掲載日 : [23-02-17] 照会数 : 3881
亡き父の遺言 内容知りたい…家裁または公証役場、法務局へ
Q
先日、父が亡くなりました。父は生前、遺言を作成していたようであり、兄もそのことを知っているようなのですが、兄に尋ねても、父の遺言の有無や内容について答えてくれません。どうしたら、亡くなった父の遺言の有無や内容を知ることができるでしょうか。
A
遺言の有無や内容を知る方法は、お父様の遺言がどのような方式で作成されたかやどこで保管されているかによって異なります。
1 自筆証書遺言の場合
もし、お父様が自筆証書遺言(手書きの遺言)を作成していた場合は、原則として、遺言の保管者が、相続の開始(お父様が亡くなったこと)を知った後、遅滞なく家庭裁判所に遺言書を提出して、「検認」という手続(遺言書の内容を確認する手続)を請求しなければならないとされています。自筆証書に基づいて不動産や預貯金の名義変更をするためには、遺言書の検認が必要なので、多くの場合、検認の請求がされます。
お兄さんがお父様の自筆証書遺言を保管していれば、お兄さんが家庭裁判所に検認を申し立てることになります。お兄さんから検認の申立てがあれば、家庭裁判所はお父様の相続人に検認期日(検認を行う日)の通知をしますので、あなたの所にも通知が来るはずです。そして、検認期日に裁判官がお父様の遺言書を検認する際にあなたも立ち会うことができ、その時に遺言の内容を確認できます。
また、検認期日に出席しなくても、検認期日終了後に家庭裁判所に連絡をして、「遺言書検認調書謄本」を取り寄せれば、遺言書のコピーが手に入ります。具体的な手続は、検認を行った家庭裁判所にお尋ねください。
2 公正証書遺言の場合
もし、お父様が公正証書遺言を作成している可能性があれば、お父様の公正証書遺言の有無と、どこの公正役場に遺言が保管されているかを調べることができます。日本公証人連合会は、平成元年以降に全国の公証役場で作成された遺言公正証書に関するデータを一元的に管理しています(「遺言検索システム」)。
お父様の相続人であるあなたは、公証役場で遺言検索の請求ができます。遺言検索は、全国どこの公証役場でも請求できます。具体的な手続は、あなたが遺言検索の請求をする公証役場にお尋ねください。
遺言検索で、お父様の公正証書遺言があることと遺言を保管している公証役場が分かれば、その公証役場に連絡をして「遺言公正証書謄本」を取り寄せれば、公正証書遺言の謄本が手に入ります。具体的な手続は、遺言を保管している公証役場にお尋ねください。
3 法務局で保管された自筆証書遺言の場合
2020年7月から、法務局で自筆証書遺言を保管する制度が始まりました。法務局保管の自筆証書遺言については、家庭裁判所の検認の手続は不要ですので、相続が開始しても、あなたの所に家庭裁判所から検認期日の通知が来ることはありません。
しかし、あなたから法務局に請求すれば、お父様の遺言が法務局に保管されているか否かを確認することができます。遺言が法務局に保管されていることが分かれば、法務局に請求して、遺言書の内容が記載された「遺言書情報証明書」の交付を求めることができますし、遺言書を閲覧することもできます。また、あなたから法務局に請求しなくても、あなた以外の相続人が法務局に「遺言書情報証明書」の交付を求めたり遺言書の閲覧をしたりした場合、法務局はお父様の遺言書を保管していることを他の相続人にも通知することになっていますので、あなたの所にも通知が来るはずです。
4 遺言執行者からの連絡
お父様が遺言で遺言執行者を指定していた場合、遺言執行者からお父様の相続人であるあなたの所に連絡が入る可能性があります。遺言執行者は、相続人の請求があるときは、遺言執行の処理の状況を報告しなければならないとされていますので、あなたから遺言執行者に遺言の内容を尋ねたり、遺言書のコピーを求めたりして、遺言の内容が分かることも考えられます。
5 最後に
遺言は、最新の日付のものが有効となります。たとえ、公正証書遺言や、法務局保管の自筆証書遺言があっても、それと内容が矛盾する新しい日付の自筆証書遺言があれば、公正証書遺言や法務局保管の自筆証書遺言が無効になり、最新の日付の自筆証書遺言が有効になるので、注意が必要です。
弁護士 金喜朝