掲載日 : [2023-03-03] 照会数 : 3811
〈寄稿〉 全国中央委員・代議員の皆様へ 嘘をつく人たち,嘘を信じる人たち
<寄稿>
全国中央委員・代議員の皆様へ
嘘をつく人たち、嘘を信じる人たち
韓真悟
◆「嘘」を信じる物差し
『自分たちの側か、そうでないか』
年初から「清潭洞酒席疑惑」に関連して、朝鮮日報日本語版に「特集・一つの国、二つに割れた国民」が3回にわたって報道された。
昨年、韓東勲法相が深夜に尹錫悦大統領と酒席を持ったとする、いわゆる「清潭洞酒席疑惑」が韓国政界を揺るがしたことはご存知だろう。だが、「目撃した」と大騒ぎした当事者が、警察で嘘だと認めた。とんだ嘘っぱち疑惑だったわけだ。
当事者が嘘だと認めたことで一件落着するかと思いきや、鬼の首を取ったかのように疑惑を声高に叫んだ野党は「うそだとしたら遺憾」だとしつつ公式な謝罪は行っていない。野党がこんな態度を見せると、「共に民主党」支持層の10人中7人(69.6%)は依然として清潭洞酒席疑惑を「事実」だと信じていた。
このような状況に対して、朝鮮日報はこう結論付けている。「統計・科学・ファクト(事実)はそっちのけで、『自分たちの側か、そうでないか』が最優先の物差しとして適用される」と。ゲーテがいう「人聞は自分の聞きたい言葉しか聞かない」に通じるものだろう。
ここ2年の民団社会に起きている団長選挙をめぐる動きは、朝鮮日報が指摘した通りの状況に陥っており、大変示唆的である。
◆取消理由を誤魔化す河元事務総長
自身が出した虚偽文書が選挙違反
昨年10月、民団東京本部が開催した「2022在日同胞活性化フォーラム・議決機関研修会」で、民団中央本部の河政男元事務総長が「最近の中央三機関を巡る状況について」と題した講演をリモート出演して実施したという。参加者に配布された講演資料を見ると、客観性を装う中に、決定的な嘘を織り交ぜている。
河氏の資料には、「問題の発端」の一つとして「選管は、任候補に対して過去の賞罰を報告しなかったとして立候補登録を抹消」したと記載している。その理由として「規約では、2年以内となっており、16年経過したものは規約に抵触しない」のだから、前科があっても古い話なのだから、立候補取消は違法だと言いたいのであろう。
この手の論理は、事態の初期に全国的に出回ったものだ。選管が任氏の立候補登録を取り消したのは、過去の賞罰を報告しなかったこととは全く関係がない。立候補が取り消されたのは、任氏の選挙事務所・事務局担当の河氏自身が、2021年2月5日に、選管の許可も受けずに全国に発信した「任泰洙中央団長候補に対する『怪文書』について」の文書だった。
同文書のおおよその趣旨は、任氏は恐喝未遂とは全く関係ないことが解り事件にならなかったと、要するに何もなかったんだという内容であった。しかし後日、そうではないことが明らかになったことから、有権者に虚偽の情報をバラまき、投票を誘導したことが立候補取消の原因であった。
要するに、有権者にウソの文書を送ったことが問題になったのだ。韓国でも日本でも、選挙の際に虚偽(ウソ)を公表すれば、一発で選挙違反だ。
河氏自身が、立候補取消の原因を作っておきながら、明らかにウソの理由を研修会の講師として参加者に教授するのは、いかなる理由なのだろうか。いずれにせよ、朝鮮日報の分析の通りに「自分たちの側」に属する人士は、河氏が報告した内容を事実ととらえ、ウソの理由を拡散している。
◆金明弘元大阪副団長も同じ轍
コリアンワールドは訂正しないのか?
同様の誤解による文書は2022年12月15日付けの「コリアンワールド」新聞にも掲載されている。民団大阪本部の前副団長・金明弘氏の「特別寄稿」だ。
金氏は寄稿の中で「選挙管理委員会は、刑事事件にかかわる前科がありながら、これを故意に認めなかった任氏は経歴詐称にあたり立候補資格を失うと結論付けた」としている。また「民団規約に経歴詐称が選挙違反にあたると明記されていない」とする理由も付け加えている。
これも、立候補取消に関して全く違う論理を展開している。立候補取消の前提が違っているのだから、結論が違ってくるのは当たり前だ。金氏ご本人の誤認識であるのか、事実と違うことを知りながら書いたのか、どのような思い込みからこの文章を書いたのかは、わからない。しかし、掲載するコリアンワールドが少なくとも報道を名乗るのであれば、事実関係を点検もせずにダダ洩れ状態で掲載するのは倫理にもとる。
また、事実誤認にもとづく金氏の寄稿を踏まえて、「10項目の『発展改革要綱』提案(コリアンワールドの見解)」を掲載しているが、もはや空虚でしかない。事実誤認を訂正をしないのであれば、今後は報道とは名乗らないほうが良い。
◆嘘をついても隠蔽したい事実こそが真の問題点
“三機関が皆辞めれば良い”は真実ぼかし
朝鮮日報の分析から考えても、「自分たちの側」の人士から吹き込まれた嘘を見抜くのは並大抵ではなさそうだ。
中央団長選挙問題が、ここまで複雑化してしまえば、この問題を専門的に追っている人士以外は、何が問題なのか理解することが難しい状況に陥っている。
事実を誤魔化し、問題点を複雑化することによって真実をぼかし、「ここまで混乱しているのだから三機関長皆が責任を取れ」という言い方は、事態の本質に詳しくない人士にとっては、非常に心地よく聞こえる。なぜなら、自分で物事の善悪を考えなくて良いからだ。しかし、この論理に乗っかっている限り、何が真実かを見抜くことはできない。後は、人間関係や真実を調べもせずに誰かの口車にのった人士に扇動されるしかないのである。
そうならないためには、今一度よーく考えてみれば良い。何が問題であったのかを。そして、「自分たちの側」の一部人士が、嘘をついてでも隠蔽したい事実こそが、真の問題点であることは容易に想像がつく。「自分たちの側」に立っている中央委員の皆さんが、道を誤ることがないように祈るのみである。〈おわり〉