はたして、ほぼ40年後の世界を予測することは可能なのか。世界的な経済誌『エコノミスト』(英国)が出版した『2050年の世界‐英エコノミスト誌は予測する』によると、50年の1人当たりGDP(国内総生産)は、米国の100を基準にすると韓国が105・0と世界のトップに躍り出る。かたや日本は58・3と韓国の半分に減少すると予想した。
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人口動態
史上最速 90億人を突破
1843年創刊の『エコノミスト』は、1962年に特集「驚くべき日本」を掲載し、日本が経済大国に成長していくサクセスストーリーを予言したことで知られる。
今回は、人口動態や情報技術、地球温暖化、宗教、戦争、保健医療、経済成長、科学、言語・文化など20分野に分け、広い視点から40年後の未来を丸ごと予測している。
奇妙な話だが、2050年を予測することは、来年を予測するよりもたやすいという。未来を考えるうえで、人口動態は絶好の出発点であると同時に、すべての予測の基礎となりうる。
アフリカやインド増加
2011年に70億人を超えた地球全体の人口は、さらに史上最速のペースで増加し、50年には90億人を突破する。世界的趨勢として高齢化が進み、世界の平均年齢は、10年から50年までに9歳上がり、38歳となる。富裕国では、100歳まで生きることが普通になる。
出生率は世界的に低下し、50年には2・1になると予測。出生率の低下は、ある世代のみが突出して多いという現象を生み出し、その世代が年齢層のどこにいるかで、その国の経済が変わってくる。この「出っ張り世代」が子どもから労働年齢に達したとき、その国は急成長する。これを「人口の配当」と称するが、さらにその世代がリタイヤし、被扶養世代になると、その配当は負に変わる。
中国は減少老人国日本
これから人口の配当を受ける地域は、インドとアフリカ、中東。逆に負の配当を受けるのが、日本と欧州、中国である。中国の人口は、25年に14億人でピークを迎え、その後減少に転じる。1人っ子政策のあおりで労働力不足に陥り、安い労働力による世界の製造工場としての役割を終える。50年に日本は平均年齢52・3歳という、世界史上未踏の老人国家となっている。
病気の撲滅が進み、ゲノム解析により遺伝病の対処法もかなり進みそうだ。病気よりも高齢化と肥満が問題になる。高齢化にともなう最も深刻な影響は、アルツハイマー病の増大だ。痴呆老人の介護は、結果として各国に財政的圧力をかける。一方、製薬業界には緩和薬や予防薬、治療薬を開発するインセンティブが働く。
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新興国の時代
アジア経済 世界の半分
2010年の購買力平価(PPP)をベースに計算すると、50年までの世界全体の実質GDPは年平均3・7%で成長し、1人当たりの実質GDPは年率3・3%で伸びる。アジアの発展途上国の経済成長率は4・7%で推移すると見られる。
先進7カ国米のみ残留
新興国の教育年数が著しく延び、生産性の高い労働力を生み出し、経済成長を後押しするだろう。一方で先進国は高齢化による財政悪化に苦しみ、低成長を余儀なくされる。新興経済国との差は縮まり、世界的な規模で貧富の差は縮小していく。
50年には、アジア経済が世界の半分を占める。新興国では、知識層の女性たちが経済の急成長から、広くさまざまな分野で労働力として参入し、経済発展に貢献する。
経済規模で世界の上位7カ国に残るのは、現在の先進国のうち米国のみで、あとは、中国、インド、ブラジル、ロシア、インドネシア、メキシコと予想される。
世界的な高齢化によって、年金と健康医療費の増大は、国家財政にとって大きな負担になる。社会保障費の増大は、防衛費や教育費など国家にとって欠くべからざる分野の予算を圧迫しそうだ。社会保障制度の差が決定的な要素になるのかも知れない。とりわけ日本は「超高齢化社会」の中でもがき続けそうだ。韓国や中国のような社会保障制度が手薄な国は、これから国が高齢化しても、医療や年金といった高齢化関連の支出が限定的なものにとどまるという。
30年代には韓日で逆転
注目されるのは、韓国の成長ぶりだ。1人当りGDPについて米国を100とした場合、10年の韓国は63・1で日本の71・8より低かったが、30年には韓国(87・8)が日本(63・7)を逆転し、50年には韓国(105・0)が米国をも追い越し、日本(58・3)の倍近くにまで差をつける。(別表参照)
