掲載日 : [2022-01-01] 照会数 : 8693
韓日そして世界へはばたく「在日」次世代(ミスコリア在日1位 金美悠さん)
多様化が進む在日同胞次世代たち。グローバル時代と言われる今、日本や韓国をはじめ、世界の舞台で活躍する3世、4世たちも少なくない。在日韓国人としての自覚を持ちながら各界で活躍している次世代に「在日」としての生き方などを聞いた。(インタビュー形式)
在外国民の存在発信…母国留学で自立の道探る
金美悠さん ミスコリア在日1位
◆ミスコリアに応募したきっかけは。
2020年はコロナ禍で大変な1年でした。その1年を取り戻すために2021年はできる限り新しいことに「チャレンジ」する年にしようと決めていました。
幼い頃から踊ったり歌ったり、おめかししたりする事が好きで、韓国の童謡「テレビに私が出たら」のようにテレビに出る芸能人に憧れていました。韓国舞踊、ヒップホップ、チアリーディング、ジャズダンス、ピアノ、弾き語りなどを習っていたこともあり、人前に立つ事が好きでした。そんな学生時代を思い出しながら、20代の思い出になれば良いなという思いで挑戦しました。
◆本選出場で本国をはじめ海外同胞との交流で再発見したものは。
本選では海外同胞との交流はありませんでしたが、本国の同世代との交流をする事ができとても世界が広がりました。今まで在日4世として暮らし、私の周りには在日韓国人や海外同胞、海外で過ごした経験がある人が多く、本国の同世代と交流する機会が多くありませんでした。
本国の熾烈な競争社会で暮らしてきた同世代の価値観、生活などを聞き、私とは興味を持っている分野が異なる芸能人やアナウンサーを夢見る人たちと話すことによって、今まで知らなかった世界を知る事ができました。
◆在日としての意識を持つようになったきっかけは。
日本で生まれ育ち、韓国人として生きていくようにサポートしてくれた両親の影響が一番大きいです。
韓国人としての誇りを持って生きてほしいという両親の思いのもと、東京韓国学校初等部に入学しました。最初は全く韓国語を知らない状態だったので、何が何だか分からず授業時間は消しゴムに鉛筆を刺して筆箱で釘を打つように叩いて遊んでいました。
ある程度、韓国語をマスターしてからも発音が良くないと友だちに揶揄されることも多かったっため、高校生になってから発音をよくするために、韓国生まれの友だちと仲良くするなど努力しました。
今では日本から来たと言わなければ、在日だと思われることは無くなりました。
◆母国留学をすすめてくれた両親たちへの想いは。
幼い頃から日本語、韓国語、英語を学校で習い、言語を学ぶ楽しさを知りました。最初は高校にも行きたくないというほど勉強が嫌いでしたが、韓国の大学と大学院に通うことになるほど、学ぶ楽しみを知る事ができ、とても嬉しく思います。良い環境で育ててくれた両親のおかげで自立することができ、自分の道を探す事ができました。
◆ミスコリア日本代表「真」に選ばれた時は。
思いもしない結果だったので本当に驚きました。
幼い頃にモデルオーディションに応募したことがあったのですが、書類合格もできなかったので、幼い頃の夢が叶った気分でした。何事も挑戦あるのみだと思いました。
また、今まで在日韓国人として誇りを持って生きてきたので、その姿を認めてもらえたようで嬉しかったです。
◆選ばれたことで自分の中で何か変化がありましたか。
チャレンジすることに意義を持って参加しましたが、実際に日本代表1位に選ばれ、成果を出せたという達成感から自分に自信を持てるようになりました。
また、40人の本選出場者たちとふれあったことで、世界が広まり、今までよく知らなかった分野に関しても興味を持つきっかけになりました。
◆言語や考え方、態度など心がけているものは。
一つのことに囚われず柔軟な思考を持ち、何事も経験だと思い挑戦しようと心がけています。
日本、韓国、豪州と今まで様々な国での経験があり、各国の文化・言語を習い、接してきたことによって柔軟に対応する力を培ってきたと思っています。
◆日韓両国での職場経験を選んだ理由は。
日本には、生まれて高校を卒業するまでと、大学院を卒業してから3年の計20年、韓国には大学と大学院で6年暮らしていました。成人してからは、ほぼ韓国で過ごしていたので、少し休みたいなという気持ちと家族と暮らしたいという気持ちから日本で就職しました。
また「韓国で必ず働いてみたい」と常に思っていました。韓国企業は残業も多く、とても大変とは聞いていましたが、百聞は一見に如かず、転職を決めました。今後は日本と韓国のみならず、海外でも経験を積みたいと思っています。
◆今の仕事についた経緯は。
ミスコリア本選後、韓国に残り、現在はUXローカリゼーションという仕事をしています。これは、単純に翻訳するのではなく、その国に合わせたスタイルにする業務で、グローバルにサービスを提供するにおいて欠かせない仕事です。
コロナの影響で長期間に及ぶ在宅勤務により、何か新しい刺激を求めている中、最も多くの時間を占めている「仕事」を変えるという選択をしました。
◆今後、目指すものや新たに挑戦したいことは。
在日韓国人として日本では外国人として扱われ、韓国でも留学した当時は住民登録番号もなく「外国人」居所証のみで、国籍が韓国であるにもかかわらず自国民と認めてもらえない状況にもどかしさを感じていました。
本選でも在日韓国人という存在をアピールしていたため、それによってより多くの人が「在日韓国人」を知る機会になったのではないかと思います。ミスコリア日本代表「真」として、これからも在外国民がより暮らしやすく、自国民と認めてもらえるように多方面に発信していきたいと思います。
また、チャレンジ精神が旺盛なのでこれからも色々な経験をしていきたいと思います。
韓国や日本以外の国で暮らしてみたいという気持ちもありますし、モデルのお仕事も少しいただいて活動しているので、いろんな分野で活躍していこうと思います。
◆韓国に留学中の後輩たちに伝えたいことは。
オンライン授業が大半で友だちを作る機会や韓国語を上達させる手段が減っていると思いますが、自分なりの工夫が大事だと思います。
私も自分に向いている道を探すための模索をしたように、何事も努力すれば成し遂げることができると信じています。
母国留学中の皆さんもオンラインならではのコミュニケーション方法やソーシャルディスタンスを保った楽しみ方を模索してみてはどうでしょうか。
金美悠(キム・ミユ)。
1995年、東京生まれの在日4世。
東京韓国学校初・中・高等部を経て、韓国と豪州に短期留学後、梨花女子大学でフランス語とフランス文学を学び、同大学院では専攻を韓日通訳学科に変えて卒業。
東京でIT企業に就職し、昨年の8月までは韓日通訳士として働く。
8月3日の「2021ミスコリア日本代表選抜大会」で1位となる「真」に選ばれ、11月に行われたミスコリア本選に出場するため10月から韓国入り。
その後、韓国でUXローカリゼーション(グローバルな商品を、各国の文化や習慣になじませ、現地の多くのユーザーに商品を広めていく戦略の事業)という仕事に就く。
(2022.01.01 民団新聞)