在日韓人歴史資料館(姜徳相館長、韓国中央会館別館)の開設7周年を記念してのソウル特別展「日本の中のアリラン‐在日同胞100年‐」が、8月10日から9月30日まで約50日間、ソウルを代表するソウル歴史博物館(鍾路区セムナンギル50)で開かれる。本国同胞に在日の歴史、文化、生活を知らせ、若い世代を中心に、在日に対する認識を新たにしてもらうことを目的としている。歴史資料館と韓国の東北亜歴史財団、ソウル歴史博物館との共催。200余点のパネルと約500点の各種生活用具・史資料が展示される。
展示は「在日人口の変遷(解放前)」「在日同胞100年の年表」「在日1世の肖像」などを導入部とし、「植民地期」「解放後」「いつもこころは故郷に」「活躍する在日同胞」「家族の肖像」などのテーマ別に行われる。入館無料。
「植民地期」では、①玄界灘を渡った人びと②圧政そして抵抗③朝鮮人という理由だけで④戦時体制下の在日同胞に分けて、土地調査事業、産米増殖事業などによる収奪、強制動員・強制徴用などで、渡日せざるを得なかった在日同胞の苦難の歴史と日本での生活相を伝える。
「解放後」では、①解放そして帰国②差別と弾圧、管理③世代交代と差別撤廃運動④地方参政権獲得運動などに分けて展示。日本各地から帰国する時のようすや、解放直後の暮らし、日本残留後の貧困と民族差別政策と闘ってきた歴史をはじめ日本内での民族教育振興、権利獲得・指紋押なつ撤廃運動、地方参政権獲得運動など共生社会実現のために尽力してきた在日の歩みを紹介。
さらに「いつもこころは故郷に」は、①継承される伝統文化②無条件の故郷愛③在日同胞本国投資の足跡からなり、日本社会の差別と抑圧の中でも故郷・母国の発展のために力を注ぎ、韓国社会の発展と88ソウル五輪開催・成功などに貢献した在日同胞の故郷愛・祖国愛を、本国同胞に広く知らせる。
また「活躍する在日同胞」は、①在日同胞文学②スポーツ界での活躍③芸術・文化界での活躍④政治・経済界での活躍⑤教育界での活躍からなる。「家族の肖像」では在日の歴史を物語る家族写真を展示する。
歴史資料館は、植民地期に渡日した1世の世代がほぼ終わり、2世、3世への世代交代が進み、歴史の風化が問題となっていた時、在日同胞に関する各種資料を収集・整理し、それらを展示・公開することを通じて、在日の歴史を後世へ伝えていくことを目的に、05年11月に韓国中央会館別館に開設された。
これまで大阪(08年9月)、名古屋(09年12月)、福岡(10年11月)でそれぞれ特別展を開いている。韓国での特別展は今回が初めて。
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不即不離の関係知ってほしい…姜徳相館長談
残念だが、本国の人たちは、私たち在日の歴史をあまりよく知らない。仁川広域市にある韓国移民史博物館では、私たちのことを移民として扱っている。
植民地時代、私たちは日本の差別と監視を受けて暮らしてきた。解放後、本国は日本のくびきから離れ、生活は貧しくても独立国となった。だが私たち在日は解放後も、偏見や差別の中で生きてきた。祖国の分断という状況の中で、韓国の民衆が辿った苦難の歴史というものを、私たちは他国で辿った。
1世の方をはじめ、在日同胞には韓半島にいる人たちの苦しみは私たちの苦しみであり、喜びは私たちの喜びであるとの強い思いがあった。
だから本国の経済困難、民主主義の問題も含めてよそ事とは思えなかった。本国の発展のために自分の私財を投げ打ったり、あるいは団体として協力してきた。それは、成功を求めて米国などに渡った人たちとは違う。
海外同胞は約720万人いるが、韓国籍をずっと持っているのは在日韓国人が一番多い。
1世がほとんどいなくなった時代にまだ、多くの同胞が帰化をしないでいることは、非常に大きな意味があると思う。
日本は韓国にとっても大事な隣人だ。だが、その大事な隣人がどういう側面を持っているのかというのは、外からではなかなか分からない。
私たち在日の歴史と韓国の歴史は、不即不離の関係だ。どんな道をともに歩んだかということを分かってほしい。
ソウル特別展にはそうした思いが込められている。在日韓人歴史資料館が開設して今年で7年になる。これからも資料館は本国や日本の方々に対する私たちの大事な情報発信の場として、もっともっと発展しなければならない。なぜなら在日は、世界で一番、日本をよく知っているからだ。
ソウル展ははじめてだが、これまで大阪、名古屋、福岡で3回、特別展をやっている。そのたびに資料の収集が拡大する。
解放前には日本に230万人いた。解放後に170万人が本国に戻った。まだ1世の方も生きているだろうし、家族たちも1世から聞いていたと思う。関連の資料があれば提供していただきたい。それは、まさにホップ・ステップ・ジャンプのように資料の収集が拡大するからだ。今度の展示ではそれも期待している。
(2012.7.4 民団新聞)