掲載日 : [2019-10-17] 照会数 : 7212
来日30年金美仙さん 伽倻琴散調履修者に
日本での努力実る 恩師の流派、伝えていく
全羅北道指定無形文化財
慶尚南道咸陽出身で、来日31年になる伽倻琴奏者の金美仙さんが、今春、全羅北道指定無形文化財第40号伽倻琴散調履修者に認定された。5歳で伽倻琴を習い始め、1988年来日後、演奏活動とともに、伽倻琴教室を開き、韓国伝統音楽の普及に務めてきた。90年代、伽倻琴奏者の第一人者の一人で、母である成錦鳶さんの名曲「成錦鳶流伽倻琴散調」を継承する池成子さん(韓国全羅北道指定無形文化財第40号伽倻琴散調保有者)との出会いによって演奏家としての姿勢を学んだ。12月6日には、履修者を記念する伽倻琴演奏会を東京・品川区の会場で開く。
12月に記念演奏会 東京
今回、履修者試験に臨んだのは8人。日本では初めて、「池成子伽〓琴研究所」の研究生でもある金さんと在日2世の金幸子さんが認定された。
試験は、師匠の推薦がなければ受けられない。名人3人による厳格な審査は、重要文化財の著名な先生の弟子たちも落ちるほどだ。試験の後、金さんが審査員から聞かされた言葉がある。
「履修者になったら終わりではなく、これから始まることを胸に刻みなさい。死ぬまで練習を続け、次の世代に教えていくことを忘れてはならない」。そして2人に「韓国から離れた日本で、こんなに努力したことが誇らしい」と告げた。
金さんは5歳で伝統舞踊を始め、小学校5年生から先生が離れるまで4年間習った。中学、高校は独学で練習を積み、慶尚南道晋州市立国楽院修了後、晋州市立舞踊団第1期生として活動した。
その後、在日の夫と出会って来日した。池さんとの出会いは、子どもを保育園に行かせた時、伽倻琴を持っていた金さんにママ友の三枝幸子さんが「伽倻琴の先生を知っている」と声をかけたのがきっかけ。
90年代、池さんが毎年来日し、在日本韓国YMCA(東京・千代田区)で開講していた夏の講習会に参加。「インパクトは凄かった。今まで習いたかったいろいろなものを池先生は持っていた」。初級から中級までの講座を全て受講した。
「ちゃんとした音を出したいという気持ち」が勝った。個人的に習いたいと池さんに申し出たが、2回断られ、3回目で師事することを許された。伽倻琴散調は個人稽古になる。それを受けられるのは限られた人だけだ。
伽倻琴散調には成錦鳶流、崔玉山流、金竹坡流など、名人の名がついている。2004年には伽倻琴散調の10流派が一堂に会するコンサートがソウルで開かれたが、その数は減っている。
その中で異彩を放つのが「成錦鳶流伽倻琴散調」だ。成さんは戦前から戦後にかけて最も活躍した演奏家で、60年代に人間国宝に指定された。だが、韓国伝統音楽家・研究者の夫、池瑛煕さんとハワイへ移住したことで、その命脈は絶たれた。
「成錦鳶流伽倻琴散調」は、伝説の枠の中でしか思い出されなくなってしまったが、娘の池さんが韓国と日本での公演活動以外に、多くの人に教えることによって命脈をつなげてきた。
「成錦鳶流は、手の動きの柔らかさと一つの物語のような流れによって作られている。皆が聞いた時、華麗な動きがあると言われるゆえんです」
現在、池さんは伽倻琴散調を70分の作品として発表している。金さんら履修者として池さんが認めている人たちは50分。
「この曲を弾くたびに、こういうことだったのかという音の変化が分かってくる。勉強を続けながら完成度を上げていきたい」。金さんはそう語る。
「金美仙伽倻琴演奏会」 12月6日。19時開演。大井町きゅりあん小ホール。料金4000円。当日、金さんの弟子や金幸子さんも出演する。問い合わせは金美仙伽倻琴研究所(03・5463・9858)。
(2019.10.16 民団新聞)