日本でカラオケが普及したのは70年代半ば。それ以前、ギターやピアノ、バンドなどが「酒場の音楽」の主役を果たしていた。彼らに代わって登場したカラオケは瞬く間にブームを呼んだ。「カラオケスナック」の呼び名が広がったのもこの時代だ。
このカラオケで韓国のある名曲が大ヒットした。82年頃のことだ。「トラワヨ釜山港(釜山港へ帰れ)」。その火付け役を担ったのは、4オクターブの声量でロックからバラード、トロット、民謡まで様々なジャンルで魅了する「国民歌手」趙容弼(チョー・ヨンピル)だ。「永遠のオッパ」の愛称もある。
「歌王」のニックネームを持つ彼を慕い、尊敬するK‐POPスターも多い。日本ならば、桑田佳祐に井上陽水を足した感じか?
彼が歌った「釜山港へ帰れ」は、それ以前から存在していた演歌調をロック調のリズムでアレンジし、新たな魅力を加えた。ノリの良さが日本でも受け入れられた。韓国では約60人、日本でも数多くの歌手がカバーした。
「韓流」と言われる今でこそ、どのカラオケ店でもK‐POPが豊富に揃っている。趙容弼はカラオケで韓国歌謡を普及させたパイオニアと言っても良い。
この「歌王」が10年ぶりにアルバムを発表。25万枚を超える大ヒット。来月、東京で15年ぶりの日本ライブを開く。
82年、日本デビューした当時、ファンたちの中心は「団塊世代」。現在、還暦過ぎの世代たちだ。15年ぶりの日本公演は、カラオケの変遷とともに生きてきた、この世代たちを再び「永遠のオッパ」として魅了するのだろうか?
なんとなく、「釜山港へ帰れ」が歌いたくなってきた。(Z)
(2013.9.25 民団新聞)