掲載日 : [2020-06-26] 照会数 : 7522
「慰安婦」記述が復活…2021年度中学歴史教科書
[ 検定に合格した7社の中学校歴史教科書見本本 ]
7社中2社で掲載…見本本展示し意見募集中
2021年度から中学校で使われる教科書の見本本が、広く市民の意見を聞くため、12日から全国で展示されている。教科書会社が編集した原稿段階の教科書を文部科学省が審査した今回の19年度検定では10教科で115点の申請があり、106点が合格。歴史では「新しい歴史教科書をつくる会」(高池勝彦会長)が推進する「新しい歴史教科書」(自由社)が不合格になり、育鵬社を含む7社が合格した。
合格した歴史教科書では「従軍慰安婦」の記述が一部で復活した。
学び舎は「問い直される戦後」(270㌻)で91年に自ら元慰安婦として名乗り出た金学順さんの証言、93年「河野洋平官房長官談話」について要約して紹介した。山川出版でも「側注」で戦地に設けられた「慰安施設」には、朝鮮・中国・フィリピンなどから女性が集められた(いわゆる従軍慰安婦)と記述した。東京書籍版には「従軍慰安婦」という言葉はないが、それを説明した記述が見られた(237㌻)。
「従軍慰安婦」という記述は「河野談話」をきっかけとして97年からすべての中学教科書に一斉に登場した。しかし、日本会議や「新しい歴史教科書をつくる会」らの猛烈な抗議におびえた教科書会社が、自ら記述を削除していった。教科書の検定基準に抵触していたわけではない。
韓国併合に関する記述では、帝国書院が和服を着用した韓国皇太子の写真と韓国服姿の伊藤博文の写真を並べ、日本の植民地支配の実態を端的に表した。
対照的に八木秀次氏ら日本会議系の学者たちが作成した育鵬社では「韓国服の伊藤博文の写真」(200㌻)だけを掲載。これでは日本が韓国の文化を尊重していたかのような誤った先入観を与えかねない。
「韓国併合後の朝鮮の変化」の表(201㌻)を見ると、コメの生産量も学校数も増えてあたかも生活がよくなったかのようにイメージさせる。だが、現実には増産米は日本に持っていかれ、朝鮮の歴史や朝鮮語の授業が禁止されていったという不都合な真実に触れていない。
太平洋戦争について、アジアを植民地から解放する「自存自衛」の戦争と誤解させる「大東亜戦争」(242㌻)と呼ぶのも育鵬社だけ。加害の記述はほとんどなく、戦争を美しく描いている。
これは15年8月に閣議決定された安倍晋三首相の「戦後70年談話」にも反する。談話は「国策として日本がアジア解放のために戦ったとする主張することは正確ではない」としていた。
(2020.06.25 民団新聞)