掲載日 : [2019-04-24] 照会数 : 6225
世界遺産の道を歩く<1>ソウル~東京 21世紀の朝鮮通信使
[ 友情ウオーク韓国コース最大の難所、鳥領峠を登り切ってホッとひといき=忠州市 ] [ 聞慶市では一日中、満開の桜の下を行進 ]
登録後初のウオーク…沿道の関心もさらに高く
「第7次21世紀の朝鮮通信使 ソウル‐東京友情ウオーク」が4月1日ソウルをスタートした。今回は韓日両国で申請していた朝鮮通信使の歴史資料がユネスコの「世界の記憶(世界記憶遺産)」に登録されてから初めてのウオーク。日本人、韓国人、在日韓国人が手を携えてソウルから東京まで毎日平均30㎞の道を歩き、お互いに交流し絆を深める「草の根交流」はいつの年にもまして意義深いことで、沿道での関心もいつになく高まるものと期待されている。東京までの道中紀行を「朝鮮通信使友情ウオークの会」の金井三喜雄氏にお願いした。
◆マイナス2度
【初日】(景福宮~城南市27㎞)朝の気温はマイナス2度と冷え込んだが、雲ひとつなくすっきりと晴れ渡った空の下を歩きだす。今年も景福宮からの出発では韓国観光公社の協賛で昔の朝鮮通信使の衣装に身を包んだ韓国ウオーカーが正使、副使、従事官に扮して先導、にぎやかな笛やドラの音が響く中を東京へ向けて歩き出した。今回ソウルスタート時の日本隊は28人(在日7人)、韓国隊は7人。日本隊の平均年齢は72歳になった。12年前の第1次に比べて7歳も年を取った。最高齢は在日の金承南さんの85歳。60歳からマラソンを始めて今でも年に数回マラソンを走る強者(つわもの)だ。同じく在日のウオーカー、李恵美子さん(68)は7回連続の参加。「東京までの全コースを歩くのは2回目ですが、マイペースを守って日韓の仲間と楽しい会話をかわして歩きます」と意気込みを語った。
【2日目】(城南市~龍仁29㎞)韓国人の昔のウオーク仲間も加わりソウルのベッドタウンを南に向かう。今回もパトカーが時々先頭につき歩行の安全をサポートしてくれる。ケナリの黄色い花が青空に映える。
【3日目】(龍仁~安城37㎞)途中から都会の町を抜け地方道に。午後からは田んぼが広がり、ノンビリした雰囲気で自然を楽しみながら歩く。途中の町で前々回東京まで歩いた張さん夫婦がバナナやお餅を差し入れてくれた。夕食会では初参加で今回通訳を担当している在日の林銀さんの誕生祝いが行われた。
【4日目】(安城~陰城郡昆池23㎞)農村地帯のあちこちにある高麗人参畑の覆いの色が黒、青、緑とさまざま。農道が続く峠を越えた食堂での昼食はソルロンタン。この辺りの農村風景はもう日本には存在しないような「原風景」で懐かしい。日本と韓国のウオーカーが4日間歩いて打ち解けてきたようだ。
◆通信使の子孫が
【5日目】(陰城郡~忠州38㎞)内陸部に入り朝は冷え込んだ。まだツボミの桜並木を進む。忠州市に入ると第2回朝鮮通信使(1617年)の子孫の会の人たちが出迎え。ジュースやコーヒーを差し入れてくれた
【6日目】歴史探訪日。弾琴台などを見学後、子孫の会の人たちと共に先祖の祭祀へ。山の上にある第2回の副使、朴 のお墓に詣で子孫の人たちと昔の通信使の苦労を話しあった。
【7日目】(忠州~水安堡温泉24㎞)5日間を毎日平均30㎞歩くと、風邪引きや、おなかをこわす人がかなり出るが今回は少なく、足の痛みで車に乗る人も少ない。川沿いの道には若葉色の柳の葉が風にそよいで気持ちがいい。車がほとんど通らずノンビリした雰囲気のコース。ゴールした温泉で久しぶりに体を伸ばした。
◆満開の桜並木
【8日目】(水安堡温泉~聞慶22㎞)今日は韓国コース最大の難所の峠越え。地方道とバイパスのゆるやかな上り道を過ぎて、山道へ。まだ「冬景色」の茶色い木々の間を1時間上り、標高561㍍の鳥嶺峠にたどり着く。文禄慶長の役の後に出来た石造りの「第一関門」を聞慶側に抜けると草原が広がっていた。古道の雰囲気が残る道を下ると満開の桜並木が待っていた。夕食では峠越えを祝い、サムギョプサルを食べて疲れを癒した。
【9日目】(聞慶~聞慶市虎渓26㎞)1日中「お花見ウオーク」。第1次で小さかったスタート地点の桜の木は12年たちかなり大きくなり満開。新羅時代の山城「姑母山城」を下ると今度は樹齢50年以上の古木の桜が出迎え。雨模様になったゴール近くにも桜並木は続いていた。宿所には高潤煥・聞慶市長が名産品を持って待っていた。
【10日目】(虎渓~醴泉30㎞)昨日の雨が夜には雪に。遠くの山はうっすらと雪化粧。ダンプカーが行きかった道路にバイパスが出来、道が歩きやすくなった。6㎞続く空軍基地沿いは離着陸訓練の爆音が響き渡る。休憩した2つの面事務所ではお菓子やお餅のおもてなしを受け、ゴールした新築の醴泉郡庁では農楽隊が迎えてくれた。
【11日目】(醴泉~安東34㎞)霧が立ち込め寒い。今日も桜並木を進む。古道の百峠を越えるとようやく薄日が差してきた。到着した安東市では権寧世市長が日本人職員の緒方恵子さんとともに歓迎してくれた。この後、永川、慶州、蔚山を経て22日の釜山ゴールを目指して歩く。
(朝鮮通信使友情ウオークの会=文・金井三喜雄 写真・大嶋敏晴、高橋美智子)
(2019.04.24 民団新聞)