韓国第18代大統領選挙に立候補登録した各候補者は、中央選挙管理委員会が指定した要綱に基づいて10大基本政策を提出した。要綱は「政策項目」「現況と問題点」「目標」「履行手続きおよび期間」「財源調達方案」を求めている。ここでは、各種世論調査で高い支持率を維持しているセヌリ党の朴槿惠候補、民主統合党の文在寅候補の10大政策について、「現況と問題点」「目標」のみを紹介する。また、在日選挙人の関心が「外交安保」に集中していることを考慮し、中央選管委のホームページからその部分に関する両候補のコメントを末尾に記載した。いずれも、本紙編集部の責任において翻訳・要約した。他の候補者5氏については、写真と基本的な人的事項の紹介にとどめた。なお、掲載は記号番号順。(本紙編集部)
②文在寅(民主統合党)
【人的事項】
男/1953年1月24日
国会議員
慶熙大学校法科大学法律学科
(前)(再)人が暮らす世の中盧武鉉財団理事長/(現)第19代国会議員
①造・分・変の雇用革命で「人の経済」を実現!
▽成長率が上がれば仕事が増える時代は終わり、労働市場は二極化、労働貧困の罠にはまった。若年層の実質失業率は20%水準。800万非正規職は差別から脱却できず。民生経済は疲弊し、中産階級は崩壊の危機に。
▽良い仕事をより多く「つくり」「分けて」、悪い仕事を良い仕事に「変える」雇用革命を通じて雇用率は70%台に上げ、非正規職を現在の半分に縮小。
②公平で正義ある「共生・協力の経済民主化」
▽財閥による経済力集中、便法相続と贈与など財閥総帥一家の不当な私益追求と不法行為による市場経済秩序の根幹毀損。1000兆㌆に迫る家計負債は経済の潜在的時限爆弾。二極化の深化による葛藤と分裂が新たな成長と変化を妨げ、社会全般の格差を拡大。
▽経済力集中の弊害を是正し、憲法精神と共同体価値を具現。家計負債による庶民の負担軽減。社会的経済を通じて地域中心の循環経済活性化を推進。
③国民皆が幸せな「福祉国家とジェンダー平等社会」
▽失業と貧富の格差拡大、世界最低の出生率、世界最高の高齢者貧困率と自殺率など深刻。経済成長の果実は財閥など特定少数に帰す半面、大多数国民は不安な雇用と養育費、教育費、医療費、住居費などにあえぐ。女性雇用率はOECD平均よりはるかに低く、出産・育児期の女性の経歴断絶も依然として深刻。家庭内暴力と女性・子どもに対する各種性犯罪事件による不安心理加重。
▽福祉国家は時代の要請であり、当面する様々な葛藤と分裂的な問題を解決するための核心。5大目標を立て福祉国家5カ年計画を実践。
④国民に信頼される新しい政治
▽政党政治が直面する危機の本質は、国民の根深い政治不信任。特権と既得権を果敢に放棄することが新政治の出発点だ。
▽政治の信頼回復で公平かつ公正な国政運営の定着。公職者腐敗の源泉封鎖。地域主義の克服と国民参加のクリーンな政治で新政治を具現。
⑤平和と共存で繁栄する大韓民国
▽政府の天安艦事件にともなう対北5・24措置により、南北貿易が全面中断、南北協力事業が正常に推進されていない。対決と不信の南北関係を終息させ、平和と統一、繁栄の時代を開くためには、6・15と10・4宣言の履行・発展が必要。
▽南北経済連合、韓半島の平和体制構築。1人当たり3万㌦の国民所得を実現、8000万人の韓半島共同市場構築。6者会談を恒久的な東北アジア多者間安保協力機構に移行させ、北・米関係と北・日関係の正常化を支援し東北アジアの平和と協力関係を構築。西海北方限界線(NLL)を確実・安全に守りながらも、黄海経済圏のビジョンを実現。
⑥国民の安全と男女平等社会の実現
▽生命と財産を保護し、事故、病気、危険食品、各種暴力から国民を守るために、すべての政策の最優先順位は国民の安全に置く。男女差別のない労働環境や雇用、生活の均衡支援を通じて、共に働いて配慮し合う男女平等社会の早期実現が必要。
