掲載日 : [2023-02-15] 照会数 : 1645
【第77回定期中央委員会】2022年度総括報告Ⅱ主要報告②
同胞の生活と権益擁護
6月23日に中央会館内の東京本部の事務所に若い男性から、「爆弾を仕掛けた」という電話があり、その後、会館に隣接する高速道路から不審物が投げ込まれたため(殺虫剤のスプレー缶と判明)、警察へ通報しました。
中央本部では全職員と東京本部事務局長らが集まり、経過確認と今後の対策会議を持ちました。監視カメラの増設と会館の非常階段に安全対策ネットを設置するなどで対応することとし、全国の地方本部、中央傘下団体へ「民団会館及び事務所の防犯対策に関する注意喚起」の緊急業務連絡を発信しました。
また9月14日には徳島地方本部に脅迫文と見られる封書が投函されました。これらは在日韓国人組織を狙った偏見に基づく悪質なヘイトクライムであり、民主主義社会において到底許すことのできない犯罪行為であります。
ヘイトスピーチ・ヘイトクライム根絶
ヘイトスピーチは韓日関係の悪化により起こりました。韓日間の不用意な政治的発言や軽率な歴史認識の発言によって、身近な在日同胞が標的になり被害にあってきました。同胞の生存権を脅かし、民族的偏見と差別を煽るヘイトは何としても根絶させなければなりません。
ヘイトスピーチ解消へ愛知県でも条例採択
愛知県本部の努力が実り、愛知県の2月定例県議会で「愛知県人権尊重の社会づくり条例」が全会一致で採択されました。3月24日に採択された条例の骨子は、①インターネット上の誹謗中傷の未然防止と被害者支援に向けた施策を実施、②ヘイトスピーチの解消の必要性についての理解を深めるための啓発活動、③県が設置する公の施設においてヘイトスピーチが行われることを防止するための指針の策定、④公共の場所でヘイトスピーチが行われた場合は「愛知県人権施策推進審議会」の意見を聞いたうえでその概要の公表を行うなどとなっています。
都道府県レベルではヘイトスピーチ対策の条例を定めている自治体は2018年の東京都、19年の大阪府があり、全国で3番目となります。
各政党、自治体長への要望活動
2016年に超党派で制定されたヘイトスピーチ対策法には罰則がないため、6月より各政党への要望活動を始めました。また相模原市長、国立市長との面談を通して、罰則のあるヘイト規制条例の制定とヘイトが行なわれる可能性のある団体や行事に公共施設の使用を許可しないよう要望しました。
国連・自由権規約委員会へのレポート提出と派遣要望活動
昨年は4回目となる「国連・自由権規約委員会」へのレポート提出と派遣要望活動を行ないました。レポート内容は、①民族的マイノリティーの権利の否定、②包括的な差別禁止法の不在、③在日コリアンの地方選挙権すら行使できないこと、④公務就任権の過剰な制限、⑤ヘイトスピーチ及びヘイトクライム根絶、⑥関東大震災の際の朝鮮人虐殺を否定する言説がまん延し、政治家もこのような言説を助長している、というものです。
11月3日に総括所見があり、自由権規約委員会はヘイトスピーチについて次のように勧告しました。①出身に関係なくすべての人に対する差別的な言動が対象となるよう、ヘイトスピーチ対策法の適用範囲の拡大を検討すること、②オンライン及びオフラインのヘイトスピーチの行為を明確に犯罪化するための刑法改正を検討すること、③関係者への研修の強化と多様性への理解とリスペクトを促進する啓発キャンペーンを通じて、不寛容、偏見そして差別と闘うこと、④ヘイトクライムとヘイトスピーチに関する法執行当局の捜査能力を強化し、すべての事件が系統的に捜査され、加害者は責任を課せられ、被害者が最大限の賠償を受けられるよう確保する、というものです。
地方参政権の付与、国連・自由権規約委員会の勧告
納税義務を果たし、長い歴史的経緯をもって居住している私たちに、住民として生活している自治体に制度的に参与できる権利があって当然です。
既に最高裁は1995年に「特段に緊密な関係があると認められる永住者等に対し地方選挙権を付与する措置を講ずることは憲法上禁止されているものではない」と明言しています。
2018年に国連の人種差別撤廃委員会は私たちに付与しないのは差別であると述べています。
今回、国連の自由権規約委員会は2022年11月の総括所見で「永住コリアンとその子孫に地方選挙での投票権を認めるよう関連法の改正を検討すべきである」と画期的な勧告をしています。
日本の根強い差別と偏見に対し、私たちは諦めるのではなく、付与しないのは「おかしい」と声を上げ続けていくことが必要です。
「生活相談センター2022本国セミナー」実施
昨年もコロナ禍により制約されたにも拘わらず、中央本部の「生活相談センター」では700件以上の相談がありました。また広島、宮城、大阪で相談会及び意見交換会を持ちました。11月15日には3泊4日の日程で「2022本国セミナー」を実施し、外交部、大韓法律救助公団、大法院、在外同胞財団を訪れ、それぞれ、領事サービス関連、在外国民の住民登録関連、家族関係登録など、講演と意見交換をしました。
民団は民族団体であり生活者団体であります。相談センターでは全体会議を通じて、在日同胞弱者に寄り添い、相続や家族関係、法律問題などで悩んでいる同胞に各種サービスを提供し、同胞が不利益をこうむることのないよう、生活と権益を守ることを改めて確認しました。今後もより信頼される民団づくりに努力していきます。
