掲載日 : [2010-10-20] 照会数 : 10622
実質ある共生社会を 「歴史資料館」5周年大阪シンポ
歴史踏まえ「在日の未来」討議
次世代へ責務果たそう
【大阪】在日韓人歴史資料館(東京都港区南麻布)の開設5周年を記念して「在日コリアンの未来予想図」を主題としたシンポジウムが16日、大阪国際会議場(グランキューブ大阪)で開かれた(写真)。同シンポは、日本による「韓国併合」100年を機に、現在の日本社会と在日同胞社会を見つめ、今後在日同胞はどうあるべきかを考えるもの。討論者は、地方参政権の実現を含め、差別なき多民族共生社会の実現へ定住外国人の先輩としてもっと力を注ぐべきだ−−などと提言した。
姜徳相・歴史資料館館長は主催者あいさつで「今年は韓国併合100年ということで、歴史を振り返る討論や集会が各地でおこなわれている。3・4・5世が80%以上という現実を踏まえ、在日社会は今後どうあるべきか討論を深め、地域を支える多民族共生の実現へ知恵を出してくれるよう期待する」と要望した。
後援団体である民団大阪本部の李龍権副団長は「日本社会と在日同胞社会を真剣に見つめ、在日の進むべき方向・課題などを確認し、新たな100年を展望することが求められている」と強調した。
基調講演した朴一・大阪市立大学大学院教授は、100年に及ぶ在日社会を解放(1945年8月)前と解放後に分け、その連続性と変化を考察し、在日同胞を取り巻く社会環境の変化として①在日1・2世の公民権運動によって定住外国人への制度的差別がかなり緩和された②韓日の文化交流の進展により日本人の韓国に対するイメージが大きく変わったことなどをあげた。
朴教授は、「50年以内には在日コリアンは消滅する」などとの「同化・消滅説」については、在日の世代別動向調査などを踏まえて反論し、「近未来において在日は多様化していくかも知れないが、そのすべてが日本人に同化していくことも、また消滅することもないだろう」と強調。
「日本社会も同胞社会も変わっていかねばならない。祖国と日本の間で揺れ動く在日のようなディスポラ的存在が『多民族共生』時代を迎える未来の日本社会の主役になる日が近づいている」とし、「多民族共生」社会の構築に向けた次世代の役割に期待を表明した。
多国籍外国人をひっぱる自覚も
白真勲・民主党参議院議員、金宣吉・神戸定住外国人支援センター理事長、李美葉・多民族共生人権教育センター理事長、鄭炳采・民団大阪本部事務局長、伊地知紀子・愛媛大学法文学部准教授をパネリストとしたディスカッション(朴教授司会)では、▽在日の未来を考えるにあたり、1世の姿や形からもっと学べる内容がたくさんある▽上滑りの「共生」という言葉が広がっており、真の「共生社会」実現へもっと発信していかなければならない▽まだ「差別」は現実にあるのだから、「共生」のためには「差別」と闘っていかねばならない▽アジアなどからのニューカマーの人たちの苦労は我々の在日の歩んできた苦労と重なっている▽アジアからの子どもたちは本名をなかなか名乗れない、本名を名乗ることでいじめや不利益をこうむる社会であってはならない▽在日外国人の「先駆者」を自覚し責務果たそう▽在日の100年の歩みは日本社会にいろいろなメッセージ・宿題を投げかけてきた。それを受け止めてくれるような政治の実現にも地方参政権が必要だ−−などとの指摘、提言が相次いだ。
(2010.10.20 民団新聞)