掲載日 : [2017-11-29] 照会数 : 6299
日本で定期的にライブ…在日2世ミュージシャン梁邦彦さんに聞く
[ 「日本でのライブを増やし、横のつながりも広げたい」と語る梁邦彦さん ]
2018平昌冬季五輪開・閉会式の音楽監督に就任した在日韓国人2世の音楽家、作曲家、ピアニストでもある梁邦彦さんが12月24日、東京グローブ座(新宿区)で、「UTOPIA 2017 Xmas Special LIVE」を開催する。昨年12月、16年ぶりに開いた日本でのソロデビュー20周年記念ライブを機に、今年から定期的に演奏をしていくという。第18代大統領就任式祝賀公演(13年)、ソチ冬季五輪の閉会式「平昌」紹介公演(14年)などの公的行事で音楽監督を務めた。日韓を行き来しながら活動する梁さんに聞いた。
いろいろな音楽の門を開きたい
「よりいい形のものを、できるだけ多くの人に見てもらう機会を作りたい」。本格的に始まる日本でのライブを控え、思いをそう語る。
ソロ20周年ライブを決意させたのは、韓国でも一緒にライブを行う日本のミュージシャンから、「いい加減、何かやりなよ」と尻を叩く一言だ。
「『一緒にやろうぜ』って言ってくれる仲間たちがいる。それが素地としてあれば、そこに乗っかってきた人たちに伝わって、みんなが楽しくなっていくんです」
60年東京生まれ。日本医科大学在学中からプロとして音楽活動を開始。卒業後、麻酔医として1年勤務するも、音楽の道を選択した。
86年から浜田省吾のツアーに参加し、数多くのアーティストのレコーディングや楽曲提供、プロデュースなどを行ってきた。浜田省吾とはツアー中のこんなエピソードがある。移動中のバスで一緒に映画を観ていたとき、「梁は映像の音楽とか、違うジャンルでやると思うな」と言った。
「ある意味でその人の背中を押しているのかもしれませんね。僕はそれは人生のキーマンだと思うんです」
96年、アルバム「ザ・ゲイト・オブ・ドリームス」でソロデビュー。韓国では02年、釜山アジア大会のテーマ曲に「フロンティア!」が選ばれたのを契機に活動が活発する。日本では人気テレビアニメや映画、ドキュメンタリー、ゲームなどの映像音楽を手がけてきた。
韓国伝統音楽からロック、クラシック、ワールドミュージックまで、ジャンルを超えたその音楽は、固定観念にとらわれない梁さんのしなやかな感性が根底にある。それはファーストアルバムや「ノー・バウンダリー(境界はない)」のタイトルからも分かるだろう。
「いろいろな門というのは、開けてみないと分からない。ここは面白そうかなって思ったら僕は開けちゃうタイプなんです」。「伝統音楽に限らず、いい楽器、いい演奏っていうのは心地いいものですよね。だから僕はそれを規定しない。自分に引っかかるものを探すというか、それもドアかなという感じです」
父親の故郷である済州島で13年にスタートした野外イベント「済州ミュージックフェスティバル」(JMF)には、国内外のミュージシャンたちが集う。12年から3年間、音楽監督を務めたソウル・国立劇場で開かれた「ヨウ楽フェスティバル」で、演奏や曲を作るだけではない、音楽家の役割があると感じた。
JMF初年度には海女博物館の依頼で「海女の歌」を作曲、30人の海女を招待し、済州島交響楽団と初演。昨年は日本、韓国に加え、キューバの演奏家が出演。今年は元ザ・ブームの宮沢和史が「島唄」を熱唱した。
「ミュージシャンも観客も初めて済州島に来てくれて良さを分かってくれる。僕はその環境を作るということは、還元することなのかなって思うんです」
平昌冬季五輪応援アルバム
梁さんは韓日のアーティストと共に平昌冬季五輪の成功開催を応援するアルバム「エコーズ・フォー・ピョンチャン」(制作=endorf music)に参加した。日本では12月のライブ前にリリースされる。
今後の目標は「平昌冬季五輪の開・閉会式を全力で成功させること。そしてこれから日本のライブを増やしていくことです。コラボライブをやったり、いろいろな横のつながりも含めてやっていこうと思っています」
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UTOPIA 2017 Xmas Special
12月24日。17時30分開演。チケット料金7000円。出演は櫻井哲夫(ベース)、古川望(ギター)、川口千里(ドラム)ほか。チケットぴあ(0570・02・9999)〔Pコード=341‐602〕。
公演に関する問い合わせはディスクガレージ(050・5533・0888)平日12〜19時。
(2017.11.29 民団新聞)