掲載日 : [2018-10-31] 照会数 : 6237
文化財でつなぐ未来、東大で韓日共同シンポ…東アジア共有財産に
李成市座長(右)が進行役を務めた総合討論(東大駒場)
日本にある韓半島由来の文化財を切り口として韓日関係を再照射しようとする双方専門家によるシンポジウム「文化財でつなぐ韓日の未来」が21日、東大駒場キャンパス(東京・目黒区)であった。韓日パートナーシップ宣言20周年を記念、韓国国外所在文化財財団と東京大学韓国学研究センターが共催した。
文化財返還問題は韓日関係の中でことあるごとに対立する争点となってきた。今回のシンポでは返還問題だけにとらわれず、「北東アジアの共有財産」としての視点を打ち出した。韓日両国で展示し、学術交流をさらに発展させようというのが趣旨だ。
基調講演は「韓・日間における歴史認識問題と文化財問題」と題して李泰鎭ソウル大学校名誉教授が行った。この後、特別講演と3つのセッションが行われた。
国外所在文化財財団の金相〓調査活用2チーム長は、外国に流出した文化財を〓1略奪をはじめとする違法・不当な方法による搬出〓2友好的、合法的に搬出〓3具体的経緯が明らかでないものに分類。〓1だけは「還収」の対象としたものの〓2については「現地活用」の考えを打ち出した。必要とあれば国内の文化財を一時的に送り、韓国文化を効果的に紹介するために活用できるとした。
韓国の遺物が日本に初めて紹介されたのは「韓国美術五千年展」(1976年)。韓国でも2002年の韓日サッカーワールドカップ共同開催を記念して初めて日本の遺物が展示された。以来、様々な規模の韓日交流展が開催されてきた。
韓国国立中央博物館の崔善柱研究企画部長は今後の課題として、概括的な展示や各国を代表する名品よりも、親しみやすい特別なテーマを選んで展示することが望ましいという。例えば両国の善隣外交の代表的な事例といえる朝鮮通信使の共同展示を挙げ、「これからの両国の友好な交流関係を推進していくための一助になるだろう」と述べた。
最後の総合討論では12年に長崎県対馬市で発生した仏像盗難事件を取り上げた。「韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議」の世話人代表を務める有光健さんは事件が嫌韓論を増幅させる根拠を与えてしまったと指摘し、「『日本に向かって盗んだ文化財を返してくれ』と主張するためには盗んだ文化財を返さなければならない」と述べた。
事件以降、新たな盗難や所有権をめぐる争いごとを恐れ、展示中の韓半島ゆかりの文化財を倉庫にしまったり、調査研究や文化財をめぐる韓日交流さえ断られる事態が相次いでいるという。
韓国国外所在文化財財団によれば、日本にある韓半島ゆかりの文化財は7万余点。流出先の海外20カ国のなかでは最も多い。種類も仏像や絵画、考古美術品など多様。日本への流出は購入や寄贈、豊臣秀吉の侵略や植民統治期の略奪と多岐にわたる。最初の入手者から現在の所有者へ渡ったケースもあり、今となっては所有の経緯そのものが不明という文化財も多い。この問題の解決のためにも韓日間の相互理解を促進し、交流を強化する必要が叫ばれている。
(2018.10.31 民団新聞)