掲載日 : [2018-12-26] 照会数 : 7150
時のかがみ「釜山の海上橋」桃井のりこ(編集者・プロデューサー)
[ 広安大橋(鈴木圭撮影) ]
海洋都市の風量に新たな魅力プラス
韓国第2の都市「釜山」は、近年、国際観光都市としても名が高い。日本や中国はもちろん、最近ではタイ、マレーシアなどからの観光客も増えている。観光という点で、ソウルやほかの地方都市との違いに、海と一体化した景観と新鮮な海産物という、海洋都市ならでは魅力がある。
ダイナミックな海の景色がスリリングに楽しめる、五六島スカイウォークや青沙浦タリットル展望台、松島海上ロープウェイは、季節を問わず人気の観光スポットだ。
また、冬はテゲと呼ばれるズワイガニやタラバガニ、そしてフグが旬。四季折々の海の幸が釜山の食をより充実させる。
私が個人的に海の街釜山の独自性を感じるのが、海上橋の数々だ。広安大橋、釜山港大橋、南港大橋、影島大橋、釜山大橋、巨加大橋など、釜山には多数の橋が架かっている。
なかでも、広安大橋(別名ダイヤモンドブリッジ)は、釜山のシンボル的な存在だ。これは水営区と海雲台区を結ぶ、水営湾の海上に架かる自動車専用大橋で、2003年に開通した。総延長7・42㎞(吊橋900m、トラス橋720m、接続橋5・8㎞)、2層構造で往復8車線の国内最大の海上複層橋梁だ。通行量は一日11万3000台(11月基準)で、釜山の重要な交通インフラとなっている。
広安大橋は日没後、ライトアップされ、海上に美しい姿を浮かび上がらせる。目の前の広安里ビーチ、そして、マリンシティや冬柏島からもロマンチックな夜景が楽しめる。また、釜山花火祭りのメーン舞台、市民マラソン大会のコースなど、釜山を代表するイベントとの関わりも大きい。
そして、繁華街の南浦洞と対岸に浮かぶ影島をつなぐ影島大橋も、釜山の名所のひとつとなっている。ここは1934年完成の韓国唯一の可動橋で、釜山市指定文化財にも登録されている。老朽化などの理由から40年以上の間、開閉を停止していたが、改修工事を経て2013年より、開閉を再開。毎日午後2時から10分間、橋の片側が跳ね上がる様子を目にできる。
このめずらしい光景を見物に、国内外から多くの観光客が訪れるようになり、橋の周辺も広場として整備された。かつて、橋の近辺にハルモニの小さな占い店が集まっていたが、橋の歴史とともに占いの店も姿を消した。今では「影島大橋の近くに、当たる占いのハルモニがいるわよ」と、たまに噂を聞くぐらいになってしまった。
海上橋のメリットはなんといっても、最短距離、最短時間での移動が可能なこと。そして、橋の上から眺める街と海が融合し作り上げる壮大な風景といえる。
いつも私は金海空港に到着し、海雲台への道筋で、広安大橋を利用する。車が水営湾上を直進し、海雲台方面へ向かうとき、右手にマリンシティの超高層ビル群が目に入る。その瞬間、「あ~、釜山に帰ってきた」と安堵し、広安大橋は私にとっても大切な存在だと実感するのである。
(2018.12.26 民団新聞)