第4回人権セミナー開催
12月4日、人権擁護委員会(李根茁委員長)と法曹フォーラム(殷勇基会長)の共催で「第4回人権セミナー」を開催しました。
関東大震災から今年で99年目です。元教員の方が横浜での朝鮮人虐殺について、「戒厳令下、警察が先頭に立った」とする報告をしました。
治安対策にあたるべき官憲自ら流言を発信し、拡散し、さらに自警団を組織したという指摘は、虐殺はなかったとする歴史修正主義の流れに一石を投じるものです。
このセミナーは、関東大震災の流言蜚語により虐殺された人々を追悼するとともに、その事実を隠ぺいしようとする歴史修正主義の正体を検証する目的で毎年開催しています。
韓日首脳会談と日韓パートナーシップ宣言25周年に向けて
記念シンポジウム
韓日首脳会談は略式で9月23日にニューヨークで行なわれ、11月13日には、カンボジア・プノンペンで正式の会談が持たれました。3年ぶりとなるものです。
首脳会談では、①北韓の前例のない頻度での挑発行為と脅威について、抑止力を強化する、②懸案の早期解決を図る、③査証相互免除による両国間の人的交流の拡大への期待、④首脳間でも意思疎通を継続していくことで一致しました。
これを受け11月29日、親善協会の主催で「日韓パートナーシップ宣言25周年に向けて」シンポジウムを開き、講師として、杉山普輔外務省顧問が「激動する国際状況下での日韓関係の立ち位置」、尹徳敏大使が「尹政権での韓日関係改善の原点」について語りました。
韓日関係の揺るがない構築を促進するため、2023年韓日パートナーシップ宣言25周年に向け、韓日両国の友好親善の輪を次世代とともに創出しようとして開催したものです。
各地方本部でも、韓日文化交流や「朝鮮通信使」行列、また公館と一緒になって韓日の友好親善活動に力を注ぎました。
ロシアのウクライナ侵略、北韓の核ミサイル開発、中国の軍備増強など、韓国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しています。大韓民国憲法第4条には「大韓民国は統一を指向し、自由民主主義的基本秩序に立脚した平和的統一政策を樹立しこれを推進する」とあります。
これまで民団は、日本の地で自由民主主義の韓国を守り、祖国の平和統一のために寄与して参りました。私たちは「平和統一」を願っています。
尹錫悦大統領は光復節に際して、核開発を中断して実質的な非核化へと転換した場合、北韓の経済や国民の暮らしを改善する「大胆な構想」、大規模な支援策を示しました。
しかし、北韓は9月に「核武力政策法」を制定し、「体制維持のため、核は絶対に放棄できない」と述べ、先制攻撃も辞さない構えであります。これまで以上に差し迫った脅威に対して、私たちは、断固核開発の中断と核の廃絶を訴えます。呂健二中央団長は11月2日に、任命されて間もない第20代民主平和統一諮問会議の金寛容首席副議長と石東鉉倹事務処長を訪ね、韓半島の非核化と平和構築、及び民団の役割について意見交換しました。
北送63年を迎えて~2022歴史検証シンポジウム
12月9日には「北送63年を迎えて~2022歴史検証シンポジウム」を開催しました。
1970年代、金日成還暦の贈り物として185名の朝鮮大学校生が朝総連によって北送された所謂「人間プレゼント」という非人道的な犯罪性の検証と今後の救援活動について討論がなされました。それに先立ち、映画「かぞくのくに」(ヤンヨンヒ監督)が上映されました。
また、北送された同胞(93339人、内6679人の日本人妻子)の生死確認、家族の安否、自由往来、責任の所在は、私たちにとって忘れてはならない人権問題です。
平和統一寄与
太永浩国会議員 北韓情勢で時局講演
12月15日、民団の招請で来日した与党「国民の力」の国会議員、太永浩議員の時局講演会を持ちました。南北統一については、1981年~2010年生まれの「MZ世代」が成長しており、この世代の価値観を観ると、彼らが成長して指導層に育った時、統一が達成されるだろうと展望しました。
太永浩議員は北韓の英国公使として2016年に亡命。3万3千人とされる韓国在住の脱北者が「安定して暮らせるようにすること、成功ストーリーをつくり続けるならば北韓は崩壊する」と断言しました。
2022世界韓人会長大会開催、「在外同胞庁」新設へ
10月4日から7日まで、「2022世界韓人会長大会」が仁川で開催され、64カ国から333人が参加しました。
政府との対話や全体会議を通じて、①居住国国民に韓国の文化と価値を知らせる公共外交を積極的に施行する民間外交官の役割を遂行する、②移民120年の歴史の主役として、同胞社会の発展、母国との交流拡大及び次世代同胞の教育に協力する、③韓半島の平和統一に貢献し、ひいては東北アジア全体の平和定着に努力する、④効果的、体系的な在外同胞政策を樹立し、執行できる「在外同胞庁」の首都圏設置を求める、⑤2030年釜山エキスポ誘致を支持する、などの決議文が採択されました。
なお、地域別討論では、民団と韓人会の交流と和合について熱のこもった率直な意見交換がありました。
結びに
2022年度は、コロナの感染拡大が継続し、またロシアによるウクライナ侵略戦争や北韓の度重なるミサイル発射があり、安全保障面で緊張が続いたにもかかわらず、また民団内部の葛藤が治まらなかったにも拘わらず、全国各地方の任職員が同胞社会の明日のため、黙々と仕事をしてきた一年でありました。