韓国第18代大統領選挙に立候補登録した各候補者は、中央選挙管理委員会が指定した要綱に基づいて10大基本政策を提出した。要綱は「政策項目」「現況と問題点」「目標」「履行手続きおよび期間」「財源調達方案」を求めている。ここでは、各種世論調査で高い支持率を維持しているセヌリ党の朴槿惠候補、民主統合党の文在寅候補の10大政策について、「現況と問題点」「目標」のみを紹介する。また、在日選挙人の関心が「外交安保」に集中していることを考慮し、中央選管委のホームページからその部分に関する両候補のコメントを末尾に記載した。いずれも、本紙編集部の責任において翻訳・要約した。他の候補者5氏については、写真と基本的な人的事項の紹介にとどめた。なお、掲載は記号番号順。(本紙編集部)
①朴槿惠(セヌリ党)
【人的事項】女/1952年2月2日
政治家
西江大学校電子工学科卒業
15代〜19代国会議員/前セヌリ党非常対策委員長
①公正性を高める経済民主化
▽わが経済はこれまで効率性を強調しすぎた半面、公正性をなおざりにしてきた側面がある。大株主の私益追求行為、大企業の中小企業との取引における市場支配力乱用行為、談合を通じた経済力乱用行為など市場の不公正性が存在している。
▽経済民主化を通じて公正な取引秩序を確立。
②韓国型福祉体系の構築
▽所得保障と福祉サービスを提供すべき低所得層すらも死角地帯に放置されるか、利用するうえで困難さを味わうなど、福祉拡大の恩恵を正当に体感できない問題は深刻だ。福祉制度と財政がかなり拡大されたものの、低所得層と中産層が体感するには不十分な水準であり、自分とは関係ないと感じているなど、国民が必要とする部分を支援できない福祉政策という限界に直面している。
▽生涯周期別オーダーメード型福祉政策を通じて、細部にわたる社会安全網を構築し、経済発展と社会安定に躍動的な均衡を維持。
③創造経済を通じた成長動力の確保と雇用創出
▽わが経済は「雇用なき成長」を超えて、雇用創出中心の新たな成長方式を模索すべき時期だ。既存の経済発展方向が追撃型・模倣型、経済成長率志向、量的成長を追求しており、雇用と国民の生活の質を同時に改善することができず、新たな成長動力を発掘して持続可能な経済発展体制を整えるのにも限界がある。
▽想像力と創意力、そして科学技術を基盤とする経済運用で成長動力を確保し、雇用を創出。
④韓半島信頼プロセスの定着
▽宥和主義的な包容政策と原則に立脚した対北政策のすべてにおいて、北韓社会の意味ある変化を誘導できなかった。この間の南北関係改善の努力にもかかわらず、持続可能な平和を築けなかった。南北間、または北韓と国際社会との間に成されたこれまでの多くの約束と国際基準を守る戦略的信頼関係が不足。
▽韓半島の信頼プロセスを通じて持続可能な韓半島の平和定着および統一韓国の基盤造成。
⑤政治革新を通じた信頼回復と未来型創造政府の具現
▽賄賂授受など政治と関連した各種不正腐敗が絶えず発生するなど、政治圏に対する国民の不信は深刻。低出産問題、環境問題などこれまでの方式では解決できない新たな挑戦を克服するためには、過去とは違う新たな政府運営パラダイムが必要。
▽政治腐敗を源泉的に根絶し、民生を最優先にする信頼の政治ができるよう政治を革新。開放・共有・参与・意思疎通を通じた未来型創造政府を実現する。
⑥差別なき雇用市場
▽わが国の非正規職労働者は、正規職に比べて低賃金と深刻な雇用不安に悩まされ、社会両極化の最大要因となっている。わが国は賃金労働者の2分の1が非正規労働者で、OECD国家の中でも比率が最も高い方だ。
▽非正規職と正規職の不合理な差別を改善し、公正な労働市場を造成。
⑦わが経済の核心! 農漁村の活性化と中小中堅企業の育成
