


富山妙子は1921年神戸生まれ。父の転勤に伴い「満洲」に渡り女学校を卒業した。「植民者の娘として成長し、朝鮮人や中国人に対する傲慢で無慈悲な日本人の仕打ちを目撃」した体験は、植民者としての加害性の自覚と後の創作活動に大きく影響した。
韓国の民衆美術家らとの交流を深め、95年にはソウルで初の個展、21年には延世大学校博物館で個展が開催され、韓国政府より大韓民国国民褒章が授与された。同年91歳で永眠。
差別意識と分断の溝がより深かった時代、富山を突き動かした感情とは何だったのか?富山妙子の生涯の功績を追う。(真鍋祐子・監修、皓星社、A5判、336㌻、3300円+税)
韓国現代文学の重鎮で、世界的評価の高い著者が、構想から執筆まで30年をかけた長篇小説。24年国際ブッカー賞最終候補作となり、世界22か国語で刊行が決まっている。
マテニ(マテ2型)とは、日本による植民地支配期に作られた山岳型機関車のことで、山岳地帯の多い韓半島北部で運行された。
本書は、韓国人の鉄道員一家四代の百年を通して韓国産業労働者の姿を映し出すとともに、過酷な植民地支配を行った日本の近現代史もあぶり出している。
(黄晳暎著、姜信子、趙倫子訳、白水社、四六判、328㌻、税込2530円)
「なむ」とは韓国語で「木」のこと。著者は、ノーベル文学賞作家・韓江の作品など韓国文学の翻訳者として知られる。
30歳で東京を離れて韓国留学。その地で感じた思いを、韓国語で詩に書きとめ、93年には詩集を韓国で出版。その後、沖縄での数年間の生活を経て東京に戻り、編集者として働く。翻訳家としての本格的な活動は2010年代半ばからだ。
韓国留学から翻訳家として活躍するまでの20年の歩みを詩とエッセーでつづった本書を通して、読者は著者が韓国と向き合う思いに触れることが出来る。(斎藤真理子著、イースト・プレス、四六判、280㌻、定価1800円+税)