掲載日 : [2023-03-22] 照会数 : 3095
在日の歴史性深彫り 金聖雄監督 「アリラン ラプソディ」
【神奈川】川崎市南部の同胞集住地、川崎区桜本で支えあいながら生きる在日高齢者交流クラブ「トラヂの会」の日常を追ったドキュメンタリー映画「アリラン ラプソディ~海を越えたハルモニたち」(仮題、金聖雄監督)が3月末にクランクアップする。2004年公開の映画「花はんめ」の続編。愉快でチャーミングなハルモニたちの横顔に加えて在日に至った歴史的背景に深く切り込んだ。
川崎 桜本 ハルモニたちの生きざま
「花はんめ」続編完成へ
映画のプロローグを飾る玄界灘のさざ波が象徴的だ。ハルモニたちが命がけで海を越えてきたことを物語る。金監督は「歴的背景をすっとばしてヘイトがまかり通っている。そこを埋めなければならない」と制作の動機を語る。
金監督が桜本でヘイトデモに遭遇したのは「花はんめ」公開から1年が過ぎた15年。ハルモニたちが同年9月、桜本商店街800㍍で行った「戦争反対デモ」への意趣返しだった。金監督はハルモニたちの生き様を踏みにじることに「はらわたが煮えくり返るかのような怒り」を覚えたという。
21年にプロジェクト「さくらもと」を立ち上げ、広く一般から制作資金の一部を募ったところ、1年で約800万円が寄せられた。
作品には金監督が助監督を務めた映画「在日」で使った実写史料もふんだんに使用した。前作「花はんめ」が愉快でチャーミングなハルモニたちの「夢」や「希望」を映し出したのに対し、新作は重厚な趣き。立場は違えども、同じ戦争体験者として沖縄での住民交流も収めた。
一方、激動の時代をたくましく生き抜き、いま川崎の地でようやく「豊かな老い」を迎えつつある一人ひとりのかけがえのない人生にフォーカスした人間賛歌でもある。これがタイトルを「アリラン ラプソディ」としたゆえんだ。
完成すれば、先ず川崎のハルモニたちに観てもらい、5月に支援者を対象とした試写会を行うことにしている。全国での一般公開は早くても夏以降になりそうだ。
金監督は大阪生まれ。川崎には姉が住んでおり、半年ばかり居候していた。これが「トラヂの会」との初めての出会いとなった。金監督は「圧倒された。このパワーはなんだ」とのめりこみ、映画「花はんめ」につながった。いまではすっかり「ハルモニファン」を自称する。
プロジェクト「さくらもと」では引き続き「ヘイト 川崎の民族差別の闘い」の制作も予定している。支援は最低1000円から。郵便振替口座00130‐8‐586793 Kimoon Film合同会社。042・316・5567。
(2023.3.22民団新聞)