掲載日 : [2018-12-06] 照会数 : 7234
夜間中学、多国籍化で在日1世は主役の座から後退…東京で研究大会
[ 分科会で報告する東大阪市立長栄中の金香都子さん ]
解放前後に様々な事情で義務教育を受けることができないまま高齢化した在日同胞1世や中国残留孤児が多く通っていたのが夜間中学校(公立中学校の夜間学級)だ。いまやその主役は新渡日の外国人へと移り替わりつつある。11月29、30の両日、東京・荒川区のサンパール荒川で開催された第64回全国夜間中学校研究大会で報告された。
文科省 「全県に1校を」
2017年度文部科学省の調査によれば、公立の夜間中学は全国に31校あり、在籍生徒数は1687人(17年7月現在)を数える。このうち1356人(80・4%)が外国籍だ。国別では中国が4割でトップ。以下、ネパール、韓国・朝鮮と続く。韓国・朝鮮には脱北者とその子弟も含まれる。
東大阪市立長栄中学校夜間学級の17年度在籍生徒数は92人(4学級)。かつては在日韓国・朝鮮人を中心に400人が在籍し、昼間よりも在籍数が多かったときもあった。現在は多い順に日本、韓国、中国と続き、全部で9カ国と多国籍化が進んでいる。
同校教師で在日2世の金香都子さんは、自らが夜間学級の教壇に立つようになった経緯を2日目の「領域別分科会」で次のように語った。
「山菜取りが趣味で毎日のように外出していた母がなぜか、家に閉じこもるようになった。ちょうど70年代後半のこと。駅の切符売り場に自動販売機が置かれ、駅員から対面で買えなくなったからだった。文字の読み書きができないというのはこういうことなのか。娘としてはなにかできることはないかと考えるようになった」
韓国から嫁いできた新渡日の奥山朋子さんは、初日の全大会で夜間中学の体験を発表した。入学のきっかけは夫との死別だった。さびしさを紛らわせようと奈良市立春日中学校夜間学級に通うようになった。3年間は言葉の壁に苦しんだもののいまは手紙を書けるようになった。「お金では買えない宝物をいただいているようなもの。学ぶことは大切です」と語った。
文部科学省は実質的義務教育未修了者(形式卒業者)を念頭に「全県に1校以上の夜間中学設置を」の方向性を明確にしている。既存の夜間中学では在籍生徒数が減少している学校が多いものの、来春には千葉県松戸市と埼玉県川口市で新たに夜間中学が開校する。
(2018.12.05 民団新聞)