掲載日 : [2023-06-07] 照会数 : 1150
民団脅迫 実質ヘイト認定「偏見にまみれ、独善的」徳島地裁 懲役10月(執行 猶予)判決
[ 判決後記者会見する(左から)民団人権擁護委の薛幸夫副委員長、李根茁委員長、姜盛文徳島本部団長、殷勇基弁護士 ]
【徳島】民団徳島本部(姜盛文団長、小松島市)に銃撃をほのめかす脅迫文を送りつけたとして脅迫罪に問われた徳島市の大学生、岩佐法晃被告(40)に対し、徳島地裁は5月31日、懲役10月、保護観察付き執行猶予4年の判決を言い渡した。判決には論告で使われた「ヘイトクライム(憎悪犯罪)」の言葉こそ見あたらなかったものの、「偏見にまみれ、独善的」との指摘は事実上のヘイト認定と受け止められている。
罰則付きの法整備急げ
細包寛敏裁判官は岩佐被告が昨年9月、「反日政策ヲ続ケル様デアレバ、次ハ実弾ニ寄ル消化ニヨッテ浄化スル」と記載した文書在中の封筒1通を同本部に投函した行為について、「韓国、韓国人及び民団に対する偏見にまみれたものであるだけでなく、自らと異なる思想信条を持つ者に恐怖を与えて排除しようとする極めて独善的かつ身勝手なもの」と断罪した。
脅迫文の投函の前に民団会館に向かって火薬銃で畏怖させようとしたことも指摘し、「殺意も極めて強固」と認定した。 特に、脅迫文に使った「民族赤報隊」は朝日新聞阪神支局を銃撃したり愛知韓国人会館を放火した「赤報隊」を思わせ、「在日韓国人を銃撃で殺害すると容易に理解させる苛烈なもので、被害者に強い恐れと不安を与えた」と指摘した。
岩佐被告は公判で起訴内容を認め、「韓国人のアイデンティティーを変革させなければならないと思った」などと述べていた。検察側は論告で「差別的感情に基づくヘイトクライム(憎悪犯罪)」だと指摘し、厳罰を求めていた。これはヘイトクライムを直接規制する法律がない日本では極めて異例だった。
岩佐被告が一定の反省の態度を示しているのにもかかわらず、執行猶予を異例の4年とし、かつ保護観察をつけたのも、事件への厳しい判断があったものとみられている。
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裁判後の記者会見で殷勇基弁護士(在日韓国人法曹フォーラム会長)は「被告にとって民団だったら誰でもよかった。これは人種差別的犯罪といえる。ヘイトクライムという言葉こそ使わなかったが、『出自や所属のみによって標的』という表現でヘイトクライムだというメッセージを伝えようとしてくれた」と評価した。
一方、日本を除く先進6カ国ではヘイトクライムを直接規制する法が整備されていることを指摘しながら、「5年、10年後にはヘイトクライムが普通に国内法で規制できる日本であってほしい」と注文をつけた。
姜団長は「私の言いたいことをしっかり伝えてくれた」と判決に感謝の言葉を口にしながら「同種の犯罪を防ぐための抑止力、予防注射になってほしい」と希望した。
また、民団中央本部人権擁護委員会の李根茁委員長は、「第2、第3の類似事件を未然に防ぐためにも、ヘイトスピーチやヘイトクライムに罰則を与える法律を整備していかなければならない」と呼びかけた。
(2023.6.7民団新聞)