掲載日 : [2021-08-25] 照会数 : 3847
絵本でつなぐ韓国と日本、「交流会」の康素映会長
[ 2019年の世界絵本展イベントで子どもたちに韓国絵本の読みきかせをする康素映日韓絵本交流会会長(左) ] [ 交流イベント「神楽坂・えほんパークレット」は毎年盛況 ]
2017年に設立した日韓絵本交流会(康素映会長)は、展示会やワークショップ、講演会などを通じて、多様な韓国の絵本を紹介してきた。現在、東京を拠点に活動を展開しているが、今後は地方での活動も視野にいれる。康会長の夢は、韓国と日本を絵本でつなげることだ。
理解、子供たちから
相次ぐ翻訳 「友好」の基盤に
日韓絵本交流会の前身は、東京に住む5人の韓国人でつくった絵本の勉強会だった。当時、毎月1回、高齢者福祉施設神楽坂(東京・新宿区)で勉強会を行っていたという。
同施設は、絵本を軸とする地域・国際交流イベント「神楽坂・えほんパークレット」の会場でもあった。康会長らが同イベント事務局の担当者と会った時、参加を提案され、日本に韓国の絵本を紹介できると思い、参加を決めた。
現在、同会のメンバーは7人。全員韓国人だ。職業は元絵本デザイナーや絵本作家志望生、児童書出版社広報担当などで、ほとんどが児童書出版業界に携わった経験を持つ。
康会長自身はソウル大学言語学科を卒業後、ソウル江南区の大手塾で入試論述対策について指導をしていた。当時、過度の受験競争で疲れ切っていた学生をいやすために絵本を読んであげた。それがきっかけで自身も関心を高めた。
その後、家族とともに来日。同会を設立し、絵本業界で本格的に活動をするようになる。現在、韓国と日本の児童文学団体と協力しながら、韓国絵本をテーマにした多様な文化イベントの企画を立てるほか、韓国出版文化振興院が運営する雑誌にも、日本の出版業界に関するさまざまなコラムを掲載している。
同会の設立当初、日本では韓国絵本の認知度は低かったという。出版された本も少なく、その本がほとんど絶版になっていた。
17年、「神楽坂・えほんパークレット」で初めて絵本の展示会を開いた時、作家のペク・ヒナさん、アンニョン・タルさん、ソ・ヒョンさんの本を展示。だが、日本で翻訳出版されていたのはペクさんの『天女銭湯』(長谷川義史訳)だけだった。結局、ペクさん以外は展示図書の韓国語版を展示したという。今はペクさんのほとんどの作品が日本で翻訳出版されている。アンニョン・タルさんをはじめ、年間、数十冊も翻訳出版されるほど、韓国絵本の存在感は高まった。
さらに、19年にはペクさんの『あめだま』(長谷川義史訳)が外国作品としては初めて日本絵本賞と日本絵本翻訳賞を同時受賞した。
現在は韓国絵本のブームと言えるほど、日本で出版された絵本が多くなり、展示会でも日本語版だけで構成できるほどだ。近年、韓国絵本を取り巻く環境は大きく変化した。
韓国の絵本を日本に紹介している同会の活動について、韓国の関係者からは「感謝の言葉とともに応援してくれる」と目尻をさげる。日本の人たちは韓国の絵本に出会える機会を作ってくれたお礼をアンケートなどに寄せている。なかには「韓国の絵本がとても美しくて、韓国語を学びたい」という人もいるそうだ。
現在、東京に限定した活動範囲を拡大するため、講演会をオンラインで開催しているほか、図書館で韓国絵本展示会を開く場合は、絵本を無料でレンタルする計画だ。
「私は『つなぐ』という言葉が好きです。韓日両国の関係が困難な時であればあるほど、誰かが両国の人々をつなぐ仕事をしなければならないと思う」としながら、「特に未来を導いていく両国の子どもたちが文化的に親しくならなければいけないと思う。そんな面で絵本はすてきな橋になる。言語が違っても、絵で隣国の子どもたちの生活や感情を伝え合うことができるから」と語る。
同会のスローガンは「絵本を愛する私たちはみんな友だち」だ。
「長引くコロナによって国と国、人と人が断絶されている今、私たちの団体名のように、韓日両国を絵本でつなげたい」と胸をふくらませる。
(2021.08.25 民団新聞)