1票差 区長交替が影響か
山田宏前区長の教育への介入により05、09年と「新しい歴史教科書をつくる会」主導で編集された扶桑社版中学歴史教科書を採択してきた東京都杉並区教育委員会が10日、帝国書院版を採択した。12年度から区立中学校23校で使用される。
採択は委員5人が合議して決めた。このうち大蔵雄之助委員長ら3人は前回、2年前の採択で扶桑社版を支持している。残り2人は「教育は教育委員会に任せる」と教育の独立性や公正性を強調してきた田中良区長が当選後の昨年8月1日に任命したメンバー。
大蔵委員長ら2人がつくる会から分かれた「教科書改善の会」編集の育鵬社版を推薦したのに対し、新しく委員に任命された2人が「賛否両論があるものを選ぶ必要があるのか」と帝国書院版を押した。最終的には井出隆安教育長が帝国書院版を支持したことで決着した。井出教育長は前回、扶桑社版に賛成しただけに、育鵬社支持派からは驚きとため息がもれた。
杉並区教委は05年、都内23区で初めてつくる会教科書を採択したことで知られる。
一方、神奈川県横浜市では市内18区すべての公立中学校が育鵬社版歴史教科書を使用することになった。市教委が4日、定例会を開き、多数決で採択した。教育委員6人が記名投票。今田忠彦委員長を含む4人が賛成した。4人はいずれも「新しい歴史教科書をつくる会」を支援していた中田宏前市長時代に任命されたひとたちだ。横浜市によれば使用生徒数は全国で最多。4年間で10万人以上に配布されるという。神奈川では藤沢市が育鵬社版を採択済み。
東京ではこのほか、都立中高一貫校と特別支援学校と大田区、大阪では東大阪市が育鵬社版を選んでいる。
(2011.8.15 民団新聞)