掲載日 : [2017-11-15] 照会数 : 5788
韓国テンプルステイ<17>高麗時代の造形美 八角九重石塔
2018年平昌冬季五輪会場のひとつ、龍平スキーリゾートに近い珍富(江原道平昌郡珍富面)からバスで20分ほど。下車してすぐ目の前が月精寺入口だ。紅葉シーズンとあって人出が多い。
月光がとりわけ美しいことから月精寺と名づけられたが、残念ながら宿泊中に星は見えたものの月にはであえなかった。週末だけテンプルステイのプログラムが実施され、端正なテンプル用服に着替えてから108個の数珠つくりなどを体験する。今回参加した20人は、祖母、嫁、幼稚園児の一家をはじめ家族づれが多い。
一人ひとりに大鐘をつかせてくれた。ついた時の「ゴ〜ン」という音がじかに体内に響く。これは「お清め」の一種なのかもしれない。礼拝では、30人ほどの僧侶とともに「礼仏文」と「般若心経」を唱える。所要時間は約30分ほどで、とてもシンプルだ。
新羅・善徳女王時代の643年、慈蔵律師が創建したと伝えられる。国立公園である五台山(1563㍍)は満月台、長嶺台、麒麟台、象三台、知工台をさす名称で、1000㍍を超す名山が連なる。知恵の象徴である文殊菩薩が住むといわれ、仏教の聖地とされてきた。
境内でめだつのが、本堂の寂光殿およびその前にたつ八角九重石塔(国宝48号)。塔の前に安置された薬王菩薩座像は合掌しながら供養を捧げる姿をしており、本堂前の光景としてはとても珍しい。
石塔の高さは12・5㍍あり、高麗時代に数多くつくられたなかでも、すらりとした造形美に評価が高い。一方の菩薩座像はレプリカで、本物は境内の聖宝博物館に展示されている。とはいえ、柔和なほほえみが見る者の心をなごませてくれる。参拝者が塔まわりをしながら熱心に両手を合わせていた。
周囲の渓谷には北漢江の水流である五台川が流れ、国内随一の天然樹林を擁する。ツツジやホタルブクロ、シカやキツツキといった動植物が豊富だ。ここから9㌔ほど離れた上院寺までの渓流沿いにはモミの樹林帯があり、ハイキングを楽しむ人々の列が続く。東へ5㌔先には五台山史庫跡に霊鑑寺がたち、ドラマ「夏の香り」のロケ地として知られる。主峰である毘盧峰山頂には仏の舎利をおさめた中台寂滅宝宮をまつる。
すぐ近くの地蔵庵に寄ってみる。おもしろいことに、殿閣の扉に「門を必ず閉めてください。リスが入ってきます」との貼り紙があった。実際、周辺にはリスがうろうろしている。それだけ自然が豊かな証かもしれない。1000年を超すモミ林全体が神域なのだろうか。
ちなみに、俳優ペ・ヨンジュンのフォトエッセー『韓国の美をたどる旅』に月精寺が登場するが、取材時にみずからテンプルステイを体験したという。
◇江原道平昌郡珍富面五台山路374‐8(℡8233‐339‐6606)
塔まわり 寺の塔は釈迦の舎利をおさめたもので、仏像と同じく信仰の対象。正面から塔に向かって合掌半拝し、合掌したまま時計まわりで3回まわる。右肩を塔に向ける姿勢が尊敬の意を示し、インドの伝統礼法に由来する。
宋寛(韓国文化研究家)
(2017.11.15 民団新聞)