
在日韓人歴史資料館第138回土曜セミナー・深沢潮講演会「はざまで生きる」が2月7日、東京・南麻布の在日韓人歴史資料館で開催された。深沢潮さんは1966年生まれの作家。在日の家族が抱える「〝答え〟の出ない問い」に向き合う作品や、現代女性の価値観に切り込む作品などを多数発表してきた。
講演は著書『はざまのわたし』(集英社インターナショナル、25年)に沿って行われ、深沢さんは在日2世である自身の生い立ちや家族について「在日に生まれたことで常に違和感や劣等感を持って育った」と話し、「在日1世の父はパチンコ業で成功し、70年代の韓国民主化運動にも陰で参加してきたが、家庭では家族に暴力を振るうことがたびたびあった。その姿に子どもながらに大きな疑問を感じた」と振り返った。
新作『はざまのわたし』のタイトルは、キムチの好きな両親と苦手だった私から着想を得た」こと、「〝はざま〟を肯定的に捉えるようになったのは、在米や在独の韓国人、そして多様なルーツを持つ人々と知り合って、はざまを生きる人々が世界に多く存在することを知ってから」と説明し、「在日新世代の人たちには、より多様な属性を持ってほしい。韓国文化の世界的な広がりは、在日のアイデンティティーにも良い影響を与えていると思う」と強調した。
最近の排外主義の高まりについては「日本社会の排外主義はむかしからあったが、最近はタガが外れたようだ。(差別、アイデンティティーの揺らぎ、家庭内の問題などを抱える)在日の個々人に対するメンタルヘルスが重要だと最近痛感している。在日韓国民団は生活相談・法律相談などを行っているが、個人のメンタルヘルスにも取り組んでほしい」と締めくくった。
深沢さんは新作で「韓国人女性と結婚した日本人女性の物語」を構想する一方、名誉棄損裁判についても、「ヘイトスピーチや差別表現」を問うものとして進めていく。