掲載日 : [2018-12-19] 照会数 : 6644
時のかがみ「K‐POPの魔力」桑畑優香(ライター・翻訳家)
[ 音楽授賞式「MAMA」で受賞したTWICE ©CJ ENM Co.,Ltd All Rights Reserved ] [ 音楽授賞式「MAMA」で受賞したBTS ©CJ ENM Co.,Ltd All Rights Reserved ]
高レベルのダンスと歌世界の若者の共通言語
至極身近なことで恐縮だが、今年の私的韓国エンタメニュースの第1位は、「我が家の娘がK‐POPにハマったこと」だ。2002年生まれの16歳。年明け頃から、宿題の合間に時々ダンスを踊りおどけていたのだが、それがTWICEの真似であると気付いたのは、少し経ってからのことだった。
私が韓国エンターテインメントの仕事をしている関係から家ではいつも韓国の音楽が流れ、雑誌や資料が至る所においてある。それに特に関心を示すことがなかった娘が、ここにきて突然K‐POPにハマったのは、不思議だった。
だが、それは我が家だけではなかった。久しぶりに会った複数の保育園時代のママ友たちが「うちの子が最近K‐POPにハマって」という。さらに、夏休みに来日した、中東・ヨルダンに引っ越したアラブ人の幼なじみ(16歳)から「BTSが大好き!」と聞いたときには、さすがにビックリだった。秋に娘がタイのチェンマイから車で数時間の山奥の小さな村にボランティアに行った時も、タイ人の小学生たちが歓迎会でBLACKPINKの曲を踊って、盛り上がったという。
ハマったきっかけを娘に尋ねると「ユーチューブで動画を見たら、レベルの高いダンスや歌に引き込まれた」という。ヨルダンの女の子も、タイの村の子たちも同様だ。K‐POPがネットを通じて拡散されていくこと、そしてもはや世界の共通言語なのだと、肌で痛感した出来事だった。
背景にある仕掛けのひとつを目の当たりにしたのが、12月12日にさいたまスーパーアリーナで開催された「2018 MAMA FANS〓CHOICE IN JAPAN」だ。
「アジア最大級のグローバル音楽授賞式」と謳う通り、BTS、TWICE、Wanna One、IZ*ONEなど今年を象徴するアーティストを日本に呼び寄せ一つのステージで見せたのはもちろんのこと、驚いたのは、審査方法だ。賞の名前を訳すと「ファンの選択」という通り、プロの審査やCDの売り上げはカウントせず、問われるのはファンの投票とオンラインのミュージックビデオの再生回数のみ。番組はケーブルテレビのMnetのみならず、ユーチューブなどでも配信されるという、既存のテレビの枠を超えた試み。なるほど、ワールドワイドかつインターアクティブに若い世代の心をつかむはずである。
さて、今年娘を観察(?)していて、もう一つ目から鱗だったことがある。それは、「『冬のソナタ』って何?」と言われたこと。「ヨン様」は知っていたけれど、『冬ソナ』というドラマとはリンクしていなかったという。
『冬のソナタ』が放送された2003年には、まだ1歳だったことを思えば、当時の恋愛ドラマを知らないのは当然か。
2018年は冬のソナタがオンエアされて15年。時代の変化に思わず遠い目をする年の瀬である。
(2018.12.19 民団新聞)