▽男女平等社会の実現。効率的な災害管理システムの構築。民生治安・交通安全の強化。学校安全事故の予防と児童青少年保護強化。
⑦公平な機会を開く「質高く、幸せな教育」の実現
▽李明博政府の過度な競争教育による公教育の荒廃深刻。 韓国は学力が高くとも、学校満足度は最下位レベル。消耗的で非教育的競争に子供の苦痛深刻。私教育費の家計負担は大きく、老後の準備も放棄。
▽幼稚園から高校まで無償教育。公教育の強化、私教育の弊害防止。教育格差解消のための教育福祉支援法(仮称)制定。教育の政治的中立性を確保するため国家教育委員会設置。
⑧科学技術・創造・革新・融複合で開く未来成長国家
▽持続的な経済成長基盤と質の良い雇用を創出するために将来の成長動力拡充は必須。李明博政府の科学技術部廃止に伴う科学技術政策の司令塔不在により、未来の成長動力の基礎となる科学技術がないがしろに。
▽科学技術強国を通じた成長動力基盤づくり。科学技術部の復活などを通じ、国家科学技術の画期的発展を試み研究環境を改善。経済分野から統一に向かって進む南北経済連合をわが経済の新しい成長動力として牽引。
⑨地域と農漁村が共によく暮らせる均衡発展
▽中央権限の地方移譲促進法、地方分権特別法の制定など分権のための基盤が造成されたが、教育自治の向上や自治警察制の導入など実質的、包括的地方分権が不十分。参与政府から首都圏の過密解消と国家均衡発展を先導するために、行政中心複合都市、革新都市、企業都市建設事業などを推進したが、李明博政府に入って足踏み。
▽地方自治の力量強化、地方財政の拡大などを通じた真の地方分権の実現。名実ともなう行政中心複合都市建設。地域の発展をリードする革新都市を国家成長動力の拠点都市として建設。
⑩持続可能な発展と次世代のためのクリーンな環境
▽李明博政府の4大河川事業は水質改善、生態環境保護、洪水の予防、水量確保等に寄与せず、過度な浚渫による支流河川の逆行浸食で河川堤防の破壊と生態系の撹乱が深刻。世界的な「脱原子力」の代替として再生可能エネルギーの重要性浮上。
▽4大河川再自然化復元と国土の乱開発防止。脱原発のロードマップ推進や新再生エネルギー拡大。
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人道的な次元での対北支援について
現在、北韓住民たちは慢性的な食糧難と医薬品不足などにより、大きな苦痛を抱えている。このような北韓の困窮は、高い死亡率(1000人当たり42人。南韓の8倍)、子どもの劣悪な身体発育(11歳男児基準で身長19㌢、体重16㌔の差)など、保健医療の実態において画然と現れている。
したがって、北韓に食糧、医薬品など人道的支援を提供することは、北韓住民の実質的な生活を改善する助けになるだけでなく、南北間の理解と統合力を高め、究極的に南北統一にも効果的に作用する。
米国中心の外交安保政策から脱皮し、外交路線を多角化することについて
李明博政府になってから、著しく偏重した米国中心の外交により、中国、ロシアなど周辺国家との外交関係が悪化した。それにより、天安艦事件など南北間対立が深化し、北核問題の解決においても中国、ロシアなどの協力を得られず、国際社会からの孤立を自ら招いた側面がある。
米国との関係においても、均衡的な実利外交を追求できず、米国産牛肉の開放、韓米FTA再協議など、一方的に米国の要求を受け容れ、国民的な反発と国論分裂を深化させた。
したがって、わが外交の最も重要な軸である韓米同盟を基盤とするが、中国・日本・ロシアなど周辺国とEU、東南アジア、アフリカ、中東など諸国家との外交を多角化し、われわれの国益にかなうバランスのある外交を実現しなければならない。