▽農漁村と農水産業の経済・社会的条件が劣悪で、農漁民の生活の質が低下し、都市と農村間の所得格差が拡大。中小企業が中堅企業に発展し、技術を革新しながら良質の人材を雇用しうる条件が不足。中央政府と地方行政による類似の企業支援政策の推進と部署間の縦割り型支援の問題。グローバル企業の国内中小企業との共存共栄プログラムが不足。
▽農漁村の生活の質を高め、農水産業の競争力を培い、農漁村の所得を増大させるよう育成する。中小中堅企業を集中的に育成して雇用を創出し、未来の成長動力に導いていく。
⑧夢と才能を思う存分育む幸せ教育
▽われわれの学校は、学生にとって幸せな空間というよりは苦痛を耐えるべき空間に転落。点数を取るための無限競争による高い平均学業達成度に比べて、学習に対する興味と創意力が低下。学生の夢と才能を見いだし活かす教育、協力を通じて互いに成長する教育、徳性と創意性を育む教育に大転換すべきだ。
▽夢と才能を思う存分育み、誰もが成功する能力中心の教育を実現。
⑨オーダーメード型保育と仕事・家庭の両立
▽出産と養育が、女性の精神的・肉体的幸福の実現に大きな負担となる生涯期間のうち主たる社会的危険の一つと認識。子どもの養育負担が女性の経済活動参加に主要な障害として作用。男性中心的な職場文化によって女性が職場に参入しにくいだけでなく、就職しても仕事と家庭生活の両立は困難。持続的な女性の就業を後押しする政策の実践的努力不足により、仕事と家庭の両立と関連した制度の実効性が不十分。
▽オーダーメード型保育サービス制度の確立および仕事と家庭の両立を支援し、女性の経済活動参加率と出産率の向上を達成する。
⑩安全な社会
▽児童や女性への性暴力、拉致、殺害など凶悪犯罪が相次いで発生、その手段が凶暴化し、不安感が増大。「現実不満型」「反社会性人格障害型」「精神疾患型」といった「通り魔犯罪」が増加。日常生活で犯罪に対する不安を感じる国民や犯罪被害の後遺症に苦しむ犠牲者が継続増加。日常生活での性犯罪、セクハラ問題が蔓延。性犯罪者の管理失敗および監視システムの問題で性犯罪が引き続き増加。
▽犯罪予防のため公権力の拡充と内実化、そして先端安全科学技術を積極的に活用し、犯罪から安全な社会をつくる。
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人道的な次元での対北支援について
北韓住民の苦痛を減らすために、同じ民族として政治性を可能な限り排除し、人道的支援をしなければならない。実質的な生活改善への人道支援は、南北韓の最小限の信頼形成に寄与する。ただし、大規模支援や南北交流協力は、国民的合意を土台にすべきだ。
対北支援がそれを最も必要とする対象に伝達されるのか、国際的な合意に準じたモニタリングが必要だ。核開発と先軍政治を放棄し、改革開放を通じて経済を活性化させ、これ以上支援に依存しないよう誘導していく。
米国中心の外交安保政策から脱皮し、外交路線を多角化することについて
外交政策の多角化は国益にも即し、われわれが追求する外交政策の方向でもある。同盟国である米国とは包括的な戦略同盟関係を深化させ、中国とは戦略的パートナーシップを発展させながら、日本とも未来志向的な協力関係を強化していく。
ロシアの極東発展戦略を積極的に活用し、欧州、アジア、中南米、亜中東地域とも実質的外交関係を強化しながら、グローバル外交における拠点国家としての役割を拡大する。
韓米同盟の現実的重要性と韓半島および東北アジア安保環境を考慮するとき、韓米関係の重要性は今後さらに増大する。わが国は韓米同盟の未来志向的発展と中国など周辺国家との関係を韓半島および東北アジアの平和と安定に合致するよう管理でき、さらにグローバル外交舞台で中堅国としてのリーダーシップを確保する能力を十分に備えたと考える。