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掲載日 : [21-03-03]   照会数 : 1609

突然の賃貸解約通知…「正当事由」あるかの争いに

Q

 20年ほど前から商店街の建物を借りて飲食店(韓国式中華料理)を経営しています。これまで地元密着型で常連さんに助けてもらいながら何とかやってきました。しかし、この度、建物オーナーから、「建物が古くなり取壊しをすることになったので、3カ月後に退去してほしい」と言われました。賃貸借契約書には、「契約期間中であっても賃貸人は3カ月前に申し出ることにより、いつでも賃貸借契約を解除することができる」という規定がありました。

 確かに築50年を超える建物ですが、今まで大きな不具合・破損もありませんでした。契約書に書いてある以上、諦めるしかないのでしょうか。

A

 家主からの突然の解約通知ですが、諦めるのはまだ早いかもしれません。

◆解約予告の期間
 借地借家法は、突然の解約により賃借人が大きな不利益を被ることを防止するため、賃貸人(建物オーナー)から建物の賃貸借契約を解約するには、少なくとも6カ月前に解約通知をしなければならないと規定し、これより短い予告期間を契約書で合意しても、その合意は無効になります。

◆解約の正当事由
 借地借家法は、解約予告期間のほかにも強力な対抗手段を賃借人に与えており、賃貸人から賃貸借契約を解約させるためには「正当事由」がなければならないと規定しています。

 「正当事由」の判断にあたっては、①当事者双方の事情②借家に関する従前の経過③建物の利用状況④財産上の給付をする旨の申し出‐等、様々な事情を考慮されることになっており、これまでに「正当事由」の有無について、たくさんの裁判が行われてきました。

 本件で賃貸人は、「古くなった建物を取り壊したい」と言っています。この点、一般的に建物の老朽化の程度が著しく倒壊の危険性がある場合には「正当事由」があると判断され、契約解除が認められる傾向にありますが、今までに大きな不具合・破損もなかったのであれば、老朽化の程度はそこまでには至っておらず、賃借人の建物の使用の必要性やその他の補完要素を考慮して「正当事由」の有無が判断されることになります。

 相談者の飲食店が地元密着型であり常連客が多い点を考慮すると、契約終了して店舗を移転した場合には売上げが低下すると予想されるため、建物の継続使用の必要性は高いと思われます。また、当該店舗が相談者の方のご家族の生計の手段として使用されている場合には、これも解除の「正当事由」を否定するための一事情と評価されます。

◆立ち退き料
 建物の老朽化がひどくなく、賃借人の建物使用の必要性が高い場合でも、どうしても契約を解除して建物を明け渡してほしいと考える賃貸人は、正当事由を補完するため、一定金額の財産上の給付を申し出てくる場合が多いです。これがいわゆる「立退料」と呼ばれるものです。

 立退料の金額は、個別事案によって大きく異なりますが、一般的には、①移転費用の補償②営業補償③利用権自体の補償‐という点を考慮して決定されます。居住用途より事業用途のほうが、②の「営業補償」の点で立退料の金額が高額になることが多いです。

 本件でも、立退料の金額が大きな争点になってくる可能性が高いと思われますので、賃貸人から立退料が提示されてきた場合には、その金額が補償として十分か否かを検討して交渉することをお勧めいたします。
弁護士 李 将
 

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