掲載日 : [2019-02-27] 照会数 : 5790
「東方のともしび」2・8独立宣言100周年<下>
[ 2・8独立宣言60周年を期し青年会が建立した記念碑(在日本韓国YMCA玄関) ]
受け継ぐ精神的支柱 共生の未来へ
朴裕植さん(37、青年会中央本部前会長)の2・8独立宣言との出会いは20年近く前。当時、早稲田大学に通っていた。青年会と学生会が2月8日の夜に開催した記念事業に参加し、こういう先達がいたんだと初めて知り、「勇気づけられるものがあった」。
2・8独立宣言は被植民地の民衆が「宗主国の首都」で我が身の危険を顧みず、独立を宣言した世界史に類を見ない画期的な闘いだった。その意義としては「進取性」、「献身性」、「組織性」の3つが評価されている。朴さんも学生会中央本部の会長を経て青年会に入り、20代の後半から中央本部としての活動にシフトしていくなか、精神的支柱として受け継いでいる。
「2・8独立宣言は1919年、被植民地下という時代背景で起きた。重要なポイントは若き志士たちがそのころの日本をどう見ていたのかということ。僕自身、同胞青年の未来のため、社会の現状改善と問題点の打破に向けて果敢にアピールしていくことが必要なことなんだと再認識させられた」。朴さんが大事にしているのは「青年の死は民族の死である」とした独立運動家、島山安昌浩義士の言葉だという。
張在勛さん(22、学生会中央本部会長)は2月8日、青年会と共催した記念事業「100周年を迎えた今」で独立宣言書を朗読した。2・8については昨年、在日本韓国YMCAの99周年式典に参加してから「もっと知りたい」と思うようになった。
張さんは「先輩たちのおかげでいまの自分たちがある。2・8精神を継承して学生会ならではの運動を起こしていきたい」と話している。
2・8独立宣言書の後半には「民主主義的な先進国の範に従い、新国家を建設するならば、わが建国以来の文化と正義と平和を愛好するわが民族は必ずや世界の平和と人類の文化にたいし貢献するであろう」と書かれている。朴淳圭さん(26、在日韓国留学生連合会前会長)はこのくだりに感銘を受けたという。
「100年前に新国家建設はこうなると書いた。いまのわれわれ後輩たちに託したメッセージだと思った」「日本人としては永遠にふたをしたい歴史でしょう。でも、韓国人としては忘れてはいけない。忘れたらまたなぐられるだけだから。ただし、なぐられても、男どうしならば仲直りして真の兄弟になれる。その間をうまくやるのが大事なんです」
在日韓国留学生連合会第3代会長を歴任した金永悦さん(65、2・8会会長)は2・8独立宣言について「ただ国を愛するという気持ちだけでやった。動機が純粋」と次のように強調した。
「あのとき集まった留学生に肩書が一つもありません。名誉欲もないしお金も持っていなかった。それが純粋という意味なんです。命をかけた勇気ある行動で、日本によって植民地化されたアジアの弱小民族、弱小国家に影響を及ぼし、勇気に火をつけたというのが大事なんです。純真さがなかったらできませんよ。3・1独立運動は宗教の合体もあり、入念な準備があって爆発しましたが、そもそも独立運動に火をつけたのは2・8独立宣言なんです」
同じく留学生出身の洪来輪さん(65)も語る。
「2・8運動は留学生の大先輩たちが自分の命を惜しまず、国の独立のために立ち上がった。その気持ち、精神を受け継いで後世に残すようにしたい」「ただ、21世紀は対立だけでは共に生きていけない時代なんですね。なぜ、韓国の留学生が日本のど真ん中で独立宣言書を朗読したのか。植民地から独立したいという意味を日本の政府によくわかってほしい。法廷で彼らの弁護を引き受けてくれたのも日本人の弁護士。なかには官憲から追われた留学生の逃亡を助けてくれた日本人もいたはず。いまはお互い交流して、助け合う時代なんです。2・8会のめざす『融合』という言葉も意味ある言葉だと思う」
(2019.02.27 民団新聞)