掲載日 : [2017-12-20] 照会数 : 5601
訪ねてみたい韓国の駅<20>嶺東線 汾川
[ 地区60年の木造駅舎がサンタクロースの家に変身している ] [ 両元駅の回でも紹介したV‐Train。冬は暖房をつけて、雪降る峡谷をトコトコと走る ]
林業衰えサンタの里に
慶尚北道の栄州駅から、嶺東線の列車で1時間あまり。汾川(プンチョン)駅は、洛東江の源流に沿った、小さな集落にある駅だ。路線バスはほとんどなく、鉄道でしか訪れることはできない。
汾川駅が開業したのは、嶺東線が開通した1956年のこと。翌1957年に現在の駅舎が完成した。
韓国でも有数の秘境だった嶺東地方への鉄道開通は、地域経済に大きな変革をもたらした。1970年代には、東海岸の蔚珍周辺で伐採された春陽木(松の一種)がここ汾川駅から全国各地へ出荷され、駅周辺にはたくさんの民家や市場が集まったという。だが、林業の衰退が始まると過疎化が進み、現在は空き屋もあちこちに見られる。
そんな汾川駅が、近年再び注目を集めている。2013年、洛東江の峡谷を走る白頭大幹狭谷列車「V‐Train」が運行を開始。汾川駅は、その始発駅となり、さらに2014年12月20日には、汾川駅周辺一帯が、韓国初の「サンタビレッジ」として生まれ変わった。
列車から降りると、駅舎や駅前には、サンタクロースやトナカイに関連したオブジェがいっぱいだ。週末には、V‐Trainや、ソウルからのO‐Trainといった観光列車が発着し、多くの観光客で賑わう。
でも、どうして汾川駅がサンタビレッジなのだろう。待合室に、その由来が書かれていた。
「フィンランドのロバニエミ郊外に位置するサンタビレッジが全世界的に有名になったきっかけは、1927年、フィンランドのラジオアナウンサーが〞サンタはロバニエミの山に住んでいます〟と紹介したことでした。汾川駅は、2013年5月、韓国とスイスの修交50周年を記念して、スイスのマッターホルン山麓にあるツェルマット駅と姉妹駅提携を締結。翌2014年、韓国最初のサンタビレッジとして運営されるようになったのです」
さらりと読むと納得しそうになるが、よく読むと姉妹駅のツェルマット駅とサンタクロースは無関係。汾川駅がサンタビレッジとなった理由はよくわからない。ヨーロッパ、アルプス、雪、といった連想からサンタクロースビレッジが企画されたのかもしれない。
駅舎の右手には観光用の待合室があり、こちらも「サンタクロース風」。室内には暖炉をイメージしたストーブが置かれ、サンタ衣装や駅員の制服を着て記念写真を撮ることもできる。
駅周辺を歩いてみよう。確かに空き屋も目立つが、サンタビレッジに合わせてカフェや民宿を営む家もある。駅前にはレンタサイクルもあるので、暖かい時期なら洛東江に沿ってサイクリングを楽しむのも楽しそうだ。
今年の冬も、12月23日から来年2月28日まで、冬季サンタビレッジが開場する。期間中は、V‐TRAINをサンタクロース仕様に装飾したサンタ列車の運行をはじめ、線路の上を軌道自転車で走るサンタレールバイク、氷上ソリなど多彩なイベントが催される。サンタクロースの衣装を着た駅員も登場するという。 ソウルからは、中部内陸循環列車O‐Trainが運行され、V‐Trainに接続する。日帰りも可能で、平日なら大抵空席があるので、訪れてみてはいかが。
栗原景(フォトライター)
(2017.12.20 民団新聞)