掲載日 : [2010-11-03] 照会数 : 4982
大倉集古館 利川五重石塔の返還へ条件提示
利川市長「第1回より前進」
私設美術館「大倉集古館」(ホテルオークラ東京敷地内、東京都港区)は10月29日、同館が所蔵する利川五重石塔について条件付きながら返還交渉に応じるとの姿勢を示した。大倉集古館の大崎磐夫理事長との会談を終えた利川市の趙炳敦市長がこの日、衆議院第2議員会館で会見し、明らかにした。
趙市長によれば、大崎理事長は、「返すとしても韓日両国政府間で協議がなされるなどといった大義名分が必要」と強調したという。7月の第1回会談のときは「返還は話題にもならなかった」とされるだけに、趙市長は「第1回よりは前進」と受け止めている。帰国次第、中央政府に伝え、政府次元での解決を申し入れたいとの考えを明らかにした。
会談に同席した五重石塔還収委員会の朴菖煕実務委員長は、大倉集古館が政府間交渉へとあえてハードルを上げたことについて、「利川五重石塔を返せば、植民地期に韓国から不法に文化財を搬出した関係者にも影響が及ぶ。一部の保守的な人たちからも返すべきではないといった電話が多く寄せられている。大倉集古館は私設美術館では老舗なだけに、大義名分が欲しいのだ」と事情を明かした。
これに対して、利川五重石塔返還運動にかかわってきた在日韓国人の間では意見が分かれた。一つは「韓国の大統領と日本の首相が話をつけるというのは筋違い。大義名分をどうするかは不法に持ち出した側で考えるべきことだ」といった反発の声。一方で、「1日も早く利川に取り戻すのが先。相手の逃げ道も考えてあげなければならない」という実利優先の声も聞かれた。
朴実務委員長は、「大倉とはしっかりパイプがつながっている。このパイプは大事にしていく必要がある。一方で首脳同士の話し合いも大倉以外の美術館にいい影響を与えるだろう」と述べた。
(2010.11.3 民団新聞)