「5大事業」に全力尽くす
中央団長 呂 健 二
第一に組織基盤強化
差別根絶、韓日友好も
2022年壬寅(みずのえ・とら)年を迎え、全国の同胞の皆様、民団を支えておられる韓国及び日本の皆様に心より新春のお慶びを申し上げます。
새해 복 많이 받으십시오.
2023年癸卯年を迎え、全国の同胞の皆様、民団を支えておられる韓国及び日本の皆様に謹んで新春のお慶びを申し上げます。
本年が皆様にとって平和と希望に充ちた良い年でありますよう心より祈念申し上げます。
今年は新型コロナウイルス感染症がパンデミックを起こして4年目を迎えます。世界で6億5千万人が感染し670万人以上が亡くなっています。原因は何でしょうか。「人類が自然を無視し、地球を共有すべき動物たちを軽視した結果」だと言われています。
自然破壊と気候変動により、行き場を失った未知のウイルスが人間に感染したのです。未知のウイルスは変異を繰り返して、人間の社会活動や経済活動、自由を制約し、長期化しています。民団では第3回目となるコロナワクチン職域接種を実施しましたが、コロナ感染対策とともに、よりよいワクチンを接種し「ウイルスとともに生きる」知恵が求められています。
混迷の世界
昨年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略戦争は長期化し、様々な歪みを露呈させています。700万近いウクライナの子どもたちが厳しい寒さを迎え、身心の健康が脅かされています。民団もウクライナ子ども支援募金を始め、日本ユニセフ協会に寄付しました。
戦争の長期化によって食糧難やエネルギー難が押し寄せ、物価の高騰を招き、生活困難に陥る人々が増えています。このような経済的危機とともに、民主主義と専制主義の対決構図は世界の分断と混迷を深め、全世界の人々の生活を圧迫している状況です。
複合的危機はこれに収まらず、山火事、洪水、干ばつなどの異常気象による自然災害の危機。北韓や台湾を巡る軍事衝突の危機。世界の人口が80億を超えて、一人の人間、一つの国家が負うことのできないほど複雑化した危機に直面しています。
民団もまた、今、大きな変化に直面していて、みな、そのことに気づきはじめています。このような危機の時ほど、人はフェイク(嘘)ニュースやヘイトスピーチ、ポピュリズムや陰謀論に騙されやすくなるものです。意図的に混乱を起こし、偏見と嘘と誹謗中傷をもって相手を貶める言動は、あってはならないことです。
私たちは、社会的な課題を解決しながら、民団の価値をあげていかなければなりません。あらゆる混乱と困難を排し、民団に与えられた政策、五大事業を、果敢に着実に進めて参ります。
まず、組織基盤強化事業です。この24年間で約20万人の在日韓国人が減り、現在41万人です。これは主に1,2世の死亡と日本国籍の取得による減少です。2021年に生まれた子どもは僅かに660人で、最少の数です。また65歳以上の高齢者は約12万人で、全体の29%を占めています。
今、在日同胞社会は超少子高齢化社会を迎えています。団員の減少により、過疎の地方・支部の運営が厳しくなっています。内紛にかまけている時ではなく、大同団結して「同胞家庭訪問」をし、一人でも多くの同胞を導き入れることです。日本の各地で災害が起こっています。日本国籍同胞を含めた連絡網(ネットワーク)を作り、団員の拡充、人材の発掘に注力しましょう。
本団と団員をつなぐスマートフォンアプリ「KJ.app」を開発し、この春から運営します。これによって、団員だけではなく、本団との接点がない同胞(日本国籍同胞、新定住者)と連携し、必要とする情報提供や便宜をはかり、新規団員の獲得につなげていきます。
また各種ワークショップ、セミナー、リーダー育成スクールを通じて組織の基盤強化に努めます。
オリニ事業促進
