2020年最大の注目イベントは東京五輪。7月24日から8月9日にかけて東京をはじめ日本各地で行われる4年に一度のスポーツ祭典で韓国選手団の活躍が期待されている。本番で韓国はいくつの金メダルを獲れるのか追ってみる。
愼武宏(スポーツライター)
最有力は女子ゴルフ…お家芸アーチェリー、テコンドも
◆女子ゴルフ
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ゴルフの朴城炫 |
金メダルがもっとも有力視されているのは前回リオ五輪で112年ぶりに正式種目に復活したゴルフ。特に女子だ。
60人の選手で競われる東京五輪の女子ゴルフは、世界ランキング上位15人(ただし各国最大4人まで)が自動的に出場権が与えられ、残り45人は五輪ランキング16位以下から1カ国最大2人まで出場が可能だ。
昨年12月の世界ランキングでは1位高眞榮、2位朴城炫、6位金世煐、7位李晶恩の4人が有力だが、ほかにも金孝周(13位)、柳簫然(18位)、エイミー・ヤン(20位)、許美貞(21位)と群雄割拠だ。リオ五輪覇者の朴仁妃(14位)もいる。
最終メンバーは今年6月の世界ランキングで決まるが、前回同様、韓国から4人出場が濃厚だ。
◆アーチェリー
アーチェリー、射撃、テコンドは韓国のお家芸だ。メダル獲得で国民たちを喜ばせ、勇気づけるということから韓国スポーツ界の「孝子(ヒョジャ)種目」と呼ばれており、実際に強い。
リオ五輪でアーチェリーは男女ともに個人・団体の両方を制覇して韓国が金メダルを独占。男子50㍍ピストルでは秦鍾午が北京五輪から3連覇している。競技の普及で世界各国の猛追を受けているテコンドもリオでは金2個を死守した。
この3種目の中でも韓国代表争いが熾烈なのが女子アーチェリーで、「五輪のメダルより韓国代表になるほうが難しい」と言われているほどだ。
◆テコンド
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テコンドの李大勲 |
テコンドはロンドンで銀、リオで銅を獲得し「韓国テコンドの看板」と呼ばれる李大勲(男子68㎏級)が悲願の金を狙っている一方で、昨年の世界選手権優勝の裵ジュンソ(54㎏級)、張ジュン(58㎏級)、朴ウヒョク(80㎏級)ら若手も台頭。
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射撃
射撃は昨年10月の韓国国体で95年生まれの朴デフンが活躍するなど、有望株は多い。
東京五輪メダリストを予想する米国の『オリンピックメダル・プレディクション』では韓国はテコンド2、射撃2、アーチェリー1、柔道2、ゴルフ1と、8個の金メダルを予想しているほど、海外でも韓国の「孝子種目」は高く評価している。
安昌林、金琳煥、金知秀ら柔道、在日の期待
◆柔道
何よりも注目するのが柔道だ。柔道の五輪出場選手はまだ正式決定していないが、18年世界選手権王者の安昌林(男子73㎏級)はじめ昨年の世界選手権準優勝の金琳煥(男子66㎏級)、グランプリ・モントリオールで優勝した趙睦煕(女子63㌔級)、ジュニア世界選手権3位の金知秀(女子57㎏級)など、国際舞台で活躍している。
日本で生まれ育った在日アスリートたちが多く選抜されれば、在日同胞にとっても大きな関心が集まることだろう。
64年東京五輪では在日2世の金義泰が男子柔道中量級で韓国柔道初のメダルとなる銅メダルを獲得して在日同胞たちを喜ばたが、56年の歳月を超えて、ふたたびその快挙が再現されるかもしれない。
秘かに金狙う野球
◆野球
2008年北京五輪以来12年ぶりに正式種目となる野球も有望種目だ。
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プレミア12では準優勝だった韓国野球代表 |
韓国は昨年11月のWBSCプレミア12で好成績を収めて五輪出場権を確保。決勝戦では稲葉ジャパンに敗れてしまったが、その可能性を十二分に示した。ましてチームを率いるのは、北京五輪で韓国野球に金メダルをもたらした金卿文監督だ。「AGAIN 2008」の期待は高まるばかりだろう。
◆サッカー
五輪の男子サッカーは23歳以下の選手主体で3人のオーバーエイジ枠を加えた18人がエントリーできるが、この世代には鄭又榮(フライブルク)、白昇浩(ダルムシュタット)など、欧州組はもちろん、李康仁などA代表で活躍する選手も多い。18年ジャカルタ・アジア大会で金メダルをもたらにした金鶴範監督も、昨年のU‐20W杯準優勝メンバーをテストしなから、着実にチームとしての完成度を高めている。12年ロンドン五輪で銅メダルを獲得しているが、それに続く快挙も夢ではないと言われている。
レジェンドの娘、呂ソジョン飛躍
◆体操
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呂ソジョン |
体操男子はロンドン五輪の体操男子跳馬で韓国体操初の金メダルを手にした梁鶴善を中心に4人が東京五輪出場を決めているし、体操女子では18年アジア大会の跳馬で金メダル、19年世界選手権でも決勝進出を果たした呂ソジョンが期待株だ。2002年生まれの彼女の父親は、1992年から3大会連続で五輪出場した「韓国体操界のレジェンド」呂洪哲だ。父のDNAを受け継いだ俊鋭と注目されている。
◆水泳飛込
昨年7月の世界水泳選手権で五輪出場権を獲得した男子3㍍板飛び込みのウ・ハラムが自己最高の4位に入賞しメダル圏内に名乗りを上げた。
◆女子バレーボール
東京五輪でメダル獲得が有力視されているのは「お家芸」だけではない。ロンドンで4位、リオでベスト8とメダル獲得まであと一歩だった女子バレーボールも注目だ。バレーボール連盟は悲願のメダル獲得へ、史上初の外国人監督となるイタリア出身のステファーノ・ラバリニ氏を招聘した。スーパーエース、金軟景を中心に、「攻撃バレー」への変身を進めている。
1月7日から行われるアジア最終予選で出場権を獲得すればメダル候補の一角に挙げられる。
◆女子ハンドボール
84年ロサンゼルス大会から10大会連続出場の女子ハンドボールも、昨年12月の世界選手権で前回王者のフランスを破るなど自信を取り戻している。組み合わせ次第ではアテネ五輪銀以来のメダルも夢ではない。
ホッケーは男女ともに出場権を逃したが、2月にアジア最終予選が控えている女子サッカーや女子バスケットボールへの期待も大きい。
大韓体育会は「目標は金7、総合10位以内だが、5個が現実的」と目標設定しているが、それ以上の成績を挙げて「チーム・コリア」の底力を世界に示してくれることを期待したい。
(2020.01.01 民団新聞)