掲載日 : [2019-08-07] 照会数 : 7586
「国籍条項」仕切り直し 「常勤講師」撤廃へ
[ 田中宏さん(一橋大学名誉教授)による基調講演 ]
公立小中高校に勤務する外国籍教員を管理職から排除する「当然の法理」をめぐり、横浜市職員採用の国籍条項撤廃をめざす連絡会(藤本俊明代表)をはじめとする全国の関係5団体が2日、現役の常勤講師とともに東京・千代田区の衆議院第2議員会館で文部科学省・外務省との話し合いを持った。各団体は昨年の国連人種差別撤廃委員会からの勧告を踏まえ、政府見解の不合理さを追求した。引き続き3日には新宿区内で情報交換会と全国集会を行った。
人種差別撤廃委員会は「数世代にわたり日本に在留する韓国・朝鮮人」に「公権力の行使または公の意思形成への参画にも携わる国家公務員として勤務することを認める」よう勧告した。これを受けて当事者側は政府見解「当然の法理」を見直すよう迫った。
神戸市立中学校の教員、韓裕治さんは「法律に明文化されていない『当然の法理』を言っているのは日本だけ」と指摘し、現行の常勤講師制度の廃止を訴えた。横浜市立高の李智子さんは「日本人と同じ試験を受け、採用された。仕事の内容も同じ。国籍差別は人種差別にあたるのではないか」と声を上げた。
これに対する文部科学省の回答はあいもかわらず「『当然の法理』は法的性格を有する。国籍の差異による合理的差別」というものだった。
交流、実践、共闘'東京で全国集会
在日韓国人問題研究所の佐藤信行さんは「私の友人は私立学校の教頭、校長まで担った。私立の校長と公立の校長で職務が違うのか」と声を荒げる場面もあった。田中宏さん(一橋大学名誉教授)も「使用者は労働者の国籍を理由に差別してはならない」とした労働基準法3条を取り上げ、「地方公務員法58条に労働基準法3条は適用される。生身の人間が差別されている深刻な事態を認識しているのか」と厳しく迫った。
文部科学省・外務省との話し合いは2016年以来これが3回目。各省庁の関係者は来年も話し合いに応じると約束した。
3日の全国集会で横浜市国籍条項撤廃をめざす連絡会の大石文雄さんが「日本全国の7、8割の自治体がいまだに地方公務員採用にあたって国籍条項を設けている。人権の虫食い状況を打破するためには地域で運動に取り組み、さらに国会議員も動かしていかなければならない」と運動団体の交流と実践、共闘を呼びかけた。
大阪から参加したある常勤講師は「なんで(話あいで)東京までやってきたのか。自分自身のためだけだったらここに来ていない。先輩の運動を引き継ぎ、今後は自分たちが運動を牽引していくためだ。大阪だけでも200人の外国籍教員がいる。ネットワーク化をめざしていきたい」と抱負を述べた。
日教組は9月開催予定の第108回定期大会で19~20年度運動方針に「外国籍の教員の処遇について差別的取り扱いを行わないよう改善に取り組む」との一文を入れる。地方公務員の国籍条項・常勤講師問題の撤廃を目指す取り組みはこれから仕切りなおしだ。
(2019.08.07 民団新聞)