掲載日 : [2022-01-01] 照会数 : 7495
韓日そして世界へはばたく「在日」次世代(ちゃんへんさん)
多様化が進む在日同胞次世代たち。グローバル時代と言われる今、日本や韓国をはじめ、世界の舞台で活躍する3世、4世たちも少なくない。在日韓国人としての自覚を持ちながら各界で活躍している次世代に「在日」としての生き方などを聞いた。(インタビュー形式)
多様な部分の活用を…悩み乗り越え自己肯定力
世界的パフォーマー ちゃんへんさん
◆在日として意識した時期とそのきっかけは。
「在日韓国人」と明確に認識したわけではないですが、小学3年生の時、クラスメートから「毎日キムチ食ってんのけ」という質問に対して、隣の席の子が「そんなん聞いたら可哀想やんか」というセリフを聞いて、自分は何か他の人と違うのかなと思い始めました。
◆パフォーマーを目指すきっかけは。
元々、小学6年生の時に大ブームになったハイパーヨーヨーの大会で優勝し、ブームが去り始めた頃に、たまたまジャグリングと出会って、ジャグリングの技を次々と習得していくうちに大会に出場し、そこで優勝しました。その後、仕事の依頼を頂いた延長で現在に至ったわけです。
◆パフォーマーとして、最も楽しかったこと、またつらかったことは。
楽しかったことは世界の色々な国や地域に実際に行って、現地の人に楽しんで頂けることですが、貧困や紛争などの問題を抱える地に行くと、その瞬間は楽しんでいても、その地の問題自体は解決できないから辛いです。
◆「ちゃんへん」というハングル読みの名前を使うきっかけは。
平仮名で「ちゃんへん」だと、名前と思われずに「どういう意味ですか」と聞かれることがほとんどで、カテゴライズされにくいことが心地良くて、平仮名で活動しています。
◆幼少期から現在まで、在日の同世代たちのつながりはどのように築いてきたか。
高校生まで同世代の在日との繋がりや交流は特になかったのですが、高校2年生の時に大道芸ワールドカップに出場したことがきっかけで、在日であることも一部で公表していたため、そこから民族学校などの行事にお呼ばれすることがあり、そこから同胞学生たちとのつながりができました。
◆在日とのこれからのつながり方について。
私自身、在日同胞社会はやはり、特別なつながりがあると思っており、韓半島の歴史背景はもちろん、日本社会における1世、2世たちの苦労が今につながっていると共感を持っています。
そのような絆という意味では、深く関われる半面、これからの若い世代にどのように祖先たちの思いを伝え、共有できるのかは課題だと思っています。
それによって私が伝えることができる手段で行動するのみですし、他の方々もそうであってほしいと思います。
◆多様な文化を持つ在日3世として今後の生き方は。
グローバル社会が進む一方で、在日同胞は真の意味で一人ひとりが多様な部分を最大限に活用できているのだろうかと日々考えることが多いです。
今後の生き方としては、韓日はもちろんのこと、在日だからこそ、その他の国々や地域との懸け橋になれるような存在をめざしたいと思います。今一度、自分たち一人ひとりの長所に向き合って今後の人生を切り拓きたいと思います。
◆在日の後輩たちに伝えたいことは。
在日であるが故に、いいこともあれば、露骨に辛い思いをすることもあるかと思います。ただ、その時に在日だからということで悲観的になるのではなく、在日であるからこそ自分にできることは何だろうかとか、在日というカテゴリーをこえて、自分自身がどこまで自分の限界値に近づけるだろうかとか、そういった向上心を持って胸を張って生きていってほしいです。
僕は在日であるが故に名前や国籍で本当に悩み苦しんだ時期がありますが、今はそれらを乗り越えて、自己肯定力をつけて何事も前向きに生きることができています。
人間は皆、大なり小なりコンプレックスなどを抱えていると思いますが、頑張っていれば、そのコンプレックスこそが大きな武器になることだってあります。とにかく自分が心からやってみたいものに出会ったら、とりあえず夢中になって頑張ってほしいです。
ちゃんへん
本名は金昌幸。1985年、京都府宇治市生まれの在日3世。
小学6年生の時に月刊コロコロコミックの懸賞で当たったハイパーヨーヨーがきっかけでヨーヨーを始め、その延長で中学2年生の時にジャグリングと出会い、腕を磨く。日々の練習を積み重ね、半年後には地域のイベントに出演するようになり、地元では名物少年になった。
行きつけのおもちゃ屋の店長の勧めもあって、2000年、サンフランシスコで開催された『USフリースタイル・コンテスト』に出場し、弱冠14歳で優勝。
『大道芸ワールドカップin静岡2002』では出場者中、最年少17歳ながら人気投票1位を獲得し、世界に名を知らしめ、プロパフォーマーとしてのキャリアを華々しくスタートさせる。
高校卒業後、国内をはじめ海外での活動も精力的に行い、これまでに世界82の国と地域でパフォーマンスを行った。マイケル・ジャクソンの前でもパフォーマンスを披露した。
2009年、東京ディズニーリゾートと大阪ユニバーサルシティの公認パフォーマーとなり、2010年には、メルボルンで開催された『第50回ムーンバ・フェスティバル』にてアジア人初となる最優秀パフォーマー賞を受賞。
現在、国内外のイベント出演はもちろん、学校行事における文化祭や芸術鑑賞会、講演会などで幅広く活躍中。