掲載日 : [2023-03-01] 照会数 : 2683
【第77回定期中央委員会】2023年度基調案①
Ⅰ 内外情勢展望
日本政府は昨年12月に戦後の安全保障政策を大転換し、相手の領域内を攻撃する「敵基地攻撃能力」(反撃能力)の保有など、安保関連3文書を閣議決定しました。これに対し、米国は「ルールに基づく国際秩序と自由で開かれたインド太平洋を守るという日本の断固たる関与の意志を反映したものだ」と歓迎の声明を発表しました。韓国は独島の領有権を主張した部分を問題視して「直ちに削除を求める」として日本に抗議しました。ただ、敵基地攻撃能力の保有など、防衛力強化への賛否は避け、「日本国内の防衛安保政策に関する議論が平和憲法の精神を堅持しつつ、地域の平和と安定に寄与する方向で透明に行なわれることが望ましい」としています。過去の植民地支配の記憶が残る韓国では日本の防衛力強化を憂慮する向きも少なくありません。
ただ、深まる米中対立、核ミサイル開発を進める北韓、ロシアのウクライナ侵略、激変する安保環境を背景とした日本の防衛力政策の大きな転換について国際社会では、歓迎と警戒が相半ばしています。日本の政策変更は、中国の軍備増強が引き起こした事態ともいえます。
長期化するウクライナ事態は、「世界秩序全体の地殻変動」であり、第二次世界大戦後、最も危険な「歴史の分岐点」であると言われています。世界の安全保障の不安が高まり、エネルギーや物価高騰が各国の暮らしにのしかかっています。各国に広がる自国第一主義やポピュリズム、コロナワクチン供給の南北格差など、格差の拡大と社会分断を生む不満の高まりは、世論を国際協調から遠ざけています。
また異常気象による影響が世界に顕在化しています。パキスタンの大洪水、アフリカの大規模干ばつなど、環境問題の本質は、弱者や責任のない人たちに被害が及ぶことです。内外の貧困の改善や均衡ある国際開発に協調し、無法な侵略を許さない秩序形成に、私たちも無関心ではあり得ません。
Ⅱ 在日同胞 社会の現状
2021年末現在の在日外国人は276万635人で、日本の人口(1億2,570万人)比で2・2%です。在日韓国人は409,855人で、在日朝鮮人は27,214人、合計436,167人が在日韓国朝鮮人となります。
これは、24年前(1998年638,828人)に比べて約20万2千人、約3分の1減ったことになります。特別永住者は、韓国籍が267,070人、朝鮮籍が25,794人、合計292,864人となります。これは24年前(1998年528,450人)に比べて約23万5千人、半分近くが減ったことになります。
永住者は、韓国籍が73,037人、朝鮮籍が386人、合計73,423人で、24年前(1998年26,425人)に比べると、約3倍になっています。戦後移住してきた人が永住するようになり、その数が増えていることを示しています。
ちなみに在日外国人中、在日韓国人の占める割合は14・8%に過ぎなくなり第3位です。24年前は42・2%で1位でした。
今、在日外国人の数は1位が中国人で716,606人(26%)、2位がベトナムで432,934人(16%)となっています。中国人の内、永住資格を取っている者は約30万人で4割になります。
婚姻は、2017年末で同胞同士が8・3%、日本人との婚姻が87・8%、その他が3・9%でした。同胞同士の婚姻は1965年当時が64・7%、日本の国籍法が両系主義を採用した1985年が28・0%、2005年が9・4%でした。
父母の内どちらかが日本人であれば、生まれた子は韓国に届け出ない限り日本国籍になります。在日韓国朝鮮人の出生者は1980年が6,680人、2000年には3,840人であったのが、2021年には在日韓国人の出生者は660人にすぎません。
この40年間で出生者は10分の1に激減しています。超少子化です。 2020年に在日韓国人が1人も生まれていない県が10、1人しか生まれていない県が10ありました。つまり20県で10人しか在日韓国人は生まれていない計算になります。一方で、前期高齢者(65才~74才)が64,621人、後期高齢者(75才~)が55,172人、合計119,793人となり、全体の29・2%となります。
まとめると、在日韓国人は21世紀に入って3分の1減り、戦前から継続して住んでいる1世2世の特別永住者は半減しました。この40年間で婚姻による在日韓国人の出生は10分の1となり、戦後最少の1,000人以下となっています。高齢者は逆に増加し全体の3割になります。つまり、在日同胞社会は超少子高齢化社会を迎えているということになります。
民団組織の液状化・過疎化
超少子高齢化の影響はあらゆる所に来ています。同胞が過疎(同胞数2,500人以下)の地方本部が増加しており、48地方本部中、26地方がすでに過疎地方となっています。その内、同胞数が1,000人以下の超過疎地方本部が13になります。団員や団費・賛助金等の減少により、過疎地方・支部の維持が困難になっており、遠からず、支部の消滅を視野に収めなくてはなりません。深刻な人口減少によって、将来、在日韓国人が増加する可能性は期待できない状況です。過疎化する地方と、比較的同胞の人口の多い都市部においても、組織がまとまらず液状化する傾向にあります。
民団組織の役員や構成員にも変化が生じています。特別永住者などの1世2世の減少とその子弟の民団離れや日本国籍取得などによって、元々の民団構成員が少なくなり、かわりに元総連系同胞、元朝鮮学校出身者、新定住者等が増加し、よりよい協調関係が望まれています。また、日本国籍同胞が増加しており、在日韓国人数の2倍から3倍いると推定されます。韓国籍は減っていますが、ルーツで見ると、在日同胞数は増えています。親のどちらかが日本人、韓国人で、2つの民族をもって生まれてくる3世、4世が増加しています。今後、政策や方針を決めていく際に、多様性をいかに認めていくか、調節が必要不可欠です。三機関制度の維持も困難になっています。過疎地方の人材難、財政難を踏まえ、地方の実情に適合した制度の改革、規約規定の改正が求められています。