二つ目は、次世代育成事業です。次世代の育成なくして民団の将来はありません。次の世代のための環境づくりと「場」を提供していきます。「オリニジャンボリー」は昨年一昨年とコロナ禍のため中止となりましたが、指導者対象の「オリニ事業促進セミナー」を地域ごとに実施し、オリニ土曜学校やサマースクール、クリスマス会の「場」づくりにつなげていきます。各地域で「オリニ会」をつくり各種親睦・地域共同事業をやっていきます。また好評の中高生対象の「韓国探訪文化スクール」や大学生対象の「ライジングスターセミナー」を継続して実施します。教育において「金を残すのは下、仕事を残すのは中、人を残すのは上」と言います。人材の育成に最大限の力を注いでいきます。
相談センター拡充
三つ目は、同胞の生活と権益事業です。「みんだん生活相談センター」は中央と地方センター19カ所で活動しています。昨年は3年ぶりに本国セミナーを開催しました。今年も継続して実施します。また、この間の運動が功を奏して、自治体や公館からの紹介で相談を受ける事例も増えています。今年は地方センターを3カ所増やし、相談の充実化と拡張に努めて参ります。
ヘイトスピーチの根絶や地方参政権の獲得については、昨年ジュネーブの「国連・自由権規約委員会」に当事者としてレポートを提出し派遣要望活動を行いました。とくにヘイトスピーチ、ヘイトクライムの根絶について、罰則のある包括的な差別禁止法の必要性が強調され、また地方参政権においては「永住コリアンとその子孫に地方選挙での投票権を認めるよう関連法の改正を検討すべきである」とする画期的な勧告を出しています。
国連への活動成果
本団は、昨年まで4回目となる国連への要望活動を今年の活動につなげていきたいと思います。地域に長く住む住民として、納税など応分の貢献をし生活している私たちに、地方自治体の選挙権は必要不可欠な人権であります。
四つ目は、韓日友好事業です。私は昨年、日韓両政府、日韓・韓日議連、日韓・韓日親善協会を通じて、韓日友好の大切さを訴えてきました。その一つの結実が昨年11月の韓日首脳会談です。懸案問題の解決をはかり、意思の疎通を継続していくことで一致しました。韓日両国は「力を合わせていかなければならない隣人」です。今必要なのは、大局を見据えた関係づくりであり、私は1998年の「日韓パートナーシップ共同宣言」の更なる発展をめざして民間レベルで両国の友好親善活動に尽力していきたいと思っています。
五つ目は、祖国の平和統一事業です。憲法第4条には「大韓民国は統一を指向し、自由民主主義的基本秩序に立脚した平和的統一政策を樹立しこれを推進する」とあります。これまで民団は、日本の地で自由民主主義の韓国を守り、祖国の平和統一のために寄与して参りました。
北送の検証さらに
北韓は昨年9月「核武力政策法」を制定し、「体制維持のため、核は絶対に放棄できない」と述べ、先制攻撃も辞さない構えであります。従前よりも差し迫った脅威に対し、断固核開発の中断と核の廃絶を訴えます。韓半島の非核化と平和構築は私たちの悲願であります。また北送された同胞(9万3,339人、うち6679人の日本人妻子)の生死確認、家族の安否、自由往来、責任の所在は、私たちにとって忘れてはならない人権問題です。この「歴史検証シンポジウム」を今年も継続していきます。
私たちは「互いに欺かず争わず、真実をもって交わる」誠信交隣の心を五大事業の心としています。必要な改革に各自が踏み込まなければなりません。本団は在日同胞社会の代表団体であります。同胞の生活と権益を守り、多文化共生社会を実現することが責務です。時代に相応した民団に変革し、同胞社会、韓日関係を良くしていくことが私たちに与えられた社会的役割であります。コロナ禍とウクライナ事態を克服し、ともに力を合わせて本年を民団の融和を育む年にしましょう。
新しい年がすべての皆様にとりまして、幸多い年となりますよう祈念申し上げ、私の新年のご挨拶とします。
(2023.1.1民団新聞)