掲載日 : [2023-01-01] 照会数 : 10031
≪元旦の話≫上 ソルナル、1500年前から楽しむ
副主幹・金一男
◆今年の旧正月は1月22日
ソル(正月)、ソルナル(元旦)は、日本でいえば「旧正月」ですが、秋夕(中秋)と並んで韓国の2大名節の一つで、韓国では公休日(祝祭日)に指定され、連休になっている。
旧暦で一年の初めであるソルナル(元旦)は、月の動きをもとにした太陰暦で決められるため、太陽の動きをもとにする太陽暦の新年(新正月)よりもほぼ1か月遅れになる。
2022年のソルナル(元旦)は2月10日だったが、23年は1月22日、24年は2月10日。この日は、月が太陽と同じ方向に一直線に並ぶ日で、月が太陽の光を反射することがなく、夜になっても地球から見ることができない「新月」となる。
◆お雑煮とお年玉と凧あげと
ソルナル(元旦)には家族や一族が集まり、チャレ(茶禮)という先祖を祭るチェサ(祭祀)を執り行い、セベ(新年のあいさつ)のあと、トック(雑煮、ぞうに)を食べて、新しい1年を始める。
それからユンノリ(双六、すごろく)やノルティギ(板飛び)、ヨンナルリギ(凧あげ)を楽しむ。子供たちの楽しみは、なんといってもお年玉。
古い慣習の残っている地域では、福を呼ぶとされるポクチョリ(米をとぐザル)が早朝に売り歩かれる。数年に一度は凶作に見舞われていた古代・中世時代、米は貴重品だった。毎日、米をといで食べられること以上の幸せはなかったとされた。
ソル(正月)という言葉の語源については諸説あるが、ナッソルダという言葉からきているという説がある。ナッソルダのナッは「顔」の意味で、ソルダは「見知らない」「見慣れない」の意味で、そこから「不慣れだ」「慣れない」などの意味に。ナッソンサラムといえば「見慣れない人」、ナッソンタンは「慣れない土地」のこと。元旦に迎える新しい未知の1年のことから、ナッソルダということで、ソル(正月)という言葉が定着したという説がある。
◆新羅時代から1500年の伝統
ソル(正月)の歴史的な由来に関しては、西暦488年、新羅でソルナル(元旦)が過ごされたという記録がある。7世紀の中国の歴史書、『隋書』と『唐書』には、新羅に関して次のような記述があり、「(新羅では)毎年、正月元旦に互いに慶賀し(祝って)、王が宴会を開き、多くの客と官吏が集まる。この日、日月神を拝礼する」
ソルナル(元旦)の慣習が、太陽や月に対する崇拝と共に、国家的行事として執り行われていたことを示している。
民俗行事には、その一つひとつに現実的な意味があり、この当時にすでに太陰暦の暦(こよみ)が導入されていたことが分かる。
暦というものは、天体の規則的な動きに人間社会の定期的な活動、特に1年間の農作業の手順をあてはめたもので、新羅時代のこのような暦に基づく歳時(年中行事)は、高麗時代、朝鮮時代へと引き継がれている。