掲載日 : [2018-01-01] 照会数 : 7340
「朝鮮通信使」関連資料…デジタル化 保存へ
ユネスコ記憶遺産「朝鮮通信使」関連資料…デジタル化 保存へ
縁地連絡協 図録作成も視野
日本側のNPO法人朝鮮通信使縁地連絡協議会(縁地連)と韓国側の財団法人釜山文化財団が共同申請した「朝鮮通信使に関する記録‐17〜19世紀の日韓の平和構築と文化交流の歴史」が国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界記憶遺産(世界の記憶)」に登録された。発表は日本時間の2017年10月31日午前2時ごろ。ユネスコHP上だった。申請件数は日韓両国所在の朝鮮通信使に関する外交、旅程および文化交流の記録111件333点(日本側48件209点、韓国側63件124点)。これからは「保存」と「適宜な公開」が課題となる。縁地連では今春以降、「ユネスコ連絡部会」を設立して誰もが関連資料にアクセスできるようにしていく。
各地で順次特別公開中 縁地連によれば、日本各地の各種博物館、資料館などに保存・保管されているすべての資料を撮影してデジタル記録化し、永久保存を目指す。
これは誰もが関連資料にアクセスできるようにするためだ。関係者からの意見集約を急ぎ、早ければ今年度からでも取り組む。撮影だけで少なくとも1000万円以上の費用を見込む。撮影が終われば図録の作成にとりかかる。
ユネスコ記憶遺産登録を記念しての特別公開も各地で始まった。広島県呉市の公益財団法人蘭島文化振興財団松濤園は同館所蔵の「朝鮮人来朝覚備前御馳走船行烈図」(全長8㍍、呉市指定有形文化財)を朝鮮通信使資料館「御馳走一番館」で展示中だ。
庶民から「天下第一」といわれるなど朝鮮との文化交流において重要な位置を占める「馬上才」についても「海外からの曲芸師」と題して紹介。様々な資料から馬上才が与えた文化的影響をひもといている。このほかにも朝鮮通信使に関する船模型や「土人形」「張子人形」、通信使行列図など見どころがいっぱい。今月29日まで開催。
3点の関連資料を所蔵している京都の公益財団法人高麗美術館でも2期に分けて特別展「京・近江の朝鮮通信使」を準備している。第1期は4月1日〜5月29日。第2期は6月14日〜8月21日。
すでに終了したが、東京国立博物館(台東区上野)は昨年12月、同館が所蔵する「朝鮮国書」を公開した。国書とは両国王の名で取り交わされる重要な外交文書のことで、文面には「誠信交隣」の精神が満ちあふれている。同館は1811年の国書を含む計9回の使節の国書を有している。
※朝鮮通信使とは
江戸幕府の招請により朝鮮王朝が江戸幕府へ派遣した外交使節団。両国間の外交課題の解消や将軍の代替わりなどのとき、これを祝賀することを主な目的とした平和と友好親善の象徴だった。学者、文人、医師など300〜500人規模で構成、1607年から1811年までの間に12回来訪した。庶民にとっては一生に1度か2度しか見られない貴重な異文化体験だった。各藩の儒学者たちとも活発な文化交流を行った。
(2018.01.01 民団新聞)