掲載日 : [2022-03-16] 照会数 : 6707
新大久保語学院池袋校 呉順瑛校長 韓日交流へオンライン講義
新大久保語学院池袋校(東京・豊島区)は、昨年10月から韓国を深く知るためのオンライン講義「イベントプラス」を毎月、実施している。企画、運営などを担う校長で、今年、代表取締役に就任した呉順瑛さん(53)は、普段は韓国語講師として指導に当たる。韓国語学校でこのようなイベント開催は珍しいが、呉さんは「日韓交流のために何かやりたかった」という。
「知ることで仲良くなる」
昨年10月15日、第1回「イベントプラス」では、人気コーナーである「J‐Kピープル」を開催した。「J‐Kピープル」は、J(JAPAN)‐(懸け橋)K(KOREA)の意味。
韓国在住で日本語が話せない韓国人と日本で韓国語を学んでいる人をつないでフリートーキングを行うもので、お互いの率直な意見を聞けると関心は高まっている。
イベントは毎月3、4回開催している。これまで「韓国留学・情報」「映画・俳優」「文学・ドラマ」「翻訳」など多彩なテーマを取り上げた。毎回、自ら企画を練り、司会を務めたり、講義をすることもある。
ソウル出身。1995年日本に留学。東京学芸大学大学院教育学研究科修士過程終了後、帰国し韓国の大学で非常勤講師として日本文学と日本語を教えていたことが転機に。「勉強を続けたいという気持ちが沸いてきた」。2002年に再来日し、07年に東京学芸大学連合大学院学術博士号(日本近・現代文学専攻)を取得した。
在学当時から他の大学で非常勤講師を務めながら、06年から本校である新大久保語学院新大久保校(東京・新宿区)の非常勤講師を始めた。同院は「自分にとっては唯一の韓国人コミュニティーみたいな感じ」で楽しかった。1年後、漠然と日本に残ることを決めた。
12年、本校の李承珉院長から新しく立ち上げる池袋校の校長と取締役に就いてほしいと打診された。実務経験はなく、一度は断るも李院長から再考を促された。迷っていたが「なんで断るんだ。せっかくのチャンスだからやってみたら」。友人の言葉に背中を押された。
毎日が忙しく過ぎるなか、昨年の盆休みに身の振り方を考えた。65歳で仕事を切り上げて帰国する。その前にやっておきたかったのは日韓交流に貢献することだ。その思いは大学時代からあった。
日韓大学生親善セミナーに参加したときのこと。友だちになった日本人は人柄が素晴らしかった。韓国で受けた歴史教育を通じて抱いてきた日本人像とは違った。「なんでって疑問が生じ、歴史もいろいろ勉強したいという気持ちになった」
仲良くするために何かしたい。「互いに知れば知るほど、仲良くなるのに、よく分からないから誤解が生まれて溝が深まる。そういう認識もイベントプラスの土台にはあった」
真面目過ぎず浅くない解説
「イベントプラス」を立ち上げるときの申込者の目標は30人。最初は5人からスタートし、3カ月後には25人を超した。「イベントプラス」の立ち位置は、真面目過ぎず浅くない解説だ。そのさじ加減が難しいと話す。
今後は一般の人で関心のあるものを察知して、それを提供できるような形をとりたいと常にアンテナを張っている。
来月はハングルのカリグラフィーか、かわいいハングルの書き方のコツのいずれかをやりたいし、今後は、韓国文学を順番に取り上げていく文学講座を開く予定だ。
「語学学習との両立は大変だが、手ごたえが少しずつ感じられて楽しい」。笑顔から充実した様子が伝わってきた。
(2022.03.16 民団新聞)