掲載日 : [2019-05-10] 照会数 : 7271
世界遺産の道を歩く<2>ソウル~東京 21世紀の朝鮮通信使
[ のどかな果樹畑地帯を行く=永川市 ] [ 室町時代の朝鮮通信使・李藝を祀る石渓書院を訪問 ]
安東~釜山(4月12日~22日)
各地の歓迎に感激
【12日目】(安東・歴史探訪日)曇りのち晴れ。安東市のバスでユネスコ世界遺産の河回村を市の日本人職員、緒方恵子さんの案内で見学。今も人々が生活を続けている民俗村で、両班の暮らしを窺うことのできる瓦葺きの古い建築や、藁葺きの家々が数多く保存されて昔にタイムスリップしたようだった。村の人々の熱い信仰の対象になっている樹齢600年の大きなケヤキに旅の安全の祈りを書き込み奉納した。
【13日目】(安東~義城33㎞)晴れ。川沿いの大きな岩盤をくりぬいた洞門をくぐる。村に残る木造建築は、「蘇湖軒」という16世紀にたてられた学者の書斎。朝鮮戦争で多くの木造建築が焼失した韓国では、このような木造建築がそのまま残っているのはとても珍らしいという。安東から安全サポートをしてくれた警察官と記念写真。毎回この区間のお巡りさんはこころのこもったサービスをしてくれるのでありがたい
【14日目】(義城~義興26㎞)曇り空の地方道は車が少なく、レンギョウの黄色い花が彩りを添える。新羅時代のたくさんの古墳群がある丘は、朝鮮時代に中国から綿花の栽培が伝えられた記念の場所。空が暗くなり、今回のウオークで2回目の雨が降り出した。にぎやかな太鼓の演奏に迎えられて義興面(軍威郡)事務所にゴール。マッコリをふるまわれ、キムチと豆腐をご馳走になった。毎回このように歓迎を受け本当に有難い。
色のハーモニー
【15日目】(義興~永川40㎞)朝は永川市のバスで、永川市・新寧中学校まで移動。今日も「韓国晴れ?」の上天気! 新寧は朝鮮通信使が宿泊・休憩した場所で、毎回私たちを歓迎してくれている。にぎやかな農楽隊に先導され、パレード。孫明坤・韓国体育振興会副会長が最高齢ウオーカー(85歳)在日の金承南さんの肩を叩いて「親孝行」。丘の上の桃のピンクと梨の白い花がニンニク畑の緑の葉と混ざり合って、絶妙の「色のハーモニー」。永川市の崔圻文市長から夕食会に招待された。
【16日目】(永川~慶州37㎞)沿道の桜並木はすでに葉桜。峠の道ですれ違った国会議員さんから励まされる。気温がぐんぐん上がり、休憩した峠のお店では、日陰に座ってほっと一息。慶州に近い金尺古墳群には大きな円墳がいくつも並んでいた。夕食会は盛り上がり、「アリラン」や「故郷の春」をみんなで手をつないで唄いあった
全員で昔の衣装
【17日目】(慶州・歴史探訪日)永川市のバスで大邱南部にある達城韓日友好館・鹿洞書院を訪れた。文禄・慶長の役で豊臣軍から朝鮮軍に投じた「沙也可」と呼ばれる日本の武将の子孫が暮らしている。後に朝鮮軍の金忠善将軍として功績をあげた人物で、「韓日友好の象徴」とされている。次に永川郷校を訪問。郷校というのは朝鮮時代に儒教の教えを両班の人材育成を目的に造られた、地方の教育機関。儒教の祖、孔子が祭られている大成殿での祭祀に日韓ウオーカー全員が昔の衣装にも身を包んで参加した。今までに、ウオーカー全員がこのような昔の衣装に身を包んで祭祀に参加したことは無く、貴重な経験となった
【18日目】(慶州~仇於・慶州市21㎞)快晴、今日は暑くなり午後には27度。今日から釜山まで日本隊2人、韓国隊5人の区間ウオーカーが加わった。東洋最古の天文台といわれる、瞻星台を見学し、古墳公園の道をノンビリと進む。交通量の多い国道から公園がある緑道へ迂回。車は全く通らず静かな雰囲気で広~い田んぼの道には田舎の匂いがいっぱい。
【19日目】(仇於・慶州市~蔚山24㎞)途中から昔の古道は個人所有の雑木林に入る。小川を渡れず、台地から降りて林の中に。曇り空だが風が強く寒い。釜山に近くなり、新緑の若葉が目立ち始めた。再建された楼門を通り、蔚山東軒にゴール。太和楼での歓迎会では室町時代の朝鮮通信使・李芸が書いた手紙が朗読され、「両班の舞い」と「朝陽の舞い」が演じられた。公演後は地元ウオーカーと河川敷の竹林を歩くナイトウオークに参加。
【20日目】(蔚山~熊上・梁山市29㎞)毎日気温が変わり、今日は時々曇りだが暑い。蔚山東軒の楼門前で歓送の太鼓演奏と送別の舞いが行われた。音楽隊に先導されて蔚山をスタートし、市街地をパレード。室町時代の朝鮮通信使・李藝の故郷に建てられた位牌を祀る石渓書院を訪問。昼食をご馳走になった。
戦友との再会も
【21日目】(熊上・梁山市~釜山25㎞)日本からの1日ウオーカーも含め地元ウオーカーも参加しソウル以来の100人近い多人数に。釜山への道は工事中の場所が多く、田舎道に迂回しても道が途切れたりして石ころだらけの道も歩く。市街地では、先導したパトカーの警官が降りて横断歩道で交通整理。韓国のお巡りさんには本当にお世話になった。チョンマル カムサハンミダ! 東來東軒にゴールすると、日韓のウオーカーが抱きあって喜び合った。そして金承南さんは昔、韓国戦争に従軍し、同じ部隊にいた戦友、元成秀さん(84)との再会を果たし、厳しい時代を想い感無量だった。
元総領事も完歩
【22日目】(釜山・休養日)夕方からは道上尚史・釜山総領事から公邸に日韓ウオーカー全員が招待された。4年前の松井貞夫総領事の招待以来2回目。退官した松井さんは今回はウオーカーとして韓国コースに参加して完歩した。「お疲れさまでした」と総領事のねぎらいの言葉と共に久しぶりの和食を味わった。
(朝鮮通信使友情ウオークの会=文・金井三喜雄 写真・大嶋敏晴、高橋美智子)
(2019.05.10 民団新聞)