを通して身につける民族保育が基本。手遊びやカードを使った英語教育も取り入れ、豊かな情緒を育む。少人数編成。完全米飯給食メニュー。
▼小学校 韓国の言葉・地理・歴史・テコンド・韓国舞踊学習で民族性を育む。英語は低学年から遊びを通して学習。3年生以上からはテキストを用いてスキットによる会話練習を行う。給食には韓国料理も。
▼中・高等学校 中学1〜2年は、韓国語・英語・日本語の通常カリキュラムに加え、トリリンガル授業を設定。中学生時代に英検準2級(高校卒業レベル)、韓国語能力試験3級(日常会話レベル)をはじめ、各検定試験にも挑戦する。中学3年〜高校1年では、主要5教科を中心に進学補修授業を展開中。高校2年からは志望大学に確実に合格する実力の養成を期している。3年生からは選択科目を細かく設定し、効果的なカリキュラム編成と少人数の授業を展開。放課後学習や夏季、冬季の補修授業などで受験に備える。高等学校では「特別進学コース」「総合コース(韓国文化専攻・英米文化専攻)」を設置。3年間の各種取り組みを通して、国際的視野を広げ、進路設計を行える力を培っている。
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韓・日大学へ進学率95%
進学実績でも「少人数指導」という強みを生かし、国立・私立大学の合格実績を伸ばしている。韓国国内の大学を含め、進学率は毎年95%以上を超えている。2006年〜2010年度までの進学実績は次のとおり。
[国公立]東京大学2人▽京都大学1人▽神戸大学1人▽大阪市立大学3人▽大阪府立大学2人▽奈良教育大学2人▽和歌山大学1人▽京都工業大学1人など
[私立]早稲田大学2人▽慶応大学1人▽上智大学1人▽同志社大学5人▽立命館大学7人▽関西学院大学6人▽関西大学3人▽関西外国語大学2人▽大阪薬科大学1人▽龍谷大学3人▽近畿大学6人▽大阪芸術大学6人▽天理大学1人▽帝塚山学院大学4人など
[韓国]ソウル大学2人▽延世大学3人▽高麗大学3人▽梨花女子大学1人▽韓国外国語大学5人▽中央大学1人▽東国大学4人▽建国大学3人▽誠信女子大学3人▽京畿大学2人▽水原大学1人など
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活躍めざましいクラブ活動
この実力 胸張って
クラブ活動で特に活躍めざましいのが、中・高校吹奏楽部、中・高校女子バレーボール部、伝統芸術部の3部。
■吹奏楽部 関西の雄・吹奏楽部
関西大会では3年連続金賞
吹奏楽コンクール関西大会(日本吹奏楽連盟主催)に04年、大阪府代表として初めて出場。今年の第61回大会では、近畿2府4県から地区大会及び府・県大会を勝ち抜いてきた強豪16校のなかで最高位の金賞(高校小編成の部)に輝いた。関西大会には6年連続出場し、3年連続金賞を受賞して新記録更新中。
■バレーボール部 全国大会の常連・バレーボール部
輝かしい戦歴全国大会3位
中学校女子バレーボール部は00年から3年連続で全日本中学校バレーボール選手権大会に出場した実績を誇る。03年には全国大会3位。全国中学校体育大会16位、近畿中学校総合体育大会3位、大阪中学校優勝大会準優勝。10年は高校がインターハイベスト8、近畿高等学校選手権大会準優勝。
■伝統芸術部 韓国のテレビにも出演の伝統芸術部
在日初めての大統領賞受賞
05年に大阪府高等学校芸術文化祭に初参加。07年には第16回韓国世界サムルノリ競技ハンマダンで創作部門の「大統領賞」(第1位)を在日として初めて受賞。08年には第32回全国高等学校総合文化祭優良賞受賞(全国3位)、同サムルノリ競技大会特別最高賞受賞。09年、第33回同総合文化祭文化庁長官賞優秀賞受賞。韓国SBSテレビにも出演した。
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激励と決意
人材教育には欠かせぬ英語
金相敏駐大阪韓国総領事館教育担当領事 グローバル時代における人材育成には韓国語、日本語だけでなく、英語教育も欠かせない。併せて、教員評価も、お互いに切磋琢磨していくうえで必要となる。着実にできることから積み上げていくことが大事だ。
比国一貫高と姉妹提携結ぶ
崔鐵培校長 建国では韓国語や韓国の歴史、文化に加え、英語力も強化していく考えだ。そのために教師たちは日夜、努力している。今年11月16日にフィリピンにある中・高校一貫校のインターナショナル学校(MIT)と姉妹提携を結んだ。お互いに交換留学することで生徒の英語力のさらなるアップをはかる。
民族校の良さもっと体感を
金漢翊民団大阪本部団長 民族学校はアイデンティティー教育にとどまらず、国際社会でグローバル人として活躍できる教育にも力を入れている。次世代を担うオリニたちには学校で行われている体験学習を通じて、民族学校の良さをもっと肌で体感してもらいたい。
歴史・文化や礼儀も学んで
金幸子PTA連合会会長 すばらしい韓国の歴史や文化にとどまることなく、基本的な礼儀作法も学んでほしい。勉強とクラブを通じて心身とも健全な人間に育つことで、国際化時代を担える人材になることを願う。
より安全で快適に
幼稚園部教員 新校舎では幼稚園施設がワンフロアに集まるので、より安全で快適になります。草花に囲まれた園庭で思いきり遊び、広い運動場を駆け回る姿が目に浮かぶようです。幼児の感性を育てるうえで最適な環境が整います。
民族の誇りを養う
小学校教員 教室の配置が良くなるので、休み時間に移動することがなくなります。運動場も広くなります。小学校は人生の根っこの大切な時期、民族の誇りをしっかり養います。
一緒に夢叶えよう
中学校教員 最新の教育設備を整え、これまで以上に活力あふれる学校の誕生が期待されます。来たれ、民族の未来を背負って立つ学生諸君! 一緒に夢をかなえようじゃないか。
明るい未来の予感
高校教員 私が勤務したのは本館が新築された32年前のこと。新校舎に足を踏み入れたときの、生徒たちの明るい表情を今でも鮮明に覚えています。校舎再建築で〞トリリンガル教育の建国、世界に羽ばたく建国〟が始まる予感がします。
少人数だからこそ
中学校生徒 建国中学校の良い点は少人数だからこそ。ソンセンニムの目が生徒1人ひとりに行き届き、家族のような信頼関係を築けます。韓国の勉強と日本の勉強、両方できるのもとてもうれしい。
嬉しさでいっぱい
高校生徒 校舎が再建築されると聞き、うれしさでいっぱい。建国を卒業できたことを誇らしく思えるよう、悔いのない学校生活を送りたい。
(2011.12.7 民団新聞)