掲載日 : [2021-03-30] 照会数 : 6253
JDもーちぃの新大久保ナビ⑥(終)「観光客と近隣住民」利害が食い違って
[ 新大久保のあちこちで見られるポイ捨て食べこぼしお断りの貼り紙 ]

「もーちぃ聞いて、新大久保で遊んでたら水かけられた!」友人は怒った様子で私に言った。新大久保では、近隣住民と観光客、お店の間でのトラブルが起きている。新大久保は観光地と思われがちだが、実は人の住む家も多く、近くに小学校や幼稚園もある「生活がある街」だ。
そんな新大久保はご存じの通り、ここ数年で若者に大人気のエンタメスポットとなった。買い物や食べ歩き、ライブ、美容などさまざまな目的を持った人が押し寄せる。
中でもコロナ前に盛り上がりを見せていたのは食べ歩きグルメだ。伸びるチーズが動画映えすると人気になったチーズハットクや、タピオカドリンク、オレオチュロスなどを売るお店にはイートインスペースがないことが多く、路上で立ち止まったり歩きながら食べる人が多い。
しかし、人通りが激しい新大久保では立ち止まって食べるスペースはなく、観光客が建物の出入り口を妨げてしまったり、私有地に入ってしまうことが多発する。
また、道路にゴミ箱が設置がされていないことからポイ捨てをする人も多く、グルメを販売するお店には毎日のように近隣住民からクレームが届く。お店がポイ捨て対策として店先にゴミ箱を設置しても、観光客は落ち着いて食べられる場所まで歩いて移動するため、あまり効果は見られない。
実際、自動販売機の横に置かれている資源回収ボックスから、食べ残しや串などのゴミが溢れかえっている光景を何度も目にした。お店側に話を聞くと、「やはりできる対策には限りがある、やれることはやっているつもり」だと言う。しかし、住民の不満は収まらない。
若者が集まり、食べ歩きをして、写真や動画を撮影すると、どうしても騒がしくなってしまう。私が家にいても常にBGMのように女の子たちの白熱するアイドルトークや、お酒に酔った男女の大きな笑い声が聞こえてくる。私はもう慣れてしまったが、ストレスに感じる住民は多い。
大久保通りに近い家や路地の建物をよく見ると「観光客立ち入り禁止!」や「騒音迷惑」「ポイ捨て禁止」という貼り紙をたくさん目にする。中には、食べ歩きグルメとして人気のチーズハットク、タピオカドリンク、トゥンカロンなどの画像に大きく赤いバツを描いた貼り紙もある。製作者の怒りが伝わってくる。
しかし、その前に立って飲み食いする観光客がいるのも確かだ。気にしていないわけでは無いだろうが、ほかに行って食べる場所もないからしかなくここで食べているようにも感じる。こういった観光客の行動は、近隣住民の怒りの火に油を注ぎ、バケツやホースで水を撒くなどの行動を起こさせた。
新大久保では、観光客にも、近隣住民にも気持ちの良いコミュニケーションとは程遠い状況が続いている。この状況を打破するため、西大久保公園では座ってご飯を食べることができるオープンスペースを設置したり、ゴミ拾いをする活動も行われている。
コロナ禍においても、平日、休日問わず多くの人で賑わう新大久保。この街に住み、情報発信をする者として人を呼び込み盛り上げるだけではなく、部分的な沈静が必要だと考えて行動する日々だが、新大久保の繁栄を誰もが喜べる日が来ることを心から願っている。(おわり)
(2021.03.31 民団新聞)