掲載日 : [20-09-09] 照会数 : 3306
店舗賃料の減額請求…まず「民事調停」申し立て
Q
20年ほど前から商店街の建物を借りて韓国式中華料理店を経営しています。何度か賃料値上げがありましたが、当時は商店街も活気に溢れ、店も繁盛していたため問題ありませんでした。
しかし、最近は郊外のショッピングモールに客を取られ、ここ数カ月は新型コロナウイルスの影響もあり危機的な状況を迎えています。このままではまずいと、建物オーナーに賃料の減額をお願いしてみましたが、賃貸借契約書に「契約期間中の賃料の減額はしない」との規定があることを理由に拒否されてしまいました。泣き寝入りするしかないのでしょうか。
A
諦めるのはまだ早いかもしれません。借地借家法という法律では、建物の賃貸借契約で合意した賃料の減額(又は増額)を請求するための制度が用意されています。この制度は賃貸人と賃借人との間で賃料の話し合いがまとまらなかったとき、裁判所が適正な賃料を判断してくれるものです。
したがって、たとえ契約書に「契約期間中の減額はしない」旨の規定があったとしても、賃借人は適正賃料を求めるこの制度を利用できます。
◆賃料の減額請求方法
本件では、建物オーナーは既に賃料減額の要求を拒否しているということなので、まずは、建物がある地域を管轄する簡易裁判所に「民事調停」を申し立てます。
「民事調停」とは、裁判官と2人の調停委員(不動産取引関係について専門的知識を持つ人物が選ばれます)が当事者双方の意見を聞いて、最終的に合意によって解決を図る制度で、当事者同士の話し合いに法律や不動産取引の専門家が間に入ってくれるイメージで、これで合意するケースもあります。
「民事調停」で合意が成立しなかった場合、最終手段として賃料の減額を求めて「訴訟」を提起する方法があります。「訴訟」では、当事者同士が私的鑑定評価書を証拠提出したり、裁判所が指定する不動産鑑定士の鑑定評価書を参考にして、適正な賃料額を決める判決が出されます。
◆適正な賃料とは?
ここで注意していただきたいのは、これまでに説明した制度を利用すれば必ず賃料が減額されるわけではありません。
賃料は契約当時の様々な事情を考慮した上で当事者同士が合意して決定されたものである以上、それが減額されるべきかどうかは、契約締結時の状況と比較して現在の土地、建物の公租公課、価格や経済事情が大きく変動したことや、近隣建物の賃料と比較して不相当であるといった事情のほか、賃貸借期間の長さや賃料決定の経緯などの事情を総合的に考慮した上で判断されます。したがって、今回のご相談内容は、確実に減額されるかはわかりません。
コロナ禍によって売上げが落ちたことが賃料減額に有利な事情になるかは、現時点では参考になる過去の事例もなく、弁護士らの意見も統一されていません。今後、コロナ禍が長期化し、土地、建物の公租公課、価格等に変化を生じた場合、賃料を減額すると判断すべき一といった状況になると思われます。
他方、昔と比べて商店街が寂しくなり店舗数が減ったという事情は、現在の近隣店舗の賃料相場よりあなたの店舗の賃料が高く設定されている可能性がありますので、まずは近隣の賃料を調べることをお勧めします。