半面、日本やドイツ、フランスといった先進国の経済力はじりじりと低下していく。日本型の鈍化した市場が、欧米などで長期間続く可能性がある。
平均化する世界
思考と知識共有が拡大
さまざまな分野から、「エコノミスト」誌が予想する「50年の世界」を俯瞰してみよう。
情報通信の技術進歩で人々の経済的な結びつきが強くなる。今後の開発は、ハード的な仕様そのものより、人間の思考、知識の共有を拡大するものに重点がおかれていく。また通信技術の発達は、「距離」の意味を失わせる。このため各地域、各文化圏の労働力、技術力の特長を生かした国際分業がやりやすくなる。
国家や宗教低くなる壁
すべてを効率と個人の利益に換算して考える「経済第一主義」と、他人を思いやる「公共心」が対立事項となり、民主主義を揺るがしそうだ。民主主義は、先進国において後退し、新興国において前進するだろう。
経済成長を続ける新興国も、先進化するにしたがって、宗教は相対化され、無宗教者の割合が増えていく。つまり、国家や宗教の壁は次第に低くなり、世界の人々の暮らしや考え方は平均化されていく。
英語の言語としての一極集中は崩れない。唯一、それに代わる世界言語があるとすれば、それはコンピューターだ。コンピューターによる翻訳能力は飛躍的に上昇し、外国語学習は時代遅れになる。また、紙の本は電子書籍に取って代わられるが、一定の役割で生き残るだろう。
温暖化で北極は、夏の間は海になるという将来が予想される。海水部が増えることにより、海洋地下資源開発の促進、あるいは新たな漁獲域の出現など大きな変化がありそうだ。
第2次世界大戦後、戦争による死者の数は大幅に減っているものの、不確実性は高まっている。高齢化による財政悪化で先進国の防衛費が削減され、軍事的なバランスが崩れる可能性がある。無人飛行機など戦争のロボット化が進む。
ロボットの技術革新によってこれまで人間にできなかった作業ができるようになるほか、電子秘書の機能を持つ自律型ソフトウエアの登場により仕事の効率化が推進される。
可能性には満ちあふれ
先進国では、森林面積が増えるなどさまざまな形で環境が良化している。新興国による経済水準の上昇とともに、これまで損なわれた環境が復元されていくだろう。
こうして見ると、エコノミスト誌が予測した「2050年の世界」は可能性に満ちあふれている。生産性の高まりとともに、多くのイノベーションが起こり、教育水準も向上する。貧富の差が縮まり、より健康で豊かになる。
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どう変わる? 37年後
1人当たりGDP韓国9万ドル
30年に日本抜き、50年は米水準…アジア開発銀行予測
南北統一で世界2位に…スペイン紙報道
アジア開発銀行(ADB)が2011年に発表した報告書「2050年のアジア」でも、韓国の1人当たりGDPは、30年に5万6000㌦で日本(5万3000㌦)を抜き、50年には9万800㌦で米国(9万4900㌦)と同じ水準に達すると見通した。
同報告書によると、韓国、中国、日本、インド、インドネシア、タイ、マレーシアの7カ国がアジアの成長を主導し、50年までにアジアのGDPが世界の半分を占める。
ただし、中所得国の経済発展がある段階で停滞し、なかなか先進国レベルまで到達できない「中所得の罠」がリスクであると指摘した。
その罠から抜け出すのに成功したのが韓国であると評価した。模範事例として、高等教育への進学率の高さや、韓国GDPの3%を占める研究開発費、都市化の成功などをあげた。
「南北統一なら2040〜50年に世界2位の経済大国に浮上する」スペインの経済専門メディア「エルムンド・フィナンシエロ」がこのほど報道した。
同紙は、国際経済機関によるさまざまな研究結果を引用しながら、「統一すれば、40〜50年には世界第2位の経済大国になる」と分析した。
ただし、統一するためには北韓の金正恩政権が統一に向けたプロジェクトを遂行し、中国による友好的な見解も必要になると指摘した。その前提課題として、南北間の信頼回復や、統一韓国として変化するための基盤づくりをあげた。
その課題をクリアするための取り組みとして、韓国の北韓への支援や、特に非核化は真っ先に解決すべき問題だと強調した。08年から中断したままの6者会談を再開し、北韓への経済支援などについて論議する必要があるとした。
韓国の専門家による発言を引用しながら、南北統一を成功させるためには、2400万人にのぼる北韓住民の生活レベルを上げる政策が必要であり、経済・政治・社会などさまざまな側面から発展を促さなければならないと論じた。
(2013.1.1 民